酔郷譚

引越しで夜遅くなり、早く寝ようと思いながらもつい倉橋由美子氏の遺作「酔郷譚」を手に取ると、つい最後まで読んでしまう。短編集だが、最後の2編くらいになると時計を気にしながら「ああ、もういいや」と。

独特だ・・・なんでこんなことが考えられるのだろう。これは酒会社が広報として出している雑誌に連載されたもので、お酒がテーマになっているが、桂子さん、入江氏、九鬼さん、そして慧君とオールスター戦みたいなものである。いずれも他の作品に何度も登場している、彼女の読者であればご存知のグッド・キャラクターばかりだ。

彼女の本を読んだのは「交歓」が最初であった。びっくり!こんな本があったのか。桂子さんが主人公であるが(いわゆる桂子さんシリーズである)、あまりの教養の高さについていけず。しかも上品に艶かしく、今まで僕が読んだことの無い異次元の感覚であった。

それからはよく読んでいるぞー。ともかく微妙にエロチック、イマジネイティブ。高度に教養主義、高貴。基本的に「酔郷譚」もそうだが生と死の世界を平気でいったりきたりしている人たちなのだ。

「酔郷譚」のなかの「黒い雨の夜」では男も女も無くなってしまうぞ。なんなんだこれ、と思うも、想像力にニコニコしてしまう。これがこの本では一番好きだな、今のところ。

酒を飲むよりずっといい気持ちにさせてくれる。みんなにお勧めは出来ないが、好きな人はマニアになってしまう、そんな人です。貴重だ。お亡くなりになられて本当に残念。もっと老年になられるともっともっと凄みのある世界を表現されたのではないだろうか。

 この絵のイメージね

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