月別アーカイブ: 2010年12月

朝焼け

今年も仕事納めの日となった。

 

朝はいつもより1時間早く出勤する。朝焼けである。BGMはマイルス・デイビスの「Four and More」、個人的には最強のライブ・ジャズアルバム。ノッてくる。

そして12月は診察室でずっとキース・ジャレットの「ジャスミン」が廻り続けた。ロックンロールよりやはりこっちの年齢でしょうか。

 

いつものように診察がすすむ。皆さん、「よいお年を」と暮れのご挨拶で出ていかれた。

 

来るべき新年は?

具体的なプランはともあれ、攻撃、攻撃、また攻撃である。スピードである。受け身、防御はまだまだ先。とーぜんだよな。

 

それでは皆様、お身体に気をつけて。よいお年を。

 

 

子供化

 今年も残り少なくなってきた。

 内科開業医が最も忙しいのは冬場、風邪の季節であり、特に年末はちょっと今まで気になっていたことを片付けておこうと受診される方も増える(考えてみるとすごい話だが)のでやたら忙しい。しかもオフでは忘年会やらなんやらで、ほんとにブログを書く余裕がなかったのであった。

 睡眠時間が削られる。これが全くダメだ。そんな時は何が何でも昼寝を、絶対これだけはやってくださいというお願いも平気で無視してやっていたのだが、この頃は来客やらなんやらでそれも出来ず、夢遊病状態で活動していた。これはイカン。

 僕はタバコは吸い出して2年くらいでやめた。その頃ノルディクという走るスキーをクラブでやっていたのだが、タバコを吸うと明らかに走れなくなるというのを自覚して、その頃は克己心も強くさっさと止めてしまった。あまり身体にあってなかったのだろうな、多分。

 ここ数年、アルコールもほとんど飲まなくなった。少なくとも20年以上は晩酌と称して毎日飲まない日はなかったのだが、ある時アルコールが入るとすぐ寝てしまう非生産的な日常を変える必要があり、最初は不安だったのだが(ほとんど依存症だね)アルコールなしの朝の目覚めは高校生のようだと感じてから、これもあっさりと止めた。でもタバコと違って時々は飲むけどね。

 睡眠時間は6時間弱が多かったのだが、ちょっとしんどい。で、できるだけ12時前に就寝を意識する。たまにできたときは爽快である。

 煙草、酒、夜更かしという大人の快楽をどんどん放棄し、いまや子供である。半ズボンにランニングで、ランドセルをしょってリコーダーを吹きながら通院するのが夢である。

 子供は何をするか?外で遊ぶのである。それしかないでしょ。僕は昔の子供だからインドアはあまりしないのである。できれば1日中、暗くなって「ご飯だよー、早く帰ってきなさい!」と怒られるまで帰らない。

 外で遊ぶこと、つまり運動することの重要さ、これは何度言っても言い過ぎることはない。僕は外来で「運動してる?」しか言わないので患者さんにはほかに言うことないのか、と思われていると思うが、実際大事なんだから。そして思っているよりちょっと激しくやらないといけない。せめて汗ばむくらい、ちょっと息が切れるくらい、が最低必要なのだ。

 歩くならバスに乗り遅れそうなので速足で歩いているくらいに(特に腕を意識して振るのが大切だよ)、うちでこまごま動いてますという人は、それにスクワットや腹筋を入れる!少しでも身体を動かすという運動マインドが大事なのだ。1日中うちで閉じこもっていてはいけない。

 大きいのは脳の働きに運動がとても役に立つということだ。散歩の時にいい考えが浮かぶというのは昔から言われていることだが、身体を動かすことで脳が活性化することは科学的に実証されている。そこでも歩くより軽いジョギングのほうがいいというデータがあった。身体を動かすと(特にリズミックな運動は)セロトニンが増加して鬱を防ぐというのも実証済みだ。

 子供化がいかに素晴らしいかわかったかな。みんな、なりたくなったでしょう。

 僕は自称小学5年生で行こう。やーい、上級生だぞ!ざまーみろ(知能の子供化はいけません)。

  

12月の雨

 ♪ 雨音に気づいて~遅く起きた朝は~♪ あの頃のユーミンは最高だったよなーと思いながらも12月の雨はいやである。冷たく暗い。「鬱になりそうですよねー」と当院美少女部門担当のF嬢も憂い顔でつぶやく。

 そのせいか最近鬱っぽい相談を僕と近い年代の男性からよく受ける。Tさんは58歳で高血圧だが服薬もライフスタイルもきちんと指導を守る模範患者さんである。彼があるとき「先生、相談があるのですが・・・」と切り出した。

 「最近どうも生きていても楽しくないというか、張りがないのです。鬱でしょうか?」

 「鬱も診断基準があるのですが、Tさんはそれから考えてもそうじゃないと思いますよ。自殺をかんがえたりとか、そんなんはないでしょうね」

 「いや、そこまでは。しかし毎日楽しみもないし、定年になってこのまま年とってもなぁとよく思います」

 

