月別アーカイブ: 2007年8月

無事これ名馬

 後1時間足らずで8月も終わり。今年も夏が終わってしまった。毎月最終日はレセプトという保険請求のための用紙をその月分打ち出すためスタッフは遅くまで残る。僕は少しお付き合いして「お先にー」と声をだして外に出た。夜の空気はもう秋っぽい。

 どうも風邪を引いたようだ。夕方からやたら眠く、関節が痛く、もともと無い覇気がほとんどゼロに近い。他に症状は無いが「なんか変だな」と考えて、どうもこれは風邪らしいと結論が出た。免疫機構が働いている時は眠くなる。少し寒気もする。今日は早く寝よう。

 今まで働き出して25年以上、病欠はゼロだ。開業してから10年になるがアキレス腱の手術をした時も翌日から外来をした。開業医は自転車操業だ。自分が倒れたらほとんどの業務が停止する。そう思うと自分の健康を守るためにもっと慎重になってもいいはずだと思う。でもそうは言ってもねー、自分を律することに苛立ちを覚える日もあるし。

 無事これ名馬。能力よりもまず健康。泥臭い名馬になるのが僕の道と考えもう寝ます。

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やれやれ

クラフト・エヴィング商會と三上氏

 僕はほとんどの場合本を読まないと寝ない。眠れないことはないが、まあ習慣ですね。心が波立たない、積極的に癒してくれる本が寝る前には適しています。時々読むのがクラフト・エヴィング商會の本です。これは製作者のユニットの名前。ご夫婦です。本の装丁でも有名。ちょっと生真面目で清潔でクラシカルな、大人のファンタジーを出版し続けているユニットです。

 初めて読んだのは「じつは、わたくしこういうものです」。いろいろな商売をしている方が写真入りで出てきてちょっとしたエピソードを話します。初めは実在の人かと思っていたのですが、だんだん商売がエキセントリックになってくる。白いシャツしか作らない仕立て屋なんかはありそうですが、思い出を保管する倉庫番とか月を見せる商売(水盤に水を満たして登場し、覗き込むと月が写っている)とかになってくるとこれはファンタジーだったのかと気がつく。登場人物も役者でなく他の本物の商売をしている人なので(末尾でちゃんと紹介される)リアリティがある。

 この前の休みは「フィンガーボウルの話の続き」を読んだ。これはビートルズのホワイトアルバムがモチーフになっていて、ジャケットに通し番号が打たれているのはマニアなら知っていますが、そこから話が展開していく。いいです。

 であるCDを聴いていたとき、これはクラフト・エヴィング商會の本のBGMにぴったりだなと思いました。ゴンザレス三上氏の「Green shadow, white door」です。Gontitiのリードギターで元ドイツ銀行員。生真面目でシャイでユーモアがあって世俗から離れている。ぴったりだ。

 本でも音楽でもこういった作品はどんなに引越しをしても何時までも棚に残っていて、たまに手に取ると何時会っても心優しい友人のように大切にしたくなるのです。

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見た感じも似ている

決算書

 僕が在宅診療で診ているおばあさんには2人の息子(と言っても70代で仕事も引退されている)がいて、交互に僕の診察の時についてくださる。この2人がかっこいいのだ。今日は珍しく2人ともおられたのだが、顔がなんというか語っている。昔は結構悪いことやってましたよねーと言いたくなる、苦みばしった、ちょっとヤクザも入っているが愛嬌もあるという、いかした顔つきだ。ランニングにステテコという古典的夏のスタイルの二人と、朝青龍は本当に病気かという話をしてプラプラと自転車で帰る。まあ結論は皆さんの思っているのと同じです。

 昨日は僕が嘱託医をしている社会福祉法人の理事長Yさんが用事で来られる。おそらくこの方も70代で、眼光の鋭い元銀行マンである。この方も顔つきが決まっている。「コムスンの福祉はトロール漁業で、いっぱい魚はとれるがせいぜい缶詰にしかならない。われわれは1本釣りでいかなくてはならないが採れる魚はこの方が高級なのである」と、言う話もしぶい。

 40を越えると人間は自分の顔に責任を持たなくてはならないとリンカーンは言ったが、さすがに70にもなると顔自体が決算書である。歴史が全部出る。で、さきのステテコの2人と、トロールの理事長はどちらも大変魅力のある顔つきをされているのだがちょっと違う点がある。理事長は眼に好奇心があるのだ。2人は完全に顔が出来上がっているが、理事長はまだ少し変わりそうな気がする。

