月別アーカイブ: 2010年4月

住めば都

 ちょっと用事があって、知り合いに会いに富山に行きました。

 富山は初めてです。駅前は路面電車もあって可愛く清潔な雰囲気ですが、ともかく人が少ない。週末なのにこれでいいのか!と思うぐらい歩いている人がいません。友人によれば夜食事に出かける人は大変少ないとのこと。大変海産物がおいしいのですが、外よりも自宅!の人が多いようです。

 車で富山市を走った印象は何か清潔で上品な街という感じでした。石川県、新潟県という比較的メジャーな県に挟まれて、雄大な自然や海産物など自慢できる点が多いのにセールスがヘタだ!と彼は嘆いていました。近畿における奈良県のような感じね。

 富山県の魚津市にある医療法人ホスピィーが経営する巨大な抗加齢医学会認定施設S-QOLも見学することができました。・・・圧倒されます。理事長の浦田先生に大変親切に案内をして戴き、大変得るところが大でした。先生の個性にも感銘を受けました。いずれ場を改めて感想を書きますが、人間守りに入っちゃダメね。

 で、僕は結構富山が気に入って帰ってきました。住めば都。ネットがあるこの時代、都会の利点とは何か?日本中住んでみたいところがいっぱいありますが、富山もそのひとつになりました。

おお、雪山がこんな近くに!

雨の朝

 昨日は夏日。しかし夜、久しぶりにオープンにして帰ろうと喜び勇んでクリニックを出たら秋から初冬の気配である。僕の場合、空気の匂い、湿度から過去の出来事が喚起されるのだが、昨夜は「もうすぐ忘年会やでー、やっぱりこう冷え込むと鍋がいいな」という情景が浮かんだ。

 で、今日は雨。♪冷たい雨にうたれてー♪と口ずさみながら車を出す。木曜日は朝礼の日である。

職種に限らず今一番重要なのはコミュニケーション能力だと思います。で、その中で意識していただきたいこと。それは①どんな些細なことでも、誰かに何かをしていただいたら心より有難うを言いましょう ②誰かの行為が素晴らしいと思ったら、どんな些細なことでも「素晴らしい!」「いかしてる!」と褒めましょう。特に褒めるというのは思ってるより全然やってなくて、僕なんか全然褒められないからちょっとでも言っていただいたらとても嬉しくなってやる気が出ます。皆さん、出し惜しみせず、どんどん褒めましょう!でもちゃんと心から思ったことだけね、ウソはダメ。

 みなさんを見渡すと、ちゃんと聞いているかどうかは一目瞭然である。うなずいてくださると、それだけでも話してよかったと思う。こんなことでも嬉しくなるのである。みんなちゃんとわかってね、と心で思いながら雨の朝、朝礼を終えて表にでる。

 

朝礼の写真(ウソ)

 

油と快楽

 「脂っこいものがねー、好きなんですよ」

  肥満の方に食事の話をしていると、少なからずの方が(特に著しい肥満の方が)こうお話されます。そうだなー、うまいもんなぁ。大体健康に悪いものはうまい。

  しかし何故油脂はうまいのか?味ないような気がする。じつはあんまりわかってないそうです。今日の朝日新聞の科学欄で京都大学大学院農学研究科の伏木亨教授がその話をしていました。

  油脂を精製すると無味無臭になる。おいしくもなんともない。しかし舌にはこの油脂の主成分である脂肪酸を受容し舌咽神経を介して脳に伝える経路があり、油脂の刺激が脳を興奮させ、周囲にある味物質を非常においしく感じさせるそうです。

  実験でマウスは油脂をなめさせるとやみつきとなるそうで、油脂を食べた直後のマウスの脳脊髄液には脳内麻薬である快楽物質のβエンドルフィンが検出されるとのこと。快感なのですね。

  しかも面白いことにカロリーのないやつはダメらしい。高カロリーの油脂だけが脳を刺激する。思うに大昔、食料として野生動物をつかまえて食べた時の油脂の感覚が残ってるんでしょうねー。高カロリーでないと生き残れないし。

  人間が飢餓から解放されたのはそんなに昔じゃなく、ここ100年ちょっとの著しい生活環境の変化にまだ身体が適応できてないってことです。頭と身体が解離しているということね。

  ということはなかなか手ごわいということになる。油脂を使っても材料を工夫してカロリーを抑える、そして運動!これが一番確実かなぁ。

ブッー!!

