月別アーカイブ: 2015年2月

フレイルの治し方

frail

フレイルという言葉がある。日本老年医学会が加齢に伴って筋力や心身の状態が低下した状態のことをFrailty(弱い、虚弱)からフレイルと呼びましょうと昨年提唱したのである。以前は「虚弱老人」と言っていた。健康と病気の中間で、65歳以上の高齢者の1割強があたるとされる。骨や関節など運動器の衰えたロコモティブシンドロームや、筋肉量減少、筋力低下のサルコペニアもフレイルに含まれるが、このまま進行すると要介護状態となるのである。

僕の外来にはご高齢の方が多いが、フレイルにあたる方は結構多い。そういった方は転倒しやすく、免疫状態も良くなくて風邪もひきやすく、気力も減退気味という印象を受ける。要介護一歩手前である。これはいかん。「抗加齢は抗介護」をテーマとするうちのクリニックの一番の対象であります。

でフレイルをパラパラと勉強していたら目の覚めるような知識が。僕も含めてフレイルというと身体的なことしか思い浮かばない人が多いだろう。しかしフレイルの概念には3種類あり、①身体的フレイル ②精神的フレイル(鬱や認知症などだな) そして③社会的フレイル があるのである。社会的虚弱性!そう、そいつが問題なのだ。 しかも日本のフレイルは、まず社会的フレイルから始まり、次いで精神的フレイルが加わり、最後に身体的フレイルと進むとのこと。

必ずしもこの順番ではないだろうが、男性の場合この道を歩む可能性が高いように思われる。定年後、明らかに生気を失う方を散見する。仕事を離れると男はコミュニケーションが非常にとりにくいようなのである。孤立し、そして心も身体も弱っていく。

ジムに行っている元気な高齢者の方も多いが、案外誰とも話もせず、さっさと済ませて帰っていく男性も多いそうである。おばちゃんたちは身体は動かさないことはあっても口が動かないことはなく、おしゃべりが中心のジム通いというケースも多いそうだが、どっちがフレイルになりにくいかというとやはりおばちゃんたちではないか。

ゴルフとか碁なんかを中心に交流する場もあるが、なんというかスポーツやゲームそのものが中心になって交流そのものが目的というのは日本の男性の場合(特に高齢者は)成り立ちにくい気がする。欧米のクラブとかと違うところだ。大体欧米の男性ってすごくしゃべるもんね。道端で1時間くらい喋ってるっていうのもよくある。日本のおっさんも、飲み屋でないと喋れないというのはそろそろ変えなくてははいかんな、と思う。

見知らぬ他人とちゃんと喋ることができるというのは大人の条件だと僕は思っているのですが、ちゃんとどころか、すぐ友達になれるという好奇心、フランクさがあればフレイルなんて笑い話だ。ここから鍛えていく。なにかの縁で隣り合った人、興味をひかれた人には微笑みながらどんどん話しかけていく。そうしてかっこいい大人になっていく。バイバイ、フレイル。おっちゃん達、どう、年を忘れて一緒にやらない?

 

 

 

 

泌尿器抗加齢医学研究会

うろ

2月が始まった。昨日の日曜日は第6回泌尿器抗加齢医学研究会で発表してきた。タイトルは「開業医でのアンチエイジングドック」で、これは主催の順天堂大学泌尿器科教授の堀江先生からいただいたお題である。

昨年秋に話があってから、抄録、パワーポイント提出とスケジュール通り進んできて昨日発表だったのだけど、実はこれはかなりプレッシャーがあったのよ。僕のところは日本に27しかない抗加齢医学会の認定施設とはいえ、アンチエイジングドックを専門にやっている東京のクリニックとかと違ってメインはあくまで地域密着型の一般診療。立地としてはもろアウェイの下町、城東区である。在宅診療も含めた一般業務の合間に人間ドックの進化形ともいえるアンチエイジングドックを依頼があればやるという感じで、研究会で発表出来るほどドックとしての大量データの蓄積はない(学会を意識して集めているデータは別だが)。だからそういった一般クリニックでどのようにやっているか、どこまでできるかといった話を中心にした。

メインの聴衆は泌尿器科の先生方である。科が違うと医者のキャラクターも違い、かなり興味の焦点が違うもので、どうも話の進め方のイメージがわかないのである。しかも他の発表者はほとんどが大学の研究者である。もう許してほしい・・・。今まで学会やなんやかんや人前で喋った経験は結構ある方だと思うが、内容がどのように受け取られるか想像がつかないというのが一番不安ということがよく判った。

かなり苦労した。僕としては画期的に多くプレゼンの練習をし、前日までストーリーをブラッシュアップし、なんとか当日は自信を持って発表することができた。聴衆の先生方はそんなに苦労していたとは思われなかっただろうが、話し終わって本当に心から喜びが込み上げてきた。3年前に専門外の抗加齢医学内分泌研究会で発表した時もプレッシャーが強く実際結果もこけた様な気がするが、今回は全くあがりもせずかなり冷静でまぁよかったような気がする。よしよし。

テストが終わり夏休みに突入したような気分である。今私にこわいものはない。だけどこういったハイレベルの研究会に参加するのはとても勉強になるなぁ。今自分のやっていることの立ち位置がよく分かるし、大学、病院の研究者の先生方のもつ雰囲気が、サボるなよと僕に語りかけるのである。いや、また発表したい、しばらくはいいけど。