月別アーカイブ: 2013年8月

夏の最後の海

今年最初で最後の海に行ってきた。例の秘密のビーチ(小声で)である。オッサンが三人、仕事を急いて片付け、車に飛び乗って南に急ぐ。

着いてまずは風呂に入る。温泉である。うー、久しぶり。11時くらいから宴会である。まずは神聖な気分でスタートしよう、知り合いの方にいただいた伊勢神宮のお神酒をいただく。

お神酒

後はひたすらバカ話をする。メチャクチャおかしい。しかし生真面目な我々は、いずれ考えなくてはならない静岡T先生の忘年会での出し物も考えていた。素晴らしいアイデアが連発する。我々は天才じゃなかろかねー。前回吉本新喜劇をやって残念ながら1位にはなれなかった理由を考え、改善策もバッチリ仕込む。今回も新喜劇でいく!学園もの。タイトルは「熱血保健体育!」ほとんどストーリーが完成し、出演者のキャラクターも決定する。今回の参加者、当院のIT担当イッシー君の役は「Amazonのメチャクチャでっかいパッケージで届けられた人体模型」である。その他素晴らしいキャラクターのアイデアが連発するが省略。裏バージョンもあるのだが、これはR18+のため、これも省略。朝の4時くらいに寝る。

9時過ぎにのろのろ起きだし、バカ話の続きをした後、海に出かける。秘密のビーーーーチ!

台風前

去年のうららかな海と違い大荒れ。台風が来てるもんな。波打ち際で戯れていてもバックラッシュで遠くに引き込まれそうになる。アブねえアブねえ。

最初は曇っていたが、我々の日ごろの心がけを反映し、午後遅くには晴れてくる。しみじみ海を味わう。何も考えず水と戯れる。何かが解けていく。

来てよかった。また来年な、待ってろよ、とつぶやく。

常時(ジョージ)Harrison

ハリソン

ちょっとしたことでハリソン (Harrison) 内科学書の最新版18th Edition の日本語訳を手に入れた。おお、ハリソンである。内科学を志した医者ならその名を知らないものはないであろう。ロックにおけるビートルズ、日本野球界のジャイアンツ(嫌いだけど)、政界の自民党(これまた)みたいなもんで、医学のど真ん中にそびえる堂々たるスタンダードである。

研修医の時持っていたが(読んだとは言ってない)、必ずしも使いやすい教科書ではなかった記憶がある。しかしながら日常の臨床とは一段違う格調高い文章を読むと、ボンヤリした僕の瞳が少し大きくなり、頭のゴチャゴチャが少し整理された気になったものだ。回診でもめても、「ハリソンに書いてありました」というと反論する偉い先生の声も少し小さくなったものである。

久しぶりに読むとさすがに up to date されていて(当たり前か)、加齢医学の項目もある。 以前より読みやすいし、なによりも説得力がある。これが教科書だね。ネットでも最新の正確な学術文献が手に入るが、この本は枝葉でなく幹なのである。細かい治療法でなく何故そうするか。

しかしこれがあれば大丈夫という、勝負服みたいな(例えが悪い)、100mのボルトみたいな(こんなもんか)存在感はいいな。外来が終わって気になるところをチェックすると必ず何か得るところがある。いつもハリソン、常時ハリソン、じょーじはりすん(スペルは一緒だけど)と、人間として社会的に葬られることは間違いないシャレを言いながら巻を閉じるものである。

同じ釜の飯を食う

囲む会

昨日は久しぶりに飲んだ。お世話になった医局の前教授を囲んで昔話でもしましょうという Non productive な会合に看護師さんも含めて40人近くが集まり(全部呼ぶとキリがないのである程度学年を区切った)、なんというか昔の医局旅行の宴会のようであった。

今は医局旅行はなく、週に1度行われていた医局会も存在せず、連絡ツールは主にメールということらしい。

デジタル。

僕が医局にいた頃のイメージはクラブの合宿のようなものである。又は昔の青春映画みたいな。強くなりつつあるところで、やる気のあるのも無いのも若い奴がゴロゴロとしていて、お目付け役の上級生や顧問の先生がいて、とりあえず競争心もあってかつ仲間意識も高くってと、昔話はつい美しくなってしまうがとても楽しい時間を過ごした。試験の夢なんかは見ないが、教授回診や病棟で働いている夢は今でも時々見る。

何十年ぶりという人も結構いたのだが、去年会ったと言っても違和感がないくらいだ。これが「同じ釜の飯を食った」という底力だろう。昔の方が時代がよかったとか言うつもりは全くない。ただこの集まった人たちは、二度とない本当に輝ける素晴らしい時間を一緒に過ごしたのだと思った。

 

 

脳だけが記憶するのではない?

puranaria

心臓移植を受けた患者さんに、臓器提供者の記憶が何らかの形で発現することがあるという話を読んだことがある。心臓に元の持ち主の記憶が宿っているというわけで、ありそうな気もするがホラーの域を出ない。しかし、あり得るかもしれない?と考えさせる論文がある。

Journal of Experimental Biology(2013/7/2) でタイトルは An automated training paradigm reveals long-term memory in planaria and its persistence through head regeneration.

