カテゴリー別アーカイブ: 医療編

甘い生活

うーむ、ブログを書くようになってからpearlsを書く余裕がなくなってきたな。領域も違うしネタもあるのだが他にデスクワークは山ほどあるし、なかなか時間が取れない。久しぶりである。なんか長らく顔を出さなかった会合に久しぶりに行くみたいで違和感があったりして。恥ずかしいような申し訳ないような。すいませんねー。

今日はアマーいお話である。スイーツね。僕は食事の後必ず甘いものがほしくなるタイプである。これは単に習慣かもしれない。外食だとそういうケースが多く、いつの間にかどこで食べても食後はデザート、ドルチェが欲しくなるのである。いや、高級なものはいりません。アイスとかそんなので十分です。

ある時、知り合いの漢方の先生と雑談をしていた。彼が甘いもの(白桃であった)に凝った時があってわざわざ産地から取り寄せては毎日数個ずつ食していたと。その頃からどうも身体が痒くなり、年のせいかと思って保湿をしたりいろいろやったのだがどうも取れない。ふと気になって白桃を止めてみたところ嘘のように痒みが取れた。べつに糖尿になった訳ではない。同じように患者さんで原因不明の痒みを訴える人に良く聞いてみると、やはり甘いものを多くとっている人が多く、やめるように諭すと本当に痒みが消えることが多い。甘いものはいけないよ・・・というような話である。

甘いもの、白糖の害は多く報告されている。糖尿病はもちろん、痒みと相通ずるがアトピー性皮膚炎や、青少年のきれやすい体質と関係が深いという報告も多い。以前このpearlsでも書いたが糖分は体内の酸化を早め、物が古びるとセピア色に変わるがそれと同様のメイラード現象を体内で起こして老化を促進する。

最新版のAmerican Journal of Clinical Nutrition によれば、砂糖を添加した飲食物の大量摂取と、膵臓癌の発症リスク増大が関連することが明らかになったとのこと。スウェーデン人約8万人が対象で8年間の観察期間。最もリスクが高かったのはソフトドリンクを大量に摂取した場合。コーヒーなどに砂糖を加えた場合も結構リスクが高く、いずれにしろ膵臓癌発症リスクは食事から摂取する砂糖の量と関係があることが統計的に証明された。

ものすごく困った結果である。悲しいなー。もともと甘い砂糖は人間の生存に必要無いと言われている。必需品ではないのだ。でも必要なく身体に害があるからうまいんだろうな、きっと。装飾品は華美になるのである。いろいろな病態がすべて砂糖に帰するわけではなく他のファクターも絡んでくるのであろうが、いずれにしろ摂取量は少ないにこしたことは無い、間違いなく。

今日から食後のスイーツは中止である。さてと・・・代わるものは何か?そんなものを探すより人生自体を甘美にする方がいいであろう。甘い生活。ドルチェビータ。なんと美しい響きか。でもスイーツを止めるのも難しいがこれの実現もなかなか・・・。

心も肌も乾燥はいけません。

 冬になると全身のかゆみを訴えるご老人が増える。皮膚がカサカサである。乾燥性皮膚炎である。空気も乾燥し暖房も入れるとますます乾燥が増悪する。「老化とは乾燥である」という言葉もあるとおりただでさえ水分が少ないのに、おしっこの回数が多くなるからと水分を取りたがらないご老人が多い。それに唾液分泌が少なくなって口が乾燥しても、知覚的にわかりにくくなっているのでよけい水分摂取量が減る。

 ご老人に限らず小さな子供でも乾燥肌は多い。アトピーまでいかなくても乾燥肌で背中に掻き傷をたくさん作っている子が増える。

 そんな時「お風呂に入るとき、タオルはなに使っているの?」と尋ねると、驚くほどの確率で「ナイロンタオル」という答えが返ってくる。泡がいっぱい出てゴシゴシこすれて、なにかすごい清潔になった気がするタオルですが、かなり前に皮膚の黒変が問題になったことがある。こいつが悪者なのである。「いけないんですか?知らなかった」と言われる方も多い。

 身体の外側を覆う皮膚はバリアとして重要な役を担っている。病原体やアレルゲンが体内に侵入するのを防ぎ、一方では体内の水分が蒸発しすぎるのを防ぐ。皮膚の中で最も外側にある角質層が特に重要だ。細胞がきっちり並んでいることに加え細胞内や細胞間がケラチンやセラミドなどの繊維やたんぱく質、脂質で満たされているからである。

