昨年末、城東区医師会の会長も務められた松岡先生がお亡くなりになった。先生は電子カルテを始め医療におけるIT化で日本の先頭を走っておられた方である。お元気だった頃先生を見るたび、人間70を超えてもあんなに好奇心が旺盛で新しいことに取り組めるのだなぁと明るい気持ちになった。前向きである。療養中に抗癌剤で少なくなった髪の毛を3つに括り、オバQの扮装でニコニコして写真におさまっておられるのを見ると胸が詰まった。心よりご冥福をお祈りします。
松岡先生は自分が癌であることを突如メーリングリストに告白された。その後先生は自分の治療とその効果を計時的に報告されたのだが、通常の、と言っても粒子線等を含む最新の現代医学の治療と共に代替医療も次々と試みられ、それを読む僕は大いに啓発されたのである。
先生が紹介された1つにサイモントン療法がある。代替療法の一つの大きな考え方である気の持ち方、精神状態と病気との関係性に注目した療法で、単純に言えばイメージ療法ということになるのかな。癌細胞とそれを攻撃している白血球のイメージを描くことで実際に腫瘍縮小効果が認められるというものである。ご冗談を・・・とつぶやきたくなるが実のところ全く否定する気持ちは無い。日本古来の気の療法で同じようなテクニックは多く用いられている。また鬱患者の癌や心血管系の病気における死亡率が普通の人と比較して大なることは多くの研究で立証されている。最近では笑うことで免疫系が賦活され癌患者の余命が延びたという報道は知っておられる方も多いだろう。病は気から。多くの医者はそう感じている。
プラシーボ、プラセボと言うほうが多いか、偽薬のことです。薬が本当に効くか評価するとき、全く薬効は無いが同一形状のプラセボを内服したグループと本物の薬グループと比較する(内容は薬を渡した人も内服した人も知らない)。ホラ、プラセボ群と比較して有意に効果が認められました!効果あり!と薬会社の人は言うのだが、プラセボ群でも何パーセントかは効果が認められる。これはどうよ。臨床の場でも眠れない眠れないと嘆く薬依存の人に、これはとてもよく効くからと言って偽薬を渡すと「効いたー、ぐっすり眠れました!」と晴れ晴れとした顔をして来たりする事もある(そうだ、やったことないけど)。びっくり。プラセボ効果という。
身体の状態は心に影響を与えるが、その逆も当然あり。もうこれは自明のこととしよう。これに付け加えるに大事なのは頭で理屈で納得させようとしても上手く行かない点だと思う。本当に信じる、心で信じる、そして理屈で無く無心で身体に任せることが肝要なんだと思う。これが難しいから上手くいかないことが多いんじゃないかな。
身体には頭でコントロールできない無意識な部分がある。その無意識は身体を健全な方向に向かうようセットされている。風邪を引くと熱が出るが、それは免疫系を働かせるために必要な現象で、解熱剤を使うと治癒が遅れることは証明されている。食欲がなくなるのも免疫や他のシステムにエネルギーを使うため、状況においてそれほど大事でない消化器系での消費を抑えるためだ。横になりたいのはそれで身体を休めるように防御反応が働くからだ。身体は自分で治そうとしている。身体を信じて任せること。それを上手くできたら薬は今より必要じゃなくなる。
実は最近ゴルフをやっていて、かなり好きなんです。いや、芝を痛めつけているというレベルですけど。で、パットが本当に上手くいかなかったのだが、アメリカのインナーゴルフという本を読んでパットに目覚めました。単純に言うと、ゴタゴタ考えないで身体にまかせてさっさと打ちましょうというもんだ。身体を信じなさい、目をつぶって打ってもいいよという感じです。パッと見て、後はもうホールを見ないで身体にまかせて打つ。チラッと見るとアラ不思議、ボールは穴の中に・・・なわけないが、それでも以前と比べると格段に寄ってます。なんか怖いですけど、慣れるとこうじゃなきゃいかんと思えてきます。そういう目でいろいろ調べてみると、この身体に任せるというのはいろんな方面で極意となっているんですね。洋の東西を問わず。考えすぎると身体が硬くなる。これはろくな事がありません。
理屈じゃなく感情。しかも前向きな明るい気持ちで信じる。そして身体にお任せ。極意だと思うんですけど、どうですか?