 うう、今まで一生懸命仕事をしてきて、そのため趣味らしいものもなく、運動をしろと医者に言われたからときちんとプールに行って週に3日泳いでいてもなんら湧き上がってくるものがない、そんな彼を誰が責められるであろうか。

 しかし解決策を考えてみる。

 彼には大好きなものがないようである。これさえやってりゃまあゴキゲンというものが。こういった方の多くは趣味が読書という場合が多い。りっぱである。しかし受け身ともいえる。インプットだけでなくアウトプットしないと人間は面白くなれないのである。

 アウトプットしないと新しい社会的関係は築くことができないのだ。自分を表現すること、それはどんなことでもいい、スポーツをやる気でやることでも料理をすることでも、能動的に動くこと、それにより新しい人間関係を作ることがポイントなのである。

 これは人によって簡単にできることではないかもしれぬ(簡単に出来る人もいる)。しかし誰にとっても自分の好きなこと、能動的に動く楽しくてやりたいことを見つけておくことは絶対に必要なことなのだ。それはあなたを救う。

 中年のオッチャンは元気がない。鬱も自殺も凶悪殺人の率も高い。仕事よりも何よりも、楽しくて思わず笑っちゃうような大好きなサムシングを捜せ!それで冷たい12月の雨を防ごう。

内科学の展望とジャスミン

この小春日和のいい天気、国立京都国際会議場にいる。第38回内科学の展望「難治性内科疾患の克服にむけて」という講演会に来ているのである。朝から夕方まで1日中。まじめだなぁ。トホホ・・・

内科専門医更新のための単位取得という意味合いがあるわけだが、それでもアップ・トゥー・デイトな話題を専門家から直接聞ける、しかも普段なら読まないだろう他の分野の話というのは貴重である。パーキンソン病、MDS、難治性ネフローゼ、De novo B型肝炎とか、全く知らなかった治療の話もある。割と眠らずまともにノートを取る。

教授の皆さんはほとんどが僕と同年輩か年下である。うーむ。医者になって数年目、今までお姉さんばかりと思っていたナースが、いつの間にか僕より若い子ばかりになって何か年取ったなぁと思ったものであったが、また一段とレベルが違う感慨である。

聴衆は明らかにご年配の方が多い(ような気がする)。あの年齢になっても新しいことを学ぼうとする意欲は立派なものだ。素直に感心する。

で暮れかかった大渋滞の京都の町を、帰路を急いでいたわけだが、車のステレオから流れる素敵なピアノが誰だかわからない。自分でCDからハードディスクに入れたのはずなのだが、最近やたら入れてるせいか全く分からない。一瞬かなり焦る。怪しいと前から思っていたがついに来たか、認知症。しかし突然思い出す。キース・ジャレットの「ジャスミン」じゃないか。

これはいいCDです。僕の高校の同級生でちょっと男前をいいことに悪事の限りを尽くしている某広告会社の社長が「心が癒される…」と言っていた。へっ!でも悪党でも癒されるのですからなかなかのものです。

ベースのチャーリー・ヘイデンとのデュオ。キースの自宅のスタジオで録音したせいか、いつものクールさが薄まり、ひたすら優しい。最近は診察室でもこればかり流していたはずだ(小さな音だし仕事中なのでほとんど聴いていない)。仕事中でも車でもこればかり聴くか。癒されたいのかな?そうでもないんだけど。

でもとりあえず今年は最後まで「ジャスミン」です。

寛ぐドクターたち                  ジャレット!

無垢なサムシング

 今日のお昼休みは嘱託医をしている社会福祉法人「そうそうの杜」へ行く。定期検診とインフルエンザの予防接種のためである。

 結構長く嘱託医をしているので、利用者さんとはかなり顔馴染みである。障害を持つ方はシャイな人が多い(気がする)が、みんな愛想よく答えてくれるので、実際上は普通の方の診察と違い手間がかかることも多いのだが苦にならない。むしろ楽しくなってきた。無表情な方でも親しみをちらっと見せてくださるので心が和む。

 100人近くの方を診たり注射したりしたのだが、一緒に来てくれた当院OL(オフィスレディじゃなくて、おったまげる位ラブリー、ね)の代表二人、受付のI 嬢とNナースのテキパキ且つ滑らかで優しい仕事ぶりで予定通り終了する。

 しかし思うのだが、知的障害をお持ちの方は本当に若く見える。30歳くらいだと思っていたら60歳だったり、18,9かと思っていたら35歳、実年齢より半分くらいに見える方が結構多いのだ。何故だかはわからない。単純に言うと子供っぽく見えるのであるが、それが知的活動量の問題だとか偉そうなことでは決してない。全くものを考えない情けない普通の大人はあのようにピュアーに見えないのだ。

 無垢なサムシングが宿っているように思う。

 お世話をしている方も、だから続けることができるのではないかなと思う。

 なんとなく我が身を振り返り口少なくなる。午後からの診察は真面目一点張りであった(ような気がする)。

すげえ混雑ぶりであった。