 ナイロンタオルは角質層の細胞をはがしてしまいバリアが壊してしまう。普通のタオルでもゴシゴシこするのはよくない。乾布摩擦や垢すりなんかちょっと失神物だ。石鹸も皮脂を取りすぎてしまうことがあるのであまり大量に使わないほうがいい。少量を泡立てる、それを身体にそっと置いて撫ぜるだけで十分なのである。伊丹十三の「女たちよ!」だったか「ヨーロッパ退屈日記」だったかどちらかに、石鹸は使うときこすらないでいいのだと主張している友人の話が書かれていて、彼は風呂場で石鹸の泡をつけたまま、じっと身体が冷えてくるのを我慢しながら「これが正しい身体の洗い方なのだ」と呟いているのだろうかと皮肉っぽく書かれてあったのを思い出した。彼の友人は何十年も前からスキンケアの真髄を会得していたのである!

 入浴後は保湿をおこなう。バリア機能の保持と保湿とは全く同一ではないが(セラミドは両方の性質を持つ)、保湿のみでもそれなりにバリア機能は改善される。ただし尿素は角質を溶かして皮膚をつるつるにするので子供さんやアトピーの方には適さない。大事なのは入浴が終わってから3分以内に塗ることである。入浴して皮膚内に入った水分が蒸発するときは周りの水分子も引っ張って蒸発するので何も塗らなければ皮膚は入浴前より乾燥する。しかも皮脂も減っているのでどんどん乾燥する。保湿剤は脱衣場に置くこと。身体の水分を拭くのもゴシゴシこすらずタオルをあてて水分を取る(こういうのは女性をよく知っているのだろうが男性は全く無知である)。

 アトピー性皮膚炎はアレルギーということで食事制限を厳格にしている親御さんも多いが、基本は皮膚が弱いということでスキンケアが非常に重要である。今春「ネイチャージェネティックス」にアトピーの患者さんは角質の構造と保湿能力に大切なたんぱく質であるフィラグリンを作る遺伝子異常率が非常に高いというレポートが載った。アトピーになりやすさを左右する要因として皮膚のバリア機能が重要ということだ。アトピーの患者さんの皮膚は炎症のない部分でも普通の部位より水分の蒸発が1.5倍ほど多く保湿能力が低いと報告されている。角質セラミドも6割程度しかないとされている。ポイントはスキンケアなのだ。ナイロンタオルの使用をやめただけでアトピーといわれていたのが一挙に改善した例が何例もあった。

 僕はコスメティックには全く未開発な人間で、整髪料もほとんど使用したことがない。僕の後輩でこういったことに詳しく、実践もちゃんとしている男がいるが、彼の顔はツヤツヤである。うーむ、そろそろ考えねばなるまい。うちの法人で扱っている清酒の「大関」が米を材料にして作っているスキンローションを塗ってみるとこれがなかなかよろしい。僕は車の小さな傷もタッチペイントでちょいちょいと直しておくだけであまり気にしない人間なのだが、自分のボディペイントも気にかけるようにしよう。こういうことをちゃんとすると内臓のこともちゃんとするようになる。是非皆さんも、特に男性の方、1に清潔、2に保湿です。来年からちゃんとしようね。

アルコールってどうよ。

アルコールってどうよ?僕はもともとアルコールに強いほうではない。すぐ顔が赤くなるほうだがなぜか嫌いではなく、ビールは好きな飲み物ベスト10のダントツ1位であるし(昔の発売し始めた頃のモルツが1番好き。いまはギネスとかサッポロの黒です。しかし大体考えてみるとアルコール以外の何がランキングに入るのか?)、ウオッカなんかも結構好きです。しかし1年ほど前にアルコールを止めてから、というか毎日飲むのは止めて週に1回ビール350cc程度と超ランクダウンしてから、アルコールにたいしてちょっと冷静になったようです。

アルコールは適量だと体にいい、動脈硬化を防ぐとか言われていますがむしろ実際上は過飲による弊害のほうが問題で、この世にタバコとアルコールが無ければ現在の3分の2くらいに病気は減少するだろうとも言われています。脳細胞に対する悪影響も確かなものらしい。特に最近、飲むと顔が赤くなるいわゆるお酒に弱い人にたいするアルコールの悪影響が明らかになってきました。では怖い話を一つ。国立がんセンターなどが参加している厚生労働省研究班の報告から・・・