 私なんざ全く顔が出来ていない気がするが、出来上がるよりも眼に好奇心を残している方が難しい。仕事で現役かどうかではないだろう。心が柔軟かどうかじゃないかな。間単に決算を出してはいけないのだ。

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これが似合うってのも捨てがたい

ディババ選手

 土曜の朝は車の流れがスムーズで、ドア・トゥー・ドアで30分で着いたりする。いい調子で今朝も走っていたら法円坂を下りた辺りで不穏な空気が…。警官がいっぱい出ていて道路封鎖をしていた。???なんと世界陸上のマラソンコースだったのである。いたるところ通行止めでいつもなら10分のところ30分かかる。

 帰りにリーガ・ロイヤルホテルであった在宅医療・看護の勉強会に出席する。その前に医師会の会もあって遅れ気味で焦っていたところにまたまた警官が・・・。後5分でつくところ30分かかる。どなたかかなり高貴な方が通行されるようで突然の道路封鎖。プライミニスター・安倍ちゃん?エンペラー?陸上がらみであろうが物々しい警戒であった。

 おお、世界陸上のせいでトータル1時間は損したぜ!こうなれば最後まで陸上でとTV中継を見る。女子1万メートル、優勝したエチオピアのディババ選手、身体つきもフォームもお顔も大変美しいですね。惚れました。鍛えたアスリートは本当に同じ人間とは思えん。あの美しさは苦しいトレーニングとか自己抑制とか、禁欲的な因子から醸し出される、本当に数少ない人間にしか達成されないものだから美しいと感じるんでしょうね。本当に1mmでも(精神的にも肉体的にも、実際の距離も)近づきたいものだと思います。

 P.S. 福士選手、明るいのはいいけどもう少し悔しがってくれよー。

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ビューティフル!

最終兵器

 私はこれで会社やめました(小指を立てる)・・・なんかこういうの昔あったな。別に指を立てる必要はないが、私はビールやめました、とこのブログでも書いていた。30年近く全くアルコールのない日というのは数日しかなかった私が、ここ1年はほとんど飲まなかったのである。アルコールのない日々というのは実は結構すがすがしい。飲んでる時は無い生活なんか考えられないと思っていたが、それは単なる思い込みであったのである。

 しかしお盆休みで飲んだ、飲んだ。まあそういう日々であったということだが、こういうのは癖になる。しばらく終わってからも飲んでいたのだが、きたねー。腹回りがてきめんにプヨプヨしてくるのである。アルコールと肥満、特に腹回りは密接に関係がある。

 嗜好品というのは実は結構身体に悪い。タバコの害は知られたことだが、スイーツとか、ともかく本来生存に関係のないものは摂取することにより身体機能が向上することはまずない。無駄な分だけ無駄なものがつく。アルコールは昔から適量であれば寿命が延びるとか援護が多いが、それでもわずかずつ脳細胞が傷害されるのは確かなことだ。無駄な嗜好品こそ人生を彩る、人間が人間である悦びを証明するようなものではあるのだが。

 まあともかく昨日より再び禁酒生活に入った。嗜好品に匹敵する魅力あるものを見つければいいのである。それは何か?好きなことに没頭すること、身体を動かすこと、ここら辺が最終兵器じゃないかと僕は思っているのですが。

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そんなことないっす。

 

ピンチとチャンス

 高校野球はあんまり興味がない。そもそもあまり野球に興味がなくて、大学病院時代から僕の患者さんで、今でも通院されている元阪神タイガースのピッチャーUさん(江夏投手の時代に阪神の看板サイドスローピッチャーだった。完全試合を長嶋選手に阻止される)は、僕があんまりチケットをねだったりしないので、「先生、野球嫌いなんですか?」と訊いてきたくらいである。

 高校野球の思い出と言えば、昔甲子園準決勝の日に芦屋の浜を散歩していたら(なぜかは不明)、高校球児が10人ほどユニホームで砂浜にたむろしていて「あー、負けてもうたなー、これからどうする?」と楽しそうに談笑しているのに遭遇したことがあって(準決勝で負けたチームでした)、あんまり深刻そうじゃなくていいなと思った記憶があります。
 
 が、しかし基本的に高校野球でどこが優勝しようがどうでもいいのである。だけど佐賀北高校の優勝シーンはなかなか劇的だったのでスポーツニュースを何度か見た。その中、ある番組が佐賀北高校野球部の部室を取材していて、窓に掲示してある文章を紹介していた(誰が書いたかは不明)。