プラナリアという生物がいる。ウズムシともいい、日本の川にも生息し、石や枯れ葉の裏側に張り付いている。脳を持つもっとも原始的な生物で、その驚異的な再生能力で知られ、再生実験に利用される。頭の部分を3つに切ると頭が3つ生えてくるし、100に分割すると100の新しいプラナリアが出来る。しぶとい。ぜひ見習いたい。

発表者はプラナリアに餌の場所を記憶させ、頭を切断する。新しく頭が生えてきたプラナリアは、最初のうちは餌の場所を知らないコントロールのプラナリアと同じ位、餌に到達するまで時間がかかる。記憶した脳は新しくなっているから当然だ。ところが再トレーニングすると、コントロール群に較べて学習時間が圧倒的に短かったのだ。少し記憶があると、あぁそうだったと思いだす。そういうことが起こっている訳だ。

末梢神経に記憶が蓄えられている可能性とか、記憶による遺伝子の変化が関与しているとか、メカニズムはまだ推測の域を出ない。しかしもし記憶が脳以外の細胞に蓄えられえている可能性があるとすると、記憶が失われていく認知症の治療に発展する可能性がある。また他の人の記憶を、例えば皮膚の細胞をもらって自分の中に再現したりすることが出来たりするかも。すごい。

人間や世界にはまだまだ解らないことがあり、まだまだ進歩していく可能性がある。僕は無機物にも記憶や心があったりするんじゃないかと夢想する。車なんてどうみても心がかよっていると思える時があるじゃん。気に入っている何かには無機物であろうと有機的な関係ができる。いずれそれは常識に?暑さのせいで頭がやられたか・・・。

 

 

草食系男子はホントに男性ホルモンが少ない

kusa

投稿していた論文が日本医事新報の8月10日号に掲載された。タイトルは「草食系男子のホルモン動態」。男性外来で典型的草食系男子の男性ホルモン(遊離テストステロン)値がすごく低いことが判明し、そこから症例を増やして21人になったところでまとめたのである。

男性ホルモン自体は20代前半あたりをピークに加齢とともにゆっくり減少していく。個体差が大きいのだが、若年にもかかわらず、いわゆる男性更年期(加齢男性性腺機能低下症候群:男性ホルモンの低下のため女性の更年期のような症状を呈す)の診断基準値以下の値を示す例が半数いて、彼らは男性ホルモンだけでなく年齢とともに低下していくDHEAやIGF-1といった老化の基準となるホルモン値も低い。だったら老化が速く進んでいるのか?しかし老化の進行を示す徴候はなく、むしろ省エネというかエコというか、すべての活性が低い、時代にマッチした形に進化しているのではなかろうか、というのが大体の趣旨です。

草食系の判定が難しいところだが、「性行為や恋愛に積極的でなく男性としての能動性が少ない」というのが2006年の日経ビジネスで草食系という言葉を最初に使った深澤真紀氏の記事以来の根本条件で、それに加えて物腰が柔らかい、声が小さい、食が細いだのの条件を決め、問診とともに当院の複数女性スタッフに判定してもらった。こういうのは女性の嗅覚が鋭いかと思われる。

草食系という言葉は日本独自のモデルとして諸外国に紹介されているが、投稿してから北欧で昔と比べて同世代の男性のテストステロン値が減少しているという内容のペーパーを見つけた。フィンランド、デンマーク、そしてアメリカでもそういう報告があるようである。いわゆる草食系かどうかということは書かれていないが、以前と比べていわゆる文明国では草食型の男性が増加しているような気が・・・(あくまで印象だけどね)。原因として環境ホルモンとかいろいろ考えられるが推測の域を出ない。

ともかく今年幹事をした臨床データ報告会で2年前に症例報告をしたのがきっかけで始まったものが形になって喜ばしい。日本医事新報は発刊して91年になる医学情報誌として日本で最大部数の老舗だが、開業してからずっと愛読している好きな雑誌に掲載できたことも嬉しい。担当のKさんにはとてもお世話になった。感謝します。この掲載がきっかけになって草食系男子がドッと来てくれないかな。畏れるな、来たれ、Japan’s herbivore men よ!