アルコールは体内で悪酔いの原因物質であり発がん物質でもあるアセトアルデヒドに分解される。アルコールを飲んでから顔が赤くなるフラッシング反応はアセトアルデヒドによる。酒に弱い人が強くなったといってもそれは酔いに体が慣れるだけで決して分解能力が高まるわけではない。アルコールをアルデヒドに代謝するアルデヒド脱水素酵素には正常型以外にヘテロ欠損者(酒に弱い人)とホモ欠損者(酒が飲めない人)が存在し、アルコール飲酒後の血中アルデヒド濃度がそれぞれ6倍、19倍となりフラッシング反応が引き起こされる。ヘテロ欠損者は少量飲酒の場合健常人と比較して8.84倍の食道癌発ガンリスクがあり、3合以上飲酒した場合11.4倍の発ガンリスクがあることが判明した。アンケート調査によると、過去にフラッシング反応があったケースではヘテロである確率は95%であり、以前もしくはお酒を飲み始めた頃にフラッシングを経験した人は食道癌のハイリスクと考えられる。毎日飲み続けると体内にアセトアルデヒドが常時滞留し、血液から呼気に放出される時に、食道や咽頭でガンを引き起こすのではないかと考えられている。さらに、かなりの量を飲まれてきた方は特にハイリスクであり、さらにこうした人では、食道以外にもがんが多発することも指摘されている。
 

簡単に言うと酒に弱いやつが無理して飲んでると癌になりまっせ、ということだ。アセトアルデヒドは本当に困ったやつで、シックハウス症候群の原因とも言われているし、酒を飲むと湿疹が出たりする人がいるが、これも汗に分泌されるアセトアルデヒドが原因とされている。では酒に強いやつは幸せかって?飲みすぎると肝硬変だぜー。酒は百薬の長とか言うがちょっと怪しくなってきた。酒は毒?しかし・・・

僕があまり酒を飲まなくなったのは精神的なこと(気分的に酒による酔いが必要でなくなった)や飲むと全く仕事が出来なくなるとかいったことが大きいが、でも全く飲まないというのもどうやら不可能なようだ。村上龍氏は「人間は罪を求めて酒を飲む」と書いている。そうだなー、罪無しの人生も寂しいし。癌になるような罪は避けたいが、まっ、そこが微妙なとこだね。

ジェネリック医者

最近外来でジェネリックはありますかと時々尋ねられる。僕の診療所は院外処方をしているので、患者さんが好きな薬局に行ってそこに置いてあればジェネリック医薬品を使用できるような形で処方箋を書きますと答える。新しい有効成分を含む医薬品を「先発医薬品」と呼ぶのに対し、先発医薬品の特許が切れた後に他の製薬会社が販売する「同一有効成分、同一投与方法、同一用法用量、同一効能効果」の製剤を「後発医薬品」又は通称として「ジェネリック医薬品」と呼ぶ。最近テレビでよく宣伝をしているので行き渡ってきたんなぁと思う。世界のほとんどがジェネリックを使っているんだ、成分も一緒だし安くなるんだったらこっちのほうがいいよなーと普通思うな。でも本当に全く同じなのだろうか?薬剤師の知り合いが結構1錠1錠にむらがあったりするとか言ってたな。

医事新報という雑誌に本田孔士(大阪赤十字病院院長)先生がジェネリックについて書かれていた。それに一部補足してここに書く。
健康保険未加人者が多く一流メーカーの薬が買えない人も多い、そしてジェネリックを扱う会社の規模が大きくてMR(薬の説明、販売をする人)を多く抱えている欧米と、ほとんどが健康保険に加入していて、ジェネリックを扱う会社のMR数は圧倒的に少なく医者に対して情報提供できる体制の整っていない日本の、社会的背景の違いを全く説明せずに、「欧米(実際は一部の国)では よく使われているから」という断片的情報のみで、あたかも先発品と全く同質の薬であるかのような誤解を容認している日本の現状には問題がある。各国のジェネリック薬品比率を調べてみると、ドイツ41%、米国40%、スウェーデン39%、デンマーク22-40%、イギリス22%、オランダ12%、フランス3-4%、イタリア <1%、スペイン<1%、ポルトガル<1% と、ジェネリック薬品比率が多い国というのはドイツ・米国・スウェーデン程度であった。
テレビのコマーシャルでも、「料金が半額で、しかも先発品と同じ効き目なんだってね」と患者さんに言わせているが、本当に「同じ効き目」が実証されたのだろうか。たとえ先発品と同じ主成分を含むとしても、同じ治療効果が正確な治験によって十分に証明された上でのことなのだろうか。 同じ成分、同じ溶出率だから同じ効果があると、一概に言い切れないのが薬である。先発の会社は主成分構成以外の、例えば「製造技術」で、後発メーカーに知らされてない何かを持っている場合がある。 医薬品にも、その成分はわかっても、例えば溶媒の質や作り方の手順に妙があったり、他者にはなかなか同じものが作れない製造技術が隠されている場合が、すべてとは言わないが、ある。 同じ器械を使い、同じ手順で手術をしても結果は必ずしも同じではなく、その過程に言葉では伝わらないノウハウがあるのと同じであ る。料理でも、同じレシピ、同じ手順で作っても、名人と素人で味は決して同じではない。
日本のジェネリックを扱う会社は、医療者に対して、先発品の会社のようなMRによる情報提供や副作川モニターシステムを持っていない会社が多い。少なくとも、日本では現在、そのような状態で流通している薬であるという情報を、ユーザーである患者さんに十分に知らせた上で、どうするかを尋ねるべきである。安全性情報努力を割愛・省略することにより、先発より3割ほど安くしているのである。

主な趣旨は「本当に全く同じ効果、安全性か?」「トラブルが起きた場合対応は十分考えられているのか?」ということだと思う。ここらへんは人間が使用する薬剤の要だが、厚生労働省は医療費を下げようという意図が先行してそのあたりを隠している。こういったことはよくやってはるみたいです。薬剤費を下げたければ新薬の値段を下げればいいのにと思うが(薬の値段は薬会社が決めるのではなく厚労省が決めるのである。これも自由競争の社会なのになんか変じゃない?)そこはあまり問題にされない。なぜだか僕にはわからぬ。

個人的に何種類か使ってみた感じでは効果はそんなに大きく変わらない感じがするが、薬局と相談して評判のいいのを選んでいるのですべてのジェネリックがそうだというわけではない。これはもうわからん世界だなー。少々高くても先発品を使うか、アドバイスを受けて、いいと思ったらジェネリックを使うか、それはあなたが決めること。人任せではなく自己責任、自分の健康は自分で守ってねという、小泉政権の思想そのままですね。僕に出来ることは正確に情報を伝えることだと思います。もうすぐ医者も選択制になったりしてね。ジェネリックだけど安いからいいやとか。いや、保険制度も危ういですから冗談ではございません。

No Pain, No Gain

No Pain, No Gain. 痛みを伴わなければ進歩はない。これは20年以上も前のSoloflexのコピーだ。自宅で出来る一体型筋トレマシーンのはしりで、そこそこいい値段がしたと思うが、その頃大学院生だった僕は広告イメージの格好よい男性の裸体とこのコピーにひかれ早速購入したのである。

それは一人暮らしの僕の部屋に置くのにはあまりに大きく、大学院生のたまり場である共同の研究室に設置された。あるときふらりと研究室に入ってきた教授が「何やこれ!?遊び道具を置いとくな!」と言いながら蹴飛ばしたので我々の仲は険悪となった。生活がまさに研究と一体となっているのですと主張したい大学院生と、私物を仕事場に持ち込むなと言う教授との、まあよくある話です。今となっては教授の気持ちもよくわかるがその頃は怒り心頭で、わからずやのもとでは仕事は出来んと飲み会でのネタによくなった。

しかしSoloflexはその使命を十分に全うすることなく単なる場所をとる服かけになってしまったのである、予想通り。しかし捨てるにはしのびず、今でも僕のもとにある(なんと物持ちのいい!)。しかし使ってない。

これを有効利用しよう。これがテーマである。相変わらず僕の足の状態は一進一退、じゃなくって明らかに最近Gain しつつある。これは靴のソールを工夫したりも大きいが、基本的にパワリハも含む筋肉トレーニングが1番大事と実感している。サボるとてきめんに可動性が落ち痛みがよみがえる。

日本の高齢者が寝たきりになる原因は認知症と筋骨格系疾患がほぼ同程度。みんな認知症は恐れるが関節や腰のトラブルは、「年だから」と深く考えていないことが多い。しかしそれはあなたの生活レベルを大きく落とす可能性が高い。予防が非常に、もう一度言おう、ひじょーに!大事だ。それには日常的な動作だけでは不十分で、ある程度時間をとってトレーニングをすべきである。

単なるトレーニングをするといっても持続しない。目標を設置することにする。僕は1年後にミニトライアスロンに参加することだ。まだジョギングも怪しい僕が何とか計画を立てて頑張ろうと思う。筋肉を鍛え(Soloflexよ、出番だ、まずハタキをかけなきゃな)、走り、泳ぎ、自転車をこぐ。腹筋も6分割ぐらい出来るかな、えへへ・・・(取らぬ狸の皮算用だ)。「ランナーズワールド」によれば、フルマラソンを5時間40分で走る93歳のランナー、ファウジャ・シンは、初めて走り出したのが81歳の時だそうだ。こんなことを知ると不可能ではなさそうな気がする・・・