 「神様は我々にピンチだけを与えられることはない。ピンチの裏側には必ずチャンスを潜ませてくださるのだ。ピンチだけを見て萎縮しているものにはそれは分からない。誠実に練習を重ね、臆せずじっと見るものだけにチャンスがあることが分かるのだ。」

 正確ではないが、大体こんな内容だった。うーむ。ぼんやりと見ていた野球に興味のないおっさんの心にもそれは響いてきたのである。世の中で総てに当てはまる原則というのはそんなに無いが(実力のある人ほど謙虚、というのはその一つ)、これもそのプリンシプルの一つだな。すぐ忘れそうになるが。

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人生にこれほど気持ちのいい瞬間ってあんまり無いでしょうね

 

バック・トゥー・ライフ

 Ooooo!!ウンギャー!今日から仕事始めです。朝7時半に診療所についてメールチェックをし、なんのかんの打ちあわせをしてから外来へ。全く昨日も外来をやってたかのような、いつもと同じBusiness goes on as usualな感じで終わり、往診へ。ぷらぷらと抜けるような青空の下、自転車をこいで移動していたのですが1000Lの空気の中、10ccほど秋が混じっているのを俺は感じたぞ。

 昼飯を食ってその後新しいプロジェクトの来客があり、その後打ち合わせをして3時半、午後の外来へ。予約は多くなかったのだが当日来られた方が多くフルに詰まって7時半に終了。その後紹介状やお礼の手紙、申込書等を書いて8時半に車に乗る。34℃、まじかよー。オープンで走るが完全に熱気のみ。

 ベン・シドランのI lead lifeを久しぶりに聴いた。前の回にコメントを書いてくれたalfista君と何年か前にブルーノートに聴きに行った。どういうわけかベン・シドランは旅行バッグを持ってステージに登場。休憩の時バーに現れた彼にサインをもらいに行った時、その訳を訊くと「だって盗まれると困るだろう」。僕がへんな顔をしていたのだろう、「ここはそんなとこじゃないと思っているけどね」と少し恥ずかしそうな顔をして答えてくれた。ツアーで盗まれたことがあったんだろうなと思ったが、まあなかなか個性的な人ではある。そんなことを思い出した。

 好きな音楽を聴くといつもの日常に戻っていく。慣れた世界はこれはこれでよろしい。まだまだ余力あり。いつまでもつか?

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彼です。いい人です。

アディオス!

 終戦記念日である。終戦ね・・・自分の仕事に当てはめて考えれば今年前期の戦いの終わりといえよう。

 パワーリハビリテーション大阪支部長になり事務局も当院になったことでより深くパワーリハにかかわることになったことや、抗加齢医学会で多くの先生方と知り合えアンチ・エイジング・クリニックの基礎ができたこと、またパワーリハとアンチエイジングの融合路線がはっきりしてきたことなど、クリニックの将来が明確になってきたことは、後から考えれば今年はマイル・ストーンだったと思えるくらい大きな時期となる可能性があるな。単純に言うと予防医学領域の拡大である。そして介護は「治る介護」(すべてじゃないけど)。

 しかし経営的には敗戦。昨今の医療状況の厳しさから、新しい患者さんが増えているのにもかかわらず増収には結びつかないという信じられない状況があり、介護はコムスンの事件が語るごとく、まともに丁寧にやっていると運営できないくらいの状況になっている。医療、介護とも国が保険点数を含めすべてを決めるのであり、その結果としてシステムクラッシュが起こりかけている。公は期待できず自分でやっていくしかないが、うーん、きびしい。もちろんシステムのせいばかりじゃない。努力すべき点も多い。後期はこれをいかに改善し患者さん、利用者さん、スタッフに還元できるかである。スタッフの諸君、危機感を持ち自分は何ができるか頭を使って動けよ!ある朝出勤すると全部シャッターが下りていて「ばいばい」と僕が手を振っているビラが張ってあるかもしれないぞ。

 とりあえず後期に備えお休みをいただき作戦を練ることにする。ブログもしばらくお休みです。では皆さん、アディオス!また会う日まで。

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楽しめるうちに夏を楽しみたまえ、と誰かが言う

イカ焼きと青空

 大変暑い。世間はお盆であるが僕の診療所は24時間365日営業であるためせっせと働いている・・・というのは嘘でー、少し休みをずらしたため開けているのである。といっても介護施設、法人本部の諸君は交代で休みを取っているためずぅーとオープンするが。外来のみあと2日で休みに入る。

 往診に自転車で出かける。空が青く雲が白く、そして風が熱気を帯びている。昔知り合いの年配の女性が「この夏の日差しを楽しんで受け止められるのは後何年かなと思うