「型」は大事よ。

武道とか芸道において「型」ってのがありますね。斉藤孝によると「型」は要約力の結晶であり、様々な動きの中で、最も基本となる動きに動作を限定していくことで全体を押さえることが出来る。これが型の基本であり、これは現実の多彩な動きをいわば要約したものである、ということになる(「できる人」はどこがちがうのか ちくま新書)。基本である「型」を何度も繰り返し自分のものにしていくことで発展していくことが可能となる。

「型」にはいろいろあるが、その一つと言っていい呼吸法というのは結構多くの武道で取り入れられています。今下手の横好きを絵に書いた太極拳を細々とやっていますが、そこでも呼吸はよく言われる。何でもこのては腹式呼吸でゆっくりというのが共通点です。

で、面白い文献を見つけました。Hypertensionという権威あるアメリカ高血圧学会の雑誌ですが、「本態性高血圧においてゆっくりとした呼吸は圧受容体感受性を改善し血圧を下げる」2005,46:714-718というのです。本態性高血圧というのは皆さんご存知の普通の高血圧のこと。圧受容体というのは人間が持っている血圧のセンサーで常に血圧を監視しており、一定の血圧に保つように働いています。高血圧の方はこのセンサーが少し鈍くなっている。ゆっくりとした呼吸(1分間に6回の呼吸。分15回の速い呼吸の場合と比較)はこの感受性を改善し血圧を下げるというのです。

自分で血圧を測ってみるとわかりますが、何回か測定するとき、ゆっくりとした呼吸を繰り返していると下がってきます。吸気、呼気でも心拍数は変化するし、交感神経、副交感神経の反射や心臓への血液流入量の問題などいろいろな因子が関係してきますが、確かにゆっくりとした深い呼吸は血圧を下げる。気分も落ち着いてくる。

「悲しいから涙が出るんじゃない、涙が出るから悲しくなるんだ!」という台詞を読んだことがありますが、然り!この文献でも高血圧患者のもともとの呼吸数は増加していると報告しています。人間は自律神経という、本来自分では意識して調節することのできない血圧や脈拍や発汗などをつかさどる神経があるのですが、呼吸は本来自律神経が支配する領域でありながら自主的に変化させることが簡単にできる唯一の運動であり、それがため自律神経の領域にこちらからアクセスすることが可能な唯一の運動であると考えられます。血圧が高くなると呼吸数も早くなっているが、意識してゆっくり呼吸すると血圧も落ちてくるのです。ヨガの行者は血圧や心拍数を自由にコントロールできるようですが、これは呼吸がポイントになっているに違いない。

で、「型」です。丹田を意識したゆっくりとした腹式呼吸。これを生活の型にしようでないか。武道の達人にはなれないかも知れないが、少なくとも今よりは健康的になると思うよ。そこから大いに人生を発展させよう。

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