とりあえずはじめよう。一緒にやりたい人、参加者を募る。結果は1年後にご報告します(その頃わからないように削除してたりして)。

若いのにカラメル化

あぁ、もう1年たったか…去年も夏休みの終わりにパールスを書いていました。去年と同じく何も考えず、文明を離れた場所でぽつねんとしていたのですが、なんと生まれて初めて眩暈を経験。頭を動かすと目がぐるぐる回って数秒でおさまる。どんどん増悪もしないようで、これはどうも良性発作性頭位変換眩暈症のようだと考えて1日おとなしくしていました。起こるとわかっている方向に頭を動かすとだんだん慣れてくるのでそう指導しても良いとアメリカの教科書に書いてあったのを覚えていて、この患者さんが来ると僕も軽い方にはそう言う時があったのですが、みなさん「そんな…」と答える。自分でなってみて思いました。「そんな…。吐くやないか!」自分より頑強な人の言うことは信用してはいけません。

頭を動かないと全然平気なので結果的にまたまた本がよく読めました。アンドルー・ワイル博士の「ヘルシーエイジング」をまるまる読んでしまったのですが、これは素晴らしい本です。僕はこのたびおめでたくもまだ少数しかいない抗加齢医学会の専門医になったのですが、今巷ではびこるアンチエイジングという言葉にはどうも抵抗がある。年取ることは悪いことではないのでー、だのになんでアンチだ!このヘルシーエイジングという言葉を使うべきですね、本来の理念から言うと。その年齢におけるベストの身体的、精神的健康を保つ(オプティマルヘルス)というのが目指すべきところですから。

「ヘルシーエイジング」でワイル博士は1つの仮説を紹介しています。「カラメル化による老化」。カラメル化?砂糖を加熱するとキャラメル色に変色しますね。これをいうのですが、料理の際に砂糖をクリームやバターと混ぜて加熱する、つまり糖質とたんぱく質やアミノ酸が反応するとトーストやグラタンのきつね色になりおいしい匂いがします。これをメイラード反応(この本ではマヤール反応と書いています。同じことですがメイラード反応のほうが一般的)といって多くの魅力的な料理の基本であるのですが、これは古ぼけた写真が黄ばんでくることや、土が褐色であることのひとつの理由でもある。そしてこれは生物の体の中でも普通に起こっているのです。

生体には糖質や蛋白がいくらでもありますし、触媒もあって加熱しないでも体温だけで完全な反応が起こる。動脈硬化や白内障など老年病の進行が糖尿病の方で特に早いのは常識ですが、その病理変化のかなりの部分がメイラード反応の結果として生じているとされています。もしかしたら老化とは、我々の体組織のゆっくりとした褐色化、つまりカラメル化ではないのか?

むむー、甘いものを食べると体の中で組織がカラメル色に変色していく気がしませんか?そこの女の子!君のお腹の80%はカラメル化しているぞ!この説は1部認められて研究が進んでいますが老化の本態かどうかは断言できない。しかし糖化の最終産物が身体の様々な障害を引き起こすのは間違いないようです。そもそも古来人間の手に入る糖質源は熟した果物か蜂の巣とかそんなもんだったのだ。甘いものはいかん!これから食べないようにしよう、と深く決心して3時間後には忘れてましたが。眩暈がしそうです。

しかし糖を断たないととうがたつよ、みなさん。若いのにカラメル化はいけません。

薹が立つ(とうがたつ) 1.蕗(ふき)や菜の花などの、花茎が伸びる。固くなって食べ頃を過ぎてしまう。2.人が、その目的に最適の年齢を過ぎてしまう。若い盛りが過ぎる。特に、婚期についていう。

植木君は友達

この前のパールス以来、どうも植物が気になっています。ペットはいまや完全に人間のコンパニオンとしての地位が確立され、今の日本では12歳以下の人口よりペット数のほうが多いという、信じられないことになっています。飼い主に擬人化され、また特に犬は犬同士より人間に関してよりシンパシーを感じているような半人間が多い気がします。今君が飼っているのは犬じゃないよ、犬の着ぐるみを被ったちっちゃい男だ、よく見てみ。

犬が歩いている部屋で観葉植物が静かにたたずんでいる。昔サボテンが喋るというのがあったなぁ。優しい言葉、励ましの言葉を植物に話しかけていると葉がつやつやしてくるというのもよく聞く話だけど本当のところどうなんだろう。

