月別アーカイブ: 2011年3月

ライブ2つの土曜日

 土曜日の診療が終わってから、飯を食う時間もなく竹内教授の講演会に行く。竹内先生はパワーリハビリテーションの創始者であり、現在も高齢者ケアの一環として、老健オムツゼロ運動(老健の入所者みんなのオムツを外そう)を積極的にされていてかなり効果が上がっているようである。

 僕は幸い懇意にしていただいていて、講演の時も何かと話題に挙げてくださる。でも「池岡先生は抗加齢医学を熱心にされていて、今も若く見えるけど結構としなんです」と、まぁ、最近はこればっかりだ。

 講演自体は一般の方を対象にしたもので目新しいものではなかったのだが、講演のあとお茶を飲みながらお話しした雑談はかなり目の覚めるものであった。先生の最近の興味は高齢者の嚥下機能、栄養に移っていて(僕と同じ)、「オムツを外して寿司屋に行こう!」というのが目標とのこと。キザミ食やペースト食にするのは間違っているという話で、ではどうするか、話を聞いて僕は相変わらずの先生の視点の面白さ、実行力に感銘を受けたのだ。今やろうとしていることにすごくヒントとなった。深謝します。

 その後、約束していたライブに行く。高校の同級、芦屋の悪社長と一緒である。前行ったKawoleさんのライブが苦楽園であったのである。以前からあったバーであるが新装開店したようで恐ろしくスタッフが不慣れである。雰囲気は客層も含めハイソ苦楽園そのもので、悪社長は「コージーじゃないな」という。同感である。

 しかし音楽はよかった。Kawoleさんは初めて一緒にやるメンバーなのだと言っていたが、不慣れな感じもなく彼女は全くぶれない。自分ができてるのね。久しぶりにウオッカをがぶ飲みするが、僕はビールだとすぐ酔うくせに蒸留酒は強い。あまり酔わず、悪社長と震災後のこれからの日本の話をする。どうしてもこうなる。遊んでると後ろめたいがそうばっかり言っててもなぁ。気持ちはしっかり真面目である。そして今、日本1大変な男である同級生、Y福島第1原発所長の健闘を祈る。

 

ラブ

 寒い。明日は東北は雪らしい。心の重い日々が続く。地震は大きい。患者さんも地震酔いの方もいるし、みなさん全体に不安なオーラが出ている。

 今年は間違いなく日本のターニングポイントとなる年だ。国のグランドデザインが変わる。下を向いていないで前向きにやっていこうと思う。

 初めに要請が来た日本医師会災害医療チーム(JMAT)に登録した(外来チーフのO嬢も登録した。事務的な仕事もボランティアで求められている)。これから慢性疾患を診る内科医の必要性が増えてくる。派遣されるのは今月なのか来月なのか判らないが、しばらく自分のクリニックを離れてお役にたてるなら頑張ってこようと思う。JMATは全くのボランティア、自分で行って食事も全部自分で用意する。先陣を切って頑張っている諸先生に心より敬意を表します。

 元気の出る音楽を聴こう。ラブ・サイケデリコである。O嬢によれば「なんで今頃。古いんじゃ・・・」だそうだが、大ブレイクしてその後、ブームが去って久しいサイケデリコは最高です。めちゃくちゃかっこいいロックバンドとなっている。

 偶然耳にしたライブアルバム、出だしからびっくりです。こんなカッコいいの、信じられへん。その後Golden Grapefruits, Abbot Kinneyの2枚のオリジナルアルバムをレンタルで聴く。うーーー、カッコいい!この単純な言葉が一番ぴったりくる。ユーウツな気分も、Freedomのエレクトリックギターがブヮンブヮンうなるイントロを聴くとアップしてきます。

 当分これで維持していきたい。頑張れ、にっぽん。

 

beautiful japanese !

 

人を助けること

 震災から1週間たち別の局面に入った。混乱から再生へ動く時期だ。ニュースを見ていると、今自分がここにいて特に不自由なく暮らしていることに居心地の悪さを感じる。

 何とかしなくっちゃ。何かできないか?日本中のみんながそう思っている。

 だけど人間には、その時期、ステージにおいて果たすべき役割がある。やたらの物資の直接寄付が被災地で混乱を招くように。無駄にならない人助けの方法。

 知り合いのドクターで現地にとんだ奴がいる。立場が違うのは判っているが医者として羨ましいな。しかし今の僕でやれることがあるだろう。あるドクターが輸送のルートがあるので薬品の輸送を医師会でお願い出来ないかと言ってきた。勿論なんとかする。後方支援だが今はそれだ。外来でも被災地から避難してきた人が10人近くいる。デイサービスの利用者も1人。他にも何かあるはずだ。例えば被災した方だけでなく、障害に苦しむ方々にサポートの手を差し伸べること・・・

 気持ちはready to go だけど。

 

 

 

震災からほぼ1週間

 今日、震災から逃れて大阪の親戚のところへ来たという子供さんが診察に来られた。ご両親はまだ宮城県である。こんなことからも判るようにこの震災は汎日本的だ。

 状況が明らかになるにつれ想像以上にダメージが大きいことがわかる。うちのスタッフもそうだが日本人みんながなんとか援助したいと思っている。

 総合内科専門医会のメーリングリストも、現地の病院の勤務医から本当に悲惨な状況がアップされ、透析患者さんをはじめとする現地の重症患者さんの受け入れのため、各地の病院が名乗りを上げ始めた。不足物品や人手の要求と、出向可能なドクターの連絡調整をするメーリングリストもある。いずれもまだ始まったばかりだが、いずれ早いうちに稼働始めると思う。政治家へ直接働きかける運動もあり、それもいくつか本当に動きつつある。

 高校の同窓会のメーリングリストも今日動き始め、なんと今渦中の、福島第1原発の所長が同級生のY君だとわかった。ひょうひょうとした気分のいい彼だったが、今は忙殺されて大変な状態だろう。胸が痛む。本当に何とか解決の道筋がついてほしい。天にも祈る気持ちだ。

 うちの法人からスタッフ用のフリースとか物品を被災地に送ることになった。本当に何がどこにいつ必要か、どのようにするのがベストか、まだはっきりしていない。無駄や迷惑にならないように、考えてするつもりだ。

 現地に行って何かしたくなるが、今ここで出来ることをきちんとするのがまず肝心だろう。正しい情報を得て、しかるべき時にしかるべき行動を。焦らないで、悠々として急げ。

 

日曜日

 東日本大震災に関しては言うべき言葉がない。阪神大震災を経験していると本当に人ごととは思えない。テレビを見ていると本当に悲しい気持ちになる。亡くなった方々にご冥福を、行方が分からない方々には生存されていることを、生き延びた方々には何とか復興の勇気を、心よりお祈りいたします。

世界中から寄せられているPray for Japan の1枚。

 

 しかし日曜日は第13回在宅医学会があり、ワークショップの発表者として朝早くから千里のライフサイエンスセンターに行ってきた。「食べる」をテーマとして僕以外4人の演者とともに在宅における栄養管理、嚥下などの問題を、今やっていること、提言など盛り込んで話し合う。

 僕は抗加齢医学の一環として運動の重要性を前から強調してきたのだが、次のテーマとして栄養がすごく大切なテーマと考えている。在宅で栄養不良の方、嚥下困難な方をチームを組んでどのようにマネージメントしていくか、そのシステム構築に関して自分の意見を述べる。何人かの方と新しく知り合い、これからの展望も見えてくる。

 学会自体、震災の影響があり、関東方面から来られない演者がかなりおられたようである。演題キャンセルが目立つ。しかし参加された方は熱心でその分頑張ろうという気概も感じられ気持ちのいい学会であった。

 

 学会から帰ってきて愛犬と散歩する。平和だ。うららかな春の空気が恨めしい。震災で亡くなった犬もすごく多いんだろうと思う。 合掌。

福島慶道管長

 臨済宗東福寺派管長、福島慶道さんが3月1日、78歳で亡くなった。

 この禅宗のトップの方と僕がどういう関係にあるか?

 福島管長は晩年パーキンソン病で苦しんでおられたのだが、パワーリハビリテーションをされるようになってかなりの改善を得られたのである。僕がパワーリハビリテーションのことで取材を受けた時、読売テレビのデレクターの吉田さんにそのお話をしたところ大変興味を持たれ取材をされたのです。夕方の番組、ニューススクランブルで放送されたのだが、マシンを操作されている姿(東福寺にはパワーリハビリテーションのマシンが設置されていた)、「他の方にも効くかはわからないが、私には確かに有効です」と力強く話されている姿に僕はすごく勇気づけられたのである。

 そしてその年のパワーリハビリテーション学術大会に、なんと福原管長は体験談を話しに神戸の会場に現れたのである。その時の会場のざわめき、引き締まった空気、そしてかなり不自由な体で、時には助手の方の力を借りながらも訥々とお話をされたその御姿を今でもよく覚えている。

 僕はその時初めて、後光射す人間を見たのだった。

 僕は全く宗教とは縁のない人間である。しかし本当に、福島管長が会場を出て行かれる時の、なんというか思わず祈りたくなる気分は不自然ではなかった。

 心よりご冥福をお祈りします。

禅を教えに毎年アメリカにも行かれていた。

行くと吉

 昔どこかで見た、糸井重里氏の言葉を思い出した。

 「人に会うことは風呂に入ることに似ている。風呂に入るのに最初は億劫でも、風呂上りを後悔したことはない。人に会うのも同じで、まあ会うことだよ」

 いい言葉だなぁ。僕は風呂に入るのは1年中ほぼ億劫じゃないけど、感じはすごくわかる。人に会うこと、会に出ること、億劫だなーとウジウジして後、しゃあーないかと思って行くとと結構楽しかったりいい気分になったりすることが実際は多いのだ。

 この月曜日、旧友の悪社長O君の誘いでライブハウスに行った。月曜の夜出かけたりすることはほとんどないのだが、彼と久しぶりに会うのが楽しみでやりくりして出かけた。やり残している仕事も多く、翌朝も早く、ちょっとうーんと迷ったけどままよ、と岡本のアリオリオというライブハウスまで車を走らせる。

 で、やっぱり行ってよかったんだなぁ、これが。ボサノバの歌とギターの二人。Kawoleさんと藤山龍一君。すごく好み。声とギター、気持ちにぴったりでしたが、曲もビートルズナンバー(なんとカム・トギャザー)がはいったりしてすごくおしゃれなアレンジでした。

 雨の月曜日ということで聴衆はそれほど多くなかったんだけどそれがかえってよかった。O君はかなり前からこの二人を聴いていたみたいで、ステージが終わってからKawoleさんと少し話すことができた。興味の対象がかなり近い気がする。また是非聴きに来ようと思う。

 というわけで憂鬱のシンボル、雨の月曜日も楽しく過ごす。動かないと楽しいことにも出会わない。当たり前だけど。今日はかなり眠かったけど、ま、これも楽しみの一環と考えよう。

実物はこれよりかなりくだけてます。