「外科医は世界一のお金持ち」を読む

 日本医事新報を読む。毎週送られてくるのだがどんどんたまってくる。大正時代から続く医学の総合雑誌であるが、専門性はなく大学病院の医者はまず読まなかった。古臭い感じだし。でも僕は上司のN先生から専門バカにならないようにと勧められたのである。

 「みんな読まないけど臨床にこんな役に立つことが載っている雑誌は少ないです。毎週ちゃんと読んでいたら怖いものないです」彼の鹿児島訛りの口調もありありと思い出す。あきれるくらい優秀だったのだけどガチンコ勝負の人でいい加減なことが嫌い、誤解もあっていくつか病院を変わられ、40代でくも膜下出血で亡くなられた。

 波乱万丈だった彼の人生に心より合掌。

 で、医事新報である。巻頭のエッセイが「外科医は世界一のお金持ち」とタイトルされ、アルバートアインシュタイン医大教授から慈恵医大血管外科教授になられた大木隆生先生(まだ40代である)が書かれている。

 人間は「衣食足りてトキメキを求める」。お金は水みたいなもので所要量に足りていればそれ以上あっても意味ない。ビル・ゲイツはじめ世のお金持ちが行き着く先が決まって慈善事業であるのは衣食足りてトキメキを求めるからである。私は人に感謝されることにトキメキを覚え、医者の中でもより実感が得られやすい外科医を選んだ。己の知識と技量で命永らえさせる外科医療で得られるトキメキはプライスレスである。外科医が日々味わっているトキメキをお金に換算したら外科医は世界一のお金持ちである。

 ・・・感嘆するしかない。天職を得た人間の放つ輝きが溢れている。この世のすべての外科医が同じ気持ちを持っているわけではない。しかしこう言いきれる人間がいる以上、みんなに可能性があるのだ。そしてこれは外科医だけでなく、医療介護に携わる人間すべてに言えることである。そして他の職業の人にも。

 最後のフレーズで完全にノックアウトされる。

 神様が私に「ビルゲイツか大木隆生」のいずれになりたいか選びなさいと問うたら、私は迷わずに後者を選びます。

 やりやがったなぁー。負けたくない気持ちがムクムクわいてくるぞ。

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彼です。こんな考えを持つ方は大概海外生活が長いというのは日本に何か問題があるのでしょうか?

「外科医は世界一のお金持ち」を読む」への4件のフィードバック

  1. azumi

    「○○○で得られるトキメキはプライスレスである」と今の自分の仕事、役割に置き換えてみました。まだまだ、人間的にも未熟で役割をこなせているかと問うてみると、???ですが、確かにそのトキメキを感じた瞬間は何度もあります!!
    自分の可能性を信じてまだまだ頑張らないといけませんね。
    先生いつもありがとう!!
    先生の記事で、考えさせられること多々あり!
    さぁ~、お仕事お仕事。今後の人生この“トキメキ”をたくさん感じて大金持ちになるぞ~!(^^)!

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  2. 着ぐるみ院長

    azumiさま、コメント有難う。
    いや、偉い人はたくさんいるものです。

    僕も書かせてもらうことで、自分自身気が付くことが多く、それだけでもブログを続ける意味があるなと思っています。

    「僕は、私は、世界1のお金持ち」こういきたいねー。

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  3. 大木隆生

    外来ウォッチ先生、Azumaさん
    友人からこのブログの存在を教えてもらいました。ナイスなコメントありがとうございます。私はNYで12年間外科医として活動してきましたが、その間に幾度も米国人に、この医事新報に書いたような持論を披露しましたが、ほとんとの米国人に、「大木は寝言を言っている。金、物こそ全てだ」と言われ、理解が得られませんでした。
    日本は捨てたものではありません。こうした「トキメキ」や社会貢献など、お金で測れない物の価値を分かってくれる方がまだたくさん存在する事を知り、日本人であることを改めて誇りに思うと同時に、祖国に帰国した決断が間違っていなかったと確信しました。ドクターズマガジンの11月号にさらに詳細な記事が掲載されますので、そちらもご一読いただければ幸いです。
    こうしたブログはとても励みになります。ありがとうございました。

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  4. 着ぐるみ院長

     大木教授、コメント有難うございます。ご本人からコメントを戴けるなんて、暇つぶしで買った宝くじが当たったような、びっくりです!ブログを続けていた甲斐がありました。
     先生の文章は本当に心に残りました。僕も世界1のお金持ちと言い切れるように精進したいと思っております。
     ドクターズマガジンも拝読させて頂きます。お忙しいところ本当に有難うございました。より一層のご活躍を心よりお祈りいたしております。また先生が実際にも世界一のお金持ちになられるように(失礼しました!)。

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