月別アーカイブ: 2005年8月

アロマエヴァンジェリスト

雨が降って気温が下がっている。夏も終わりかけているようだ。皆さん、お盆休みはいかがでしたか?僕はちょっと人里はなれたところで、雨の落ちていく音を聞きながら空と山の境の霞んでいるところを眺めては何時間も過ぎていくという休みでした・・・・。なんか違うなと感じた?以前の俗物ではありませんで。けっけっけっ。男の子は3日会わないと変わるんですよ。心してください。高尚に行きましょう。

アロマセラピーというのがある。聞いたことはあるがこれと説明できる人は少ないんじゃないかな。僕は偶然からアロマセラピーに関わることになり、日本の男性の中ではいわゆるアロママッサージを受けた回数においてかなり上位にランクされると思うが、これでアロマセラピーに詳しいなんていうと恥ずかしいだけだ。でもまぁ少しお話させてください。

花や樹皮から精製した精油(エッセンシャルオイルという)を用い皮膚から吸収(オイルマッサージや入浴時にお湯にたらすなど)、揮発させ鼻から又肺から吸入、まれに飲用して消化器から吸収などのやり方を用い、そのオイルの作用を期待する。リラックス作用が多いが覚醒作用や抗菌、免疫力アップなど様々な作用がある。ちゃんとした学会が日本でもいくつかあり、医学的な応用をいわゆる代替医療として模索中である。レモンオイルを咽頭に塗布することで咽頭痛を癒すなどは単純な方で、癌の鎮痛にも効果があるとされる。

当院でも主として鎮痛作用に応用できないか(お年よりは痛いとこだらけなのよ)、関西医大の心療内科に併設されているアロマセラピー室にお伺いしてお話を聞いたりして創世期の苦闘後アロマールームを3年前に開設。1年で諸事情により閉鎖し今年再開。しぶとくしつこくやっていこうと決意を新たにしている。アロマセラピーは代替医療に分類されるが、今のところ効果が確立されたものではない。化学薬品の代わりに自然の花の成分を用いその薬効(薬理学的に多くが証明されている)を期待するわけだが万人に等しい効果が得られるというところまではいっていない。でもこれは精油の問題やら投与法やら対象の選び方でかなり進化すると思っている。今のところ精油を使うマッサージが一番世間的には浸透しておりそれについて少し。

マッサージといってもいろんなタイプがあるが一般的にアロマは非常にソフトだ。マッサージの揉むという感じではなく触る、息を吹きかける感じというのが近い。それで効果あるのか?あるんだなこれが。皮膚や筋肉は刺激がきつければきついほど効果があるというのは間違いで、刺激の性質に敏感に反応する。ためしにあなたの腕を柔らかく撫ぜてみて、その後グイグイ揉んでごらん。どちらが筋肉がリラックスする?

それにあなたの選んだ心地よい香りが常に漂っている。周りは薄暗く、心地よい音楽か自然の虫や鳥の声がかすかに聞こえる(こういう環境をしつらえているところが多い)。半分以上の確率で寝てしまうことが多いが、ここで大事なのはあなたが何も考えていない、もしくは不快なことは考えていないということだ。煩雑な日常から分離される、完全に。

5感の中で嗅覚は特殊だ。他の4感と違い視床下部を介せずダイレクトに臭球を介して大脳皮質にメッセージを伝える。多分最も古い感覚だからだ。他の4感より圧倒的に多くの遺伝子を必要とする。古代人は自己を守るために匂いに大変敏感だったんだろう。プルーストの「失われた時を求めて」もマドレーヌを紅茶に浸したときの匂いから記憶が喚起され物語が始まる。匂いはあなたの何か深い部分につながっているのだ。

慢性的な痛みはかなりのものが心因性と考えられている。痛みは肉体的なものとは限らない。匂いはそれを癒すし、その種類により分泌される様々なホルモンやオピオイドが精神肉体的に影響を与える。リラックス、安らぎ、そんなものが純粋に手に入る。それがアロママッサージだと思う。出来れば定期的に受けるべきだ。なんでもそうだが1回触れただけでは分からない。繰り返すことで別の世界が広がる。私はそれを伝えたい。アロマエバンジェリスト(伝道師)だからだ。

頭を垂れる・・・

皆さん、お久しぶりです。生きてました。

リニューアルしたホームページをチェックしていて愕然とした。院長の連載コラムと銘打っておきながら全然書いてないじゃないか!!!何してんねん!・・・いやー、判ってましたよ。書かなあかんなぁと思いながらも光陰矢のごとし。たらたらと生きているうちに時間だけが過ぎていきました。とても反省してます。