「樹功」というのがあります。気功の一種ですが、近年リバイバル著しいらしい。木に向かって立ち、木から気を貰いつつ自分の気を練ってゆく。木と対話しながら自らも樹木となって同一化する感覚を磨いていき、自分の人間としてのあり方を相対化していく総合的な感性トレーニング。自分の気のタイプに応じて好適な樹種も異なり、自分にあったパートナー的な“私の木”を見つけることも重要なポイントとなるようです。

アロマテラピーとかフラワーレメディとか、香りや飲用することで体調を整えることも最近では普及してきていますが、もともと薬は薬草というか植物から得られたものが多いのです。そこで大事なのは単に物質としてある要素を摂取すればいいというものではなくて、樹功や園芸療法(園芸に参加することで認知症や欝などが改善することが報告されている)のように植物との関係性からその植物に「治癒」されるという可能性があることです。その関係性から、伝統的な薬草医は人間のためだけに際限なく採取することはせず、1部は他の生物のため、一部はその植物のために残しつつ(1番勢いの強い葉を!)残り物だけをいただくという植物と付き合う作法を持っていました。人と植物は共生していくのです。

恐竜の絶滅には60以上の説がありますが花によって滅ぼされたという説があります。草食恐竜の食料は羊歯だったのですが、胞子は水の仲立ちがいるため羊歯は水辺に繁殖していました。しかし花は花粉による風媒という画期的なシステム、ついで蜜を利用した昆虫との共同作業を開発したため繁殖力が大きく、羊歯はだんだん北方に追いやられ、恐竜も北方に移動せざる得なくなりました。その時期に隕石の落下が起こり決定的に恐竜は絶滅したのです。

花はその時期再び画期的なシステムを生み出しました。果物です。そしてパートナーとして哺乳類を選び、果物を食べた哺乳類が移動した先で種を排出することにより勢力を広げて行ったのです。哺乳類である人間は植物によって選ばれたことで今があるというわけですね。

どうも周りにある植物が静かに僕たちをじっと見つめている気がしませんか?あんなこともこんなこともみんな見られているぞ。悪いことは出来ません。人間だけがこの世界を支配しているという考えはとっても傲慢ですね。「プラントロン」という機械は植物の葉に電極を取り付けて電位を測定し、それを音声信号化するものなのですが、これが面白いくらい植物の環境に対する反応を反映するそうです。そして大事なのは、そこで聞き取れるのは植物とそこにいる人間との関係性を表現しているようだということです。あぁ、枯れちゃったのはもうあきれたからに違いないですね。ショック死かな。明日からちゃんと挨拶してあげよう。いいですか、みなさん。

「レオン」を目指せ!

大学院の時、毎日実験ばかりしていた。当時は循環器の生理学的実験では犬を使うのが一般的で、ビーグル犬で揃える事もあったが多くは保健所から払い下げの捨て犬だった。いろいろな犬がいた。多くは雑種だったがシェパードやコリー、チャウチャウとかもいた。何でこんなかわいい犬を捨てるんだろうとチラッと思った。

慢性的な実験ではなく急性実験では、1日でデータを取った後、犬は処分される。犬は麻酔をかけて挿管、人工呼吸器下で開胸され、心臓に処置をして様々なプロトコールで実験、データをとる。最後は塩化カリウムを静脈注射して心停止を起こす。

僕は実験が面白くてたまらない時期で、自分でデザインして学会で発表し、それなりの評価を得ることが生きがいだった。実験がうまくいかないときは2匹、3匹と成功するまで続けることもあった。真夜中になった。実験だけをする建物(動物舎)があり、そこで多くの科の先生が実験をしていた。100匹以上犬を使うと「名犬会」入りといわれ(もちろん冗談だが)尊敬を受けたが(もちろん冗談だが)、僕は最速で名犬会入りした部類で、独身だったから動物舎に住んでいたような時期もあった。動物舎の技師の人たちとよく遊びに行き、医局には行かずに入浴も洗濯もそこでしていた。なんというか狂ってたのかなぁ。

大学院の後輩を指導していたが、ある時どうしても犬を殺すのがいやで実験ができませんというやつが現れた。僕はあきれ、激怒した。何のために大学院に入ったのか。いったいどうするんだい?「でも出来ません。」彼はしばらく実験をしていたが、こんな残酷なことは出来ないと決心したのだ。彼の決心は固かった。別の形の実験をすることになり、ある日、彼は動物舎で実験に使えない雑種を、飼いたいからと貰って帰った。

