We are not alone.

昔僕の友人が、「この地球上の空気には今まで亡くなった人の分子がすべて含まれている」と言った。火葬された人の分子は風に混じって循環し、いま吸っているこの空気の中にも含まれている、君のお父さんの身体の一部も、と言った。僕はそれを聞いてちょっと感激したのである。実際どの程度かわかんないよ、でも、本当にごく僅かでも含まれている可能性はあると考える方が科学的じゃないか。

 

で、実際に計算した人がいたのである。

 

国立循環器病センター研究所名誉所長の菅弘之先生である。先生は循環器の領域で数式を駆使して循環生理学において素晴らしい業績をあげられた方である。

 

ひとりの遺体が火葬されると500g前後の遺骨や遺灰を除いてすべての物質が燃焼し大気中に広がる。人体構成物質は分子で見ると65%が水、16%が蛋白、13%が脂肪、5%がミネラル、1%が糖質。それらは酸化分解され水蒸気、炭酸ガスなどになって大気に混ざる。遺体の体重が60kgだとそれらの元素の原子数は一番多い水素が3.5X1027乗、全部合わせると5.7X1027乗になる。地球上の大気の総量は5.3X1021Kg、原子数でいうと合わせて2.2X1045乗。この大気全体の原子数の中に遺体の原子数が均等に混ざると、大気1リットル中に14万個が故人に由来する原子数となる。1回の呼吸で0.5リットルの空気を吸い込むので7万個も含まれていることになる。

 

海水1リットル中に20mlの大気が溶けているが、先ほどの計算をすると200リットル位の浴槽分の海水に故人に由来する原子数は50万個くらい存在し、海水浴をすると遥かに多くの原子が身体をすり抜けていくことになる。

 

人が生きていく上で排泄したり排尿したりして原子は循環し、また取り込まれたりして、いうなれば輪廻転生を繰り返している。僕たちが生きているこの地球上には、今まで人間だけでなく、過去も現在も存在するすべての生物の原子が漂っており、それらみんなと共に僕たちは生きているのである。あぁ、眩暈がする。

 

勇気が出るではないか。We are not aloneなのでござる。

ここからですね。

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