パワーリハ・re-mix

春だなぁ。桜もなんだか今日で終わりの感じです。薄くけぶった春の風の中、ゴルフの打ちっぱなし(車はもち、オープン)と犬の散歩に出かけたのですが、後はおとなしく第6回パワーリハビリテーション学術大会に出す演題の抄録を書いていました。で、いろいろ勉強し直ししていたのですが、もう一度おさらいというか、パワーリハのエッセンスをまとめてみよう。

パワーリハビリテーションはその名前とジムに置いてある筋トレ機器のような外観のマシンのせいで、相変わらず筋肉トレーニングと思われており、「高齢者に筋トレしていいのか!危なくないのか?」といった誤解から解放されていないように思います。パワーリハは筋トレではない!ぜーんぜんちゃう!というのがやっぱり一番大事なとこかな。ではなにか?パワーリハはヨガです。いいですかー、皆さん。ストレッチと言ってもいい。

僕はアキレス腱を切って手術してからもともとあった股関節の故障が悪化して、結構歩行もままならない状態が続いていました。で、ある時パワーリハをやったのですが、終わったその瞬間から足が軽くなり、歩行に力が要らなくなる、リラックスした感じがして驚きました。今やっても同じように感じます。パーキンソン病の患者さんで、同じように終了後から急に歩行状態が改善する方が居られますが、その効果が筋トレで得られるわけがない。低負荷の反復運動による筋の脱力、協調運動の改善が考えられますが、これを日常的に繰り返すことにより神経—筋肉連関の再構築が起こり動かしやすくなるのです。

筋トレはレジスタンス運動であり、無酸素運動です。パワーリハは有酸素運動であることが証明されており、血圧の低下、糖尿病の改善が起こります(当院でも経験済み)。今それ以外にも心臓疾患、呼吸器疾患のリハビリにも有効と報告されています。つまりキモは、本来有酸素運動が有効なのに歩いたりすることさえ困難な方でさえパワーリハなら可能であり、その恩恵を受けることが出来るということです。

パワーリハのもう一つの特長として脱落が少ないということが挙げられます。リハビリテーションは本来苦しい。動きにくい身体を動かしていくのですから痛みもあるしつらいです。やる気のある人しか続きにくいのですが、パワーリハはそんなことがない。気持ちがいい。たまにスポーツをすると「ああーいい気持ち」というのがあるでしょう?あの感じが起こります。低負荷でしんどくない、単調な反復運動にはβエンドルフィンなどのいわゆる脳内麻薬といわれる内因性オピオイドを分泌させる作用があり、それが作用しているようです。それ以外にも神経伝達物質であるアセチルコリンやドーパミン、セロトニンの増加も報告されています。それらは認知症、パーキンソン病や欝の改善に有効な可能性があり、実際にそのような例も多く報告されています。このような物質の作用と身体の状態が良くなっていくことでの達成感、やる気の増大などで行動変容が起こります。実際の身体機能の改善より日常生活での行動範囲が増える方が多いのもそのせいと考えられます。

といったところかなぁ。やったことのある人はわかると思うけど筋トレじゃなくてヨガに近いでしょう?ヨガが出来ない人にも出来るし。問題は器材が高価であり(西ドイツ製の医療器械だからなぁ、安全のためには仕方ないですが)、1家に1台というわけにはいかないところだ。でもジムに通うような感じで障害のある方、なくても運動不足の方は利用すると非常に快適に生活がおくれるようになると思います。一時言われたように魔法の機械ではありません。でも確実に、何もしないよりはるかに有益な、素敵なマシンです。しかもちゃんと学術大会が開かれ、データの蓄積が行われている唯一の器材です。

最近新しくできたデイサービスに筋トレと称して機械が置いてあることが多いですが、あれは本当に筋トレでパワーリハではありません。安全かどうかは知らない、というか高齢者に過度の筋トレは本当に危ない。丈夫な奴でも故障することが結構多いのに、と思います。ワチッアウト!まあ他の所のことはいいや。

で、僕は出勤している限りは毎日パワーリハをやり、以前ブログで書いたようにミニトライアスロン参加を目指すと・・・。やっぱり行動変容は起こっている気がします。

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