それから20年たって今でもあの時の実験グループはボスを囲んで年に3,4回集まり飯を食う。昔話も出る。「あの時もって帰った犬はどうなったの?」「長生きしたんです。14歳ぐらいかなぁ、老衰みたいで割と弱ってたんです。ある時庭で花火をしたらその音に驚いて外に飛び出していって、それきり帰ってきませんでした。」「そうかぁ…」

僕は今では彼の気持ちがよくわかる。今実験をしろといわれても、犬を使う気持ちにはなれない。彼には犬の声が聞こえていたんだ。僕には聞こえなかった。でも聞こえるようになったと思う。なぜか? 前は区別していたんだ。人とそれ以外。人種差別みたいなもので、自分と違うものと思っていると声は聞こえない。今は人も犬も蚊も同じだと思っている。どの人種も同じだと思っている。それは犬を飼ってからのことだ。そうでないと僕にはわからなかった。

動物を飼おう。殺生は出来なくなる。本当です。そして次の目標は植物の声が聞こえることです。目指せ「レオン」!。診察室が火事になれば、植物の鉢を持って僕は外に駆け出す。スタッフはおいといて(ウソだぴょん)。

ニッチな男

長年患ってる(もうジジイの発言だね!)足の具合について最近変化の兆しが見られる。明らかに改善のスピードが加速しているのだ。ウッシッシ。なぜアキレス腱の手術をしてかくも長びいているか?これはもともと手術した方の右足股関節はボロボロで、朝寝起きは階段を登るのに手すりにつかまらないと痛くて上がれないというのが日常だったんだな、よく思い出してみると。で、右足にギプスをしていると動かさないので非常に楽になった、やったーと思っているとはしゃぎ過ぎて左の股関節がギクッとなり、両足を使えるようになると両方とも痛くなったという不幸な経過である。長い距離を歩くのがためらわれる(ジジイの発言、再び!)というのはちょっとこたえるが、年をとって足が不自由な人の気持ちはよくわかった。

で、どうするか。痛み止めを飲むというのはイージーな解決策で、実は多くの高齢者は痛み止めを使用しているが腎機能が悪くなったり胃を悪くしたりと副作用も多い。僕もゴルフをするときは1錠飲んでからいくと全然楽で(そこまでしてゴルフしたいか…)気持ちはわかるができればお世話になりたくない。ここは自力でリハビリテーション、努力して動かしていく、骨、関節を支える筋肉を鍛えていくしか道はないのだよ、ベイビィ。

幸いにして僕にはパワーリハビリテーションという手段が近くにあり、痛みに対しては鍼灸、アロマセラピィという味方があったが、もっと日常的にいつでもどこでも鍛えられないかというのが課題であった。で、最近それがほぼ確立してきて、それとともに歩くのが楽になってきたのでそれを皆さんにお伝えしたい。股関節のトラブルを抱えている人は多いので。

まずは1日10回でもいいからスクワットをやりましょう。相撲で股割りという稽古がありますが、すこし両足を外側に開いた状態でゆっくりと腰を落としていく。背中は垂直なままで、前かがみにならないで、曲げた足の膝が足の指より前に出ないように腰を落としていく。膝が90度まで曲がったらそれでOK。今度はゆっくりと戻していきましょう。その時完全に膝を伸ばしきらないで、少し曲げたままで次の屈伸に入る。行程はできるだけスローに、呼吸もゆっくりしたままやりましょう。10回できるようになったら20回くらいまで。それを1日3回位する。できれば膝の曲がる角度をもっと深くしてもいいです。

わざわざ時間をとるのはこれくらいにしておいて、後は暇があればやる。ふと時間が余ったとき、ボーとテレビを見ているのならその時に、ともかく時間を見つけてこまめに稼ぐ。これがコツです。

案外何もしていない時間、というか実は複数のことができるのにやってない時間というのは多い。歯を磨く時、片足で立つ(これは大腿骨頸部を鍛えるのに役立つ。ここは高齢者で骨折の多い場所で、寝たきりになることが多い。この片足立ちで有意に骨折が少なくなることが証明されている)。または爪先立ちになる。車に乗っているとき、停車中にハンドルを両手で左右から力を入れて押す。大胸筋のトレーニング。本を読むとき座らず立つ。またまた片足立ちで。またはいすを使わないで中腰で読む。

こういうのはいくらでも工夫できる。身体だけでなく仕事も数分で片付くのに取り掛かるのが億劫でずるずる出来上がりが遅れているものが多い。そういうのを選んでおいて、あいた中途半端な短い時間にさっと取り掛かる。完成しないかもしれないが、一度とっかかると続けることが簡単になる。案外手間じゃなかったな、と思ってしまう。

