月別アーカイブ: 2009年3月

内と外

「早寝早起き、整理整頓!」。前も書いたけど、精神科医である春日武彦先生によると、ある種の精神疾患に非常に有効なのは薬よりもこの精神なのだそうだ。精神に病を持つ方の住居は往々にして手がつけられないくらい散らかっている。気持ちが保てなくなると、まず何よりも部屋を片付けるということが出来なくなるのである。

 

 僕の知り合いで軽いうつ病になっていた人が、元気になったときに言ってくれたこと。

「散らかっていた部屋を片付けざるを得なくなったので、いやいやながら、ほかにすることもないので片付け始めたら、段々それに熱中していくのがわかった。集中し、情熱こめて片付けるようになり、見違えるようにスッキリした部屋を見たとき、心の中のもやもやはかなり晴れていた。それからやね、なにか新しいことをやりたくなってきたのは。」

 

 アメリカのアンチ・エイジングに詳しいカイロ・プラクティショナーの本にも、外的環境と内的環境の強い相関が述べられていて、感情の充実をはかるためには、それにふさわしい住環境、生活環境を作るべきだと強く主張されていた。

 

 患者さんで、何故このような態度をとるのかどうも理解しがたい・・・と感じていた人がいるのだが、往診でその方の住まれている部屋を見たとき、突然理解できたという経験がある。外で会っているだけでは埋まらないジグソーパズルのピースは、部屋を見ることで突然出現し、ぴっったりとはまるのである。友人でもその部屋を見ることで、ああ、実は淋しい人なんだな、とか、案外充実した内面を持っているんだなとか、意外な別の顔を見たような気がしたことがあるでしょう?その人の部屋は、その人の心、内面をあらわすのである。

 

 ・・・・すぐ片付けよう! わかってるね!

 

オー、マイガッ!

好きだったのに

今日外来に、僕が禁酒を勧めた患者さんが来た。彼は高血圧、脂肪肝、痛風と、アルコールが原因の疾病を複数持っており、投薬とともに一番大事なのはアルコール量を減らすことだという僕の意見に「あっ、僕もちょうどそうしようと思っていたんです」とあっけなく同意したのであった。

 

しかし彼はなかなか立派であった。すっぱりとアルコールをやめ3ヶ月、すこぶる体調良く、血液学的数値も大きく好転している。

 

「いやー、やめてよかったなぁ。メチャクチャ体調いいですもん。特に、朝ね、朝。前はね、なんとなくドローンとしていたんですよ。今はね、ぱっちり、シャキーン、ですもん。いやー、よかった。先生のおかげです。」

 

そーお。

 

いやー、これは僕が2年ほど前に感じたことである。毎日数十年にわたって続けてきた晩酌というかナイトキャップというか、アルコールの定期的摂取をやめて僕が感じた一番印象的なことは、なんか高校生のときのような朝だな、という目覚めの感じであった。すっきり爽やか。30年以上も前に逆行したのである。まっ、朝だけだけどね。

 

最近では禁煙した人がタバコの煙を疎ましく感じるように、アルコールにかすかな嫌悪感さえ感じるようになった。ビールをはじめとするアルコール飲料諸君、スマン!裏切り者と言わないでね。長い間の付き合いだったじゃない、少しは嫌いになったりすることもあるよ。また付き合い始めたりする可能性も無きにしも非ず。もともと嫌いじゃないんだから。

 

しかし溺愛はしそうもない。そういう運命だったんだと考えよう。世界保健機構によると、世界の平均寿命を縮めている3大要因は高血圧、喫煙、飲酒である。酒は百薬の長、でもそれは11合までである。そこで止められなければすっぱり止めよう。高校生の朝はなかなか悪くないぞ。

 

もう忘れましょ。

 

 

 

 

無視する人々(春なのに)

今日は暖かだった。夕方の散歩に上着を着ずにでる。数ヶ月ぶりだろう。加圧トレーニング用パンツをはいてその上に少し大きめのズボンを着用する。ウォーキング用の踵がういているシューズをはく。完全にトレーニングだ。愛犬の散歩でなく、僕に付き合ってもらってるようなものである。

 

夕方は頻繁に犬を散歩させている人々に会う。犬なり、人なりのコミュニケーションがかわされる。

 

僕は朝の散歩は、雨が降ろうが雪が降ろうが豚が降ろうが、ここ8年ばかり休まずやっている。時間帯は微妙にずれるのだが、だいたい朝お会いする人というのができてくる。その中で2、3人、ここ数年、時々会うのだが挨拶を交わさない人、というかみんな男だな、がいる。

 

何回か顔を合わせていると、そろそろ挨拶をしなくちゃな、というのが共通認識で出来てくるのがわかるが、それらの男の人たちは避けているのである。眼をあわさない。僕は自分から挨拶をするという行動に打って出るのだが、そのときはレスポンスがあっても、別の朝にお会いするとむこうからは絶対挨拶はなく、こちらがしない限り初対面の人々のようにすれ違う。

 

これってなに?僕が胡散臭いわけ?怖いわけ?自閉症なの?スポーツウェアを着てウォーキングをしている方もいるのだが、わけわかんねぇ。一見インプレッションはみんな似ているけど。つまり冗談を言っても反応に困られるような感じ。

 

まあいろんな事情があるんだろう。確かに俺は起き抜けで髪くしゃくしゃだし胡散臭そうに見えるかもしれんな。でもな、と俺は思うのである。大人の一つの尺度は、見知らぬ人とどれだけうまくコミュニケーションがとれるかということだぞ。みんなどう見ても僕より年長であるが、しっかりしてちょんまげ。

 

とはいっても、いろんな方がいるのがこの世の常で、それでこそ世界は面白いというのもわかっております。かくして翌朝も微妙な緊張感をやり過ごしてから出勤するのである。

 

 

 

挨拶しろよな!