反省したところに読むぴったりの文献があった。医者は経験が多いほど有能なのか?
Systematic Review: The Relationship between Clinical Experience and Quality of Health Care。Annals of Internal Medicineという信頼できるアメリカの内科雑誌に、臨床経験・年齢に関する医学知識とケアの質に関連する論文のシステミック・レビューが載っている。システミック・レビューとはそれに関する多くの論文を集め検証したもの。多くの論文だから当然結果が違うものも含まれるが大方結論は一致していて・・・・・・・臨床経験が長くなった医師は質の低いケアを供給するリスクがある。故にこれらの医師は質向上のための介入が必要。つまり勉強しなくてはいけない。知識量は若いほど多く、診断、治療のスタンダードへの遵守性も高いというデータもあり。

ぐすん。もう若くない俺としてはうなだれて聞くしかないなぁ。もちろん全面的に同意するわけではなく個人差、集団差がかなりあるけどね。でもある集団においてはその傾向はあるかも知れぬ。それは日本の開業医である(勿論ながくされていて経験豊富ですごく優秀な医者はごまんといるよ)。

僕は10年前に開業したが、大学病院にいた時と比べて医学的情報量の違いを埋めるにはかなりの努力が必要と感じた。大学なんてボーと医局にいるだけで先輩やら学会やらで情報がいやでも耳に入るようになっている。そしてライバル意識というか競争があるもんな。勉強するしそのための大学だ。しかし開業医はワンマンバンドである。孤独なのよー。最終決定は全部自分。相談に乗ってくれる上役、同僚がいないわけではないが、昼飯時に「ちょっとさー」というわけにはいかない。完全に個人の医療にたいする努力、熱情、責任感で差が出るのだ。で、年をとってもそれを維持していくのは結構難しかったりする。またやる気のある医者ほど患者さんも増え本業が忙しくなるとともに雑用もどんどん増えてくる(普遍的法則、仕事は忙しいやつに頼め)。やることは多い、勉強時間は取れない、苦しいー。あっ、別に俺のことを言っているわけじゃないよ。

医療は日進月歩である。これは真実だ。昨日正しかったことが今日はやっちゃいけないなんて信じられないこともあったりして、アップトゥーデイトな情報を仕入れることは必須。医学雑誌だけでなく、最近はインターネットやメーリングリストがそれに大きく貢献しているのだが、年齢によって利用頻度が異なるのは致し方ない。そんなこれやで臨床経験、年齢だけではだめという結論が出るのだろう。

しかし医者にとって臨床経験は財産というのも確かである。自分でも週に1回か2回しか外来をしていなかった専門馬鹿寸前の大学の時と比べ、何でも診なくてはならない開業医となって臨床能力が向上したところは多々あり。複数の医者が外来をしている病院では、多くの患者さんを外来で診ている先生のほうが、そうでない医者に比べやはり臨床センスは上回っていることが多い。患者さんが治る→評判で患者さんが増える→臨床経験が増え診断精度が上がる→患者さんが治る、といういい連鎖が形成される。そこで忙しさに流されないで勉強時間を作って研鑽進歩できる医者が残るんだろうなー。経験だけでいくと必ず行き詰まる。新しいことを勉強していく努力、熱情、責任感。それの維持がみんなも自分も救うのだ。

ロシアのボリショイバレーで活躍する日本人ダンサー(この人の業績は大リーグにおけるイチローに匹敵するかそれ以上らしい)、岩田守弘の言葉。「世界中の35歳の中で僕ほど努力したものはいないと胸を張って言えるんだ」。  頭を垂れる私・・・

「とりあえず自分に課するものとして週1で更新しようと思う(小声)。」

ED(勃起不全)って単にそれだけの問題じゃなくって・・・

シルデナフィル(バイアグラのことです)発売4周年記念講演会(2003年)で、英国の心臓専門医グラハムジャクソン氏が、EDの人は潜在する冠動脈疾患や糖尿病を持っている可能性があると発表した。もともとEDは精神的な問題だけでなく血管内皮機能障害が原因でおこるとされ、その障害を基盤とする心血管系疾患、糖尿病、高血圧の患者ではEDの発症率が4倍高い。心血管性疾患の症候がみられないED患者50人を検査したところ20例に冠動脈造影で冠動脈疾患が確認されたとのこと。それ以外にも氏は、シルデナフィルが全身の血管内皮機能障害を改善することから、狭心症患者の運動耐容能(胸痛が起こるまでどれだけ運動できるか)を改善、心筋梗塞の発症率や死亡率も抑え、肺高血圧やレイノー病も著明に改善するというデータを示した。

同じ講演会で三井記念病院の山門實氏が、日本人のデータ(平均年齢54歳)で高血圧薬物治療中の人に有意にEDが多い(正常血圧の人の約2倍)ことを示した。

生活習慣病の人に有意にEDが多く、シルデナフィル内服によりEDだけでなくベースにある血管内皮機能障害が改善されるのであればいいとこずくめではないか!薬品会社の主催する講演会で往々にして見られるいいとこずくめの話かもしれず鵜呑みにするのは止めとこうと思うが、論理的には説得力あり。冠動脈疾患のため硝酸薬を使用している人は残念ながらだめだが、それ以外の生活習慣病を持つお疲れでよれよれのおと−さん!ちょっと考慮に値する話かもしれんよ。恥ずかしがらず相談してください。