隙間のような短い時間を利用して身体を鍛える、仕事をしてしまう。案外すでに実行している人は多いんじゃないかなとも思うが、かなり有用ですよ、このニッチは。使いであり。ニッチな男になりましょうね。

禁煙近縁

タバコを止めたのは二十歳くらいのときだ。大学のクラブが競技スキー部で、ほんのちょっと長距離走が速かったからノルディックという走るスキーをやることになった。はからずも。荻原健二が出てから日本でも知られるようになったがそのころは全くマイナーなスポーツで、大会で部全体として得点を稼ぐためには水物のアルペン(滑降や回転など上から下に滑るやつ。実力があっても転んだりするから得点が読めない)以外にある程度実力どおりの結果が出るノルディックを鍛えるほうがかたいので、しんどいのはいやだーと言うのを無理やりやらされた訳です。箸にも棒にもかからない時期が続いて、これではいかんと一念発起。いい成績が出るようになってくると面白くなってきてもっと練習しよう(基礎は長距離の走りこみ)というわけで、タバコを吸ってると走れないから完全に止めたというわけです。スポーツ選手が喫煙なんて今では話にならないですが、その頃はそれほどシビアじゃなかったです。以後時々飲み会で吸ったりすることもあったのですが、それで終わって再び続くことはなかった。

ニコチンパッチが6月1日から保険適応になったと報道され、ここ2週間程で10人以上の患者さんがニコチンパッチを希望された。「はいはい、まいどありー♪」と言いたいとこなんですがそう簡単には入らないのです。保険で手に入るのは限られた施設、限られた患者さんなのです。知らなかったでしょー?そういう都合の悪いことはあまり報道されず、医療機関に説明させて「何だよー」と言われるわけです。なんか、ほんといつもそうなんですけど。施設基準というのがあってそれを満たしていることを(悪名高い)社会保険事務局に届け出ていなければならない。敷地内が禁煙だとか禁煙治療に係る専任の看護師、準看護師を1名以上配置することとかいろいろあるのですが、呼気1酸化炭素濃度測定器を備えていることというのがあって、こいつが10万円以上するのだ。呼気1酸化炭素濃度を測定すると、その人の喫煙数がほぼ正確に推定できる。

使用できる人もスクリーニングテストでニコチン依存症と診断される必要があり、ブリンクマン指数(1日の喫煙数X喫煙年数)が200以上であることなどハードルがある。「ニコチンパッチ、保険でもらったぜー、すっげー、えらいぜ俺!」と大威張りしたくなりますね。ブリンクマン指数は400以上で肺がんが発生しやすくなり,600以上は高度危険群。1200以上で喉頭がんの危険性が極めて高く、ブリンクマン指数が400になる前に禁煙することが望ましい。今計算した?

「禁煙なんて簡単だ!俺は何度もやっている!」というのはマークトウェインでしたっけ。ニコチンパッチのハードルはここでも。もし失敗したとして、また一からやり直しーというのはあると思うのですが、1回目の開始日より換算して1年後でなければリスタートはできません。

なんていろいろ書きましたが、でも禁煙は実行すべきです。禁煙に手遅れはなく、全く元のようにはならないまでもかなりのところまで取り返しがきく。止めて12時間以内には血中の1酸化炭素濃度が下がり始め、8ヶ月以内には肺は以前よりきれいになり、5年後には動脈の老化度が喫煙しない人とほぼ同等まで回復する可能性がある。1日1箱タバコを吸う人は実年齢より8歳老化しているといわれるが、禁煙により7年は取り返せる。

8週間のニコチンパッチ。保険診療で診察代も入れて8〜9000円位、自費でも20000円位です。タバコ代を考えると、そしてこれからの人生を考えると超お買い得では?ご存知とは思いますが明らかになっているタバコの害を列挙。著しく動脈硬化を促進(心筋梗塞、脳卒中にとてもなりやすい)、肺癌、喉頭癌、腎臓癌、膀胱癌のリスクを増やす。乳癌も可能性あり。慢性閉塞性肺疾患(COPDというやつでお年寄りが息苦しそうにしているのは心臓よりこっちが多い。これからの著しい増加が懸念されている。)免疫力の低下(風邪も引きやすい)等など。みんな自分だけは関係ないと思ってるんでしょう?甘っー。これらから逃れられる確率はワールドカップドイツ大会における日本代表の決勝トーナメント進出の可能性くらいです、知りませんけど。

それでも吸ってるチャレンジャー達よ!安心してね。僕の診療所でも7月から保険がきくようになります(多分)。来たれ!勇気ある自殺志願者たち!呼気1酸化炭素濃度測定器をかまえて待ってるよ!