月別アーカイブ: 2009年11月

石ころを溶かす

僕は週に1度、朝礼をしています。ほんの数分、お話をする。大したことが言えるわけではありませんが、ほとんどが僕より年下のスタッフに対して、僕が感じていること、思っていることを知ってもらおうと思って、ネタを新しくそのために仕入れることはなく、心に浮かんだことを話すことにしています。

 

今日話したこと。 少しモデファイして。

 

「僕は、私は、落ち込んでいるの」、こういった台詞を聞くことがあります。誰でも落ち込むことはあるだろう。でもこれを人前に出すべきではないと思います。自分のしたことに対してふがいない気持ちをもちウンザリする、反省する、こういったことは一人誰もいないところですべきで人に見せるべき態度ではありません。ネガティブな気持ちは伝染するのです。

 

そして反省は3秒でいい。結論はわかっています。自己憐憫は無用です。文句を言ったり落ち込んだりする暇があるならアイデアを出そう。人生とはグッドアイデアをどれだけつないでいくかです。反省し、グッドアイデアを考え出す、その連続が生活を充実させるのです。

 

・・・その通りだ、と自分で思う。僕は沢山いいことを知っています。でも知っていることとそれを実行できているか、血肉化できているか、ということとはかなり隔たりがあります。司馬遼太郎氏の小説に出てくる台詞、「知識という石ころを心中の炎でもって溶かしているのだ」。これは知識を精神の中に溶かし行動のエネルギーに変えることが真の学問であると彼は言っているのですが、概念、知識として知っているだけではダメで、実行に移すことで初めて判っているといえるのですね。

 

・・・難しいことです。Sigh・・・(あっ、言ったそばから)。

 

 

 

 

言うは易し、じっと窓を見る

タマリンドの木

 池澤夏樹氏「タマリンドの木」を読み返す。56年前だろうか、以前読んだ時にはあまり印象に残らなかった。書評の特集で恋愛小説の傑作との評があったのですごく期待して読んだのだが。

 

 なんとなく呼ぶものがあり読み返した。こんなはずじゃない、なにか間違えてるはずだ、という気があったんだろうな、きっと。で、ここ2日で読了した。すごく引き込まれた。

 

 池澤夏樹氏は僕の何人かのフェバリトの作家の一人である。

「真昼のプリニウス」は大好きな小説で、今年の夏にブログにも書いた。

http://www.ikeoka.net/blogs/soulcherish/?p=980

なぜ前に読んだとき、気に入らなかったかわかった。プリニウスと較べると、タマリンドはストーリーがかっちりし過ぎているのだ。起承転結があり、途中で先が読めるといえば読める。池澤夏樹氏の多くの作品は先が全く読めない。静謐な空気をたたえたまま美しくストーリーがすすむ。ある種、現代音楽のようともいえるのだが(全然退屈じゃないけど)、タマリンドは太いメロディのある民族音楽のようだ。そこに違和感があったんだな。

 

 NPOでカンボジア移民の世話をタイでやっている女性と日本で商社に勤める男性の話し。今読むと、この二人の感覚が本当によく判る。前は何を読んでいたんだろうと驚くくらいだ。

 

 障害は古典的恋愛小説において必須のものだが、その乗り越え方が現代的だ。素晴らしい。主人公の女性がやはり魅力的。好みはプリニウスの芳村頼子准教授だけどね。Too cool!!

 

 これだけ印象が変わると今まで何を読んでたんだろうという気になる。暫くは池澤夏樹氏の作品を読み返すことになりそうだ。まずは「マシアス・ギリの失脚」からか。

 

文春文庫です。読んでね。

 

 

イエスタディ アンド トゥディ

昨日の日曜日は朝9時から夕方7時過ぎまで地域連携抗加齢医学研究会に出る。抗加齢医学会より臨床的な研究を進めていこうと東海大学教授の久保先生が立ち上げた研究会。以前は東京抗加齢医学研究会だったが、今回各地域でやっていこうという趣旨の元、大阪の高島先生が中心となり第1回が大阪で開催された。

 

もともとは小ぶりで内容の濃い研究会だったのだが、第1回の大阪大会は町興しをしたいという高島先生の意向があり、気鋭の研究者というより各領域でポピュラーな方が10名ほど講演。オリンピックメダリストの朝原選手の講演もあり、規模を広げてどちらか言うと一般の方々よりの会であった。参加した医者の数も少ない感じ。

 

準備の段階で当院も少しお手伝いをしており、責任者である高島クリニックI君の奮闘振りも印象的で、会の成功が気になっていた。内容に関しては近畿大学の山田先生や久保先生の講演は大変面白かったが、もう少し手をかけて欲しかったなという先生方が多かったのが正直なところ。この会が成立するまでなかなか複雑な事情もあり本当に関係者の方々の努力は大変だったのだが、それに報いるだけの内容に達していた方は・・・。少し残念。

 

会が終了後ヘルシーパスのT社長、Iさん、G and G社の酒豪T部長、当院のM君と飯を食いにいく。気心の知れた優しくも優秀な方々ばかりでいつものようにリラックスし、それなりに情報収集もし、楽しく笑って終わる。お疲れさんでした。

 

で、今日は最近続くインフルエンザ攻勢で朝の8時半から夜の8時半まで1時間休憩しただけでずーと外来をする。以前だとぐったりして終わると何もする気がなくなっていたのだが、此の頃は血の滲む様な努力の末(うそ)、人生全般にわたり疲れない術を身につけてきたので、帰りも気力充実、思わずオープンで帰ろうとライダーズ・ジャケットを着たのだが、外気温が9℃だったのでさすがに止めた。雪みたいなのまで降っている。つい2日前まで夏の陽気だったのにさ。

 

診察中に高島クリニックのI君から電話がかかった。お疲れのI君の労をねぎらう。次回もよろしく、期待してるよ!