クアトロ

 今日は朝起きると久し振りに朝日がさしていた。まるで夏が来たかのようだが空気は涼しい。おお、うるわしい土曜日の朝。

 しかし午後から仕事の予定が満載なのであった。といっても二つ講演会に出るだけなのですが。

  お昼ごはんをプラナリア男爵、Jet O 嬢、キュート(きょーと)院長と一緒に食べる。悲劇の晩餐の話題で盛り上がる。晩飯を食った際に遭遇した信じられない実話(カップルの女の人が泥酔して椅子に座って上を向いたまま嘔吐した話、けんかしたカップルの女子が男子にビンタをして去っていった話など)を披露しあったのだが、聞くのは面白いが登場人物には死んでもなりたくない話ばかりである。

  知らないうちに時間が過ぎ、慌てて会場に向かう。

  

 1発目は太閤園でDM-NET ONE の講演会。インスリン治療の実際的な話。サインをしていると医療センターの細井先生(座長です)に声をかけられる。僕の大好きな先生です。人格、実力とも足元にも及びません。話の内容はとても有益であったが20分ほど余して次の会場へ。

  帝国ホテルまで異常な渋滞。造幣局の通り抜けの人々であった。春の光が満ちている。講演より公園といきたい・・・

 

 ホテルではなんと2フロアーに薬品会社主催の講演会が3つも同時刻に開催されていた。

 

 目的の会場は一番奥で目立たなく、そこに至るまでの2つの会場受付で、各々の知り合いのMRさんに出会い、喜ばれて大変困ったことになる。律儀にサインをし、ちょっと出て事情を話し、遅れて目的の会場へ。内容は有益であった・・・。

 今日4つの講演会に名目上は出席したことになる。新記録である。まあ何の自慢にもならんが。こうして春の宵はふける・・・。

 

春の時間は走り去る

 

 

アト ランダム

 車のBGMをかけようとして「機能」というスイッチがあるのに気がついた。

 あるのは知っていたが無視していたのですが、見てみると「ランダム」というのがある。i pod とかにおけるシャッフルですね。アルバム内、全部(ハードに記録してあるCD全部の中でシャッフル。今100枚以上入っている)があり、全部を選択。

 で音楽が始まったのですが、なな、なんと、これは誰の曲でしょう?と全く記憶にない曲が結構かかるのである。

 僕の記憶力は最近著しく退行していてニアー認知症レベルなのは自覚していましたが、本当にビックリ。CDをかけてもあまり気に入ってない曲はとばして聴いていたので、そういうのがすごく新鮮に響くのです。こんないい曲だったのか、このイカした前奏はなんだ!とか、新しい発見に満ちている。

 で思ったのですが、人間は原則として繰り返しを好む(その方が安全で生存を脅かさないため)、そのようにプログラミングされているのですが、その習性は多くの新しい出会い、驚きを逃がすことになる。人との付き合いに於いても、ちょっとテンポが違う人とはそれなりの付き合い、仲のいい人とだけ深くつきあうというのが普通ですが、そうじゃなくて好みじゃない人とも付き合うと新しい楽しい発見がある、そこからすごく仲良くなったり、新しい世界がひろがるかも。

 太宰治が努めて自分と合わない人と付き合っていたという話があって、その意味がよく分からなかったのですが、実はこんなことじゃないかと思いました。

 繰り返しを避けアト ランダムに人と接する。人とだけでなく物にも。意識してやってみようと思います。

誰かの車に桜。片岡義男氏の文章にこういう情景を描写したやつがあったな。

春の検診

 今日はお休みなんですが校医をしているS中学校へ検診に行ってきました。

 1年生と3年生、計500名近く(泣)。聴診器の耳当てをソフトに変えて(耳が痛くなるから)臨みました。この学校は画期的にいい生徒さんが多い学校で、いわゆる荒れた感じはほとんどない。新任の校長先生も同じ感想を述べられていました。

 僕は校医になって10年になるのですが、最近は以前と比べ肥満児とアトピーの子が少なくなったなと感じます。元気いっぱいという感じの子も少なくなったかな。

 しかし!気になったのが姿勢の悪さです。特に3年生。みんな猫背だ。恥ずかしいのかな、とも思いますが。クネクネしてるし。中国から来たという男子はスッと背筋が伸びてました。3年生、見習わなくっちゃ。

 それに比べて1年生はみんな背筋が伸びています、屈託なく。中学生活はストレスなのかしらね。成長の時期で歪んでいるとマズいです。できれば授業中にも背筋を伸ばして座ることや、朝礼のときも立つ姿勢を言うようにした方がいいのにな。

 まあ、しかしいい子達だと思います。1年生の女の子(以前風邪とかで診ていた)が診察のとき、友達みたいに「お久し振り!」と声をかけてくれたりするし。極めつけは色白の楚々とした女の子が「○○○(名前)でございます」と小さな声で言って座ったことでした。ナイス!

終了後


パワーリハビリテーション近畿支部立ち上げ

 先週の木曜日、パワーリハビリテーション近畿支部の立ち上げミーティングがありました。

  今まで僕は大阪支部の支部長という大役をヘラヘラしながらやっていたのですが、今年からは近畿2府4県をまとめての活動ということになり、ヘラヘラはちょっと返上しなくてはいけないなと思いながら事務局長のM君と一緒に会場に臨みました。

  会場を提供してくださった運営委員の一人である大阪医療福祉専門学校のNさんにお会いして会場に向かうと神戸のYさんがもう席についておられ、ついで滋賀のK君、枚方のMさん、宝塚のSさん、酒井医療のHさんといったメンバーが揃いました。

  よくある名ばかりの理事会、過去の実績のみで地位をキープしている実戦能力の極めて低い理事の集まりでなく、即戦力極めて高い現場の戦闘派に運営委員となっていただいたのでディスカッションは極めて有益であったと思います。

  ミーティングの前からメーリングリストを立ち上げて話し合いを行っていたので大体論点が絞れていたのですが、実際にお会いしてみると解決しなくてはいけない問題点も浮き彫りとなり、これからの支部の方向性、カラーも見えてきたように思います。

  パワーリハビリテーションが近くにあるならば、それはその付近の中高年にとって生活の一部となるべきデファクトスタンダードであると僕は確信しています。

  当院のパワーデイサービスや、クリニックの1階、プリシジョン・スタジオはその色合いが強くなってきており嬉しく思っているのですが、全国的には極めて限られた利用しかされていないし、適正使用されていないケースも非常に多い。

  やることは多いのですがこのメンバーだとパンチの効いたことができそうです。むしろ暴走注意かな。元気のないご時勢なのでこれくらいでちょうどだよ!

前途はこの空より明るいだろう 

 

ラーク?

 「ラーク」?

 診察室の僕の机の上に「ラーク」が一箱。中にライターも入っていて、バリバリさっきまで吸ってました風情だが僕のものではありません。さっきまで吸っていた女性が禁煙外来に来て、「あると吸っちゃいますから」と意を決して置いていかれたのです。

 最近禁煙外来に来られる方が多い。毎日新たに数人。前から止めたいと思っていたけど値段も上がるしまわりでも禁煙する人多いし、というきっかけが多いみたいです。

 喫煙は病気で(だから禁煙外来が保険適応になると思ってね)麻薬とかと同じニコチンの依存症です。タバコを吸ってないとイライラする、落ち着かない、仕事がはかどらない、これって依存症で禁断症状ですよね。はっきり病気と認識しましょう。

 今は有効な飲み薬もあって(タバコの快楽部分がブロックされて依存から抜けやすくなる)1日1箱以上吸う人ならタバコ代より確実に安い金額で禁煙に成功できます。目下のところ僕のクリニックでの禁煙成功率は男性90%以上、女性は70%くらいか。

 女性は禁煙で少し太ることがあるのでそこらへんで挫折しやすく、またどうも依存が強い感じがします。一般的なデータでも女性は禁煙に失敗しやすいとされてます。害は女性のほうにより強いんだけどね。肌も荒れるし。

 ともかくタバコを吸うことのメリットは限りなくゼロです。潔く僕の机の上にタバコをドーンと置いていってください。待ってますぜ。

 (今度読売テレビの夕方の情報番組「ten!」に禁煙外来のことでちょっろと出ることになりました。生!です。5月の終わりですがちょっと宣伝)

 

春の霞

 今日はお休みでしたが約束が3つほどあり、いつもどおり定時に出勤しました。平日ですがなんとなく気分は休日のせいもあり車も少ない気もする。外は春の朝です。

 BGMはキース・ジャレット・トリオの「ジ・アウト・オブ・タウナーズ」。最強ピアノトリオ、スタンダーズの2004年ミュンヘンでのライブです。このトリオの中では有名なアルバムではありませんが、個人的に旅行の思い出に強く結びついている、僕の中では特別の音楽。

 かっこいいです、キレ、いいです、美し過ぎる。特に最後の、キースがソロで弾いている「イッツ・オール・イン・ザ・ゲーム」は夢のように響きます。記憶を喚起するのは嗅覚が最強らしいですが音楽も。広い窓から見えた曇ったグレイな秋景色を思い出します。

 キースは僕が高校生の時に最初のソロ「フェイシング・ユー」(特に1曲目と3曲目だ!)に完全にいかれてからずーと好きでしたが、一時精神的に追い込まれて引退同様となり、僕もなんとなく聴かなくなりました。回復して後、数年前にソロコンサートを大阪で聴いたのですが、なんとなく心に届かなかった。最近またアルバムが出ていますが、僕の中ではこの「ジ・アウト・オブ・タウナーズ」が今だ最新盤です。

 しばし過去に戻って、到着したので仕事モードに。勤務医時代から休日に仕事場に来ることは割と好きでした。同じだけどいつもと違う景色。リラックスして仕事をこなし午後遅くにクリニックを出ました。

 仕事の約束はみんな前向きなものだったのですが、今日はなんとなく春の霞のように過去に浮遊しているような日でした。そんな日もあるさ。また明日です。

 

桜のように生きるとは

 桜も今週限りだな。

 近くの夙川は桜並木で有名で、この日曜日は周辺大渋滞をきたしていた。桜は日本っぽい。はかなく、潔く、諦めよく。典型的日本人の気持にフィットする美学を体現しているようだ。

 僕が抗加齢医学に興味があると知ると、「年相応に枯れることこそ美学、ジタバタしなさんな」というお言葉を必ず誰かからいただく。了解。だけど抗加齢医学は予防医学、転ばぬ先の杖であって、目指すのはバタッと逝く直前まで元気いっぱいでいるというコンディション作りなのである。意味なく長寿ではなく、美しく生きて突然散ってという、まさに桜のような生き方を目指しているんだけどな。

 問題は散るまでをいかに元気でいくかということで、これはトレーニングが必要でほっといてうまくいくわけがない。外来でお会いするイキイキしている方が何もしない人であることはまずない。言わないだけで殆どの方が工夫しているのである。ある部分はまずストイック、昨日書いたキャスリン・ビグロー監督のように。

 ストイックに生きて美しくさっと散る、桜のように生きることが実は抗加齢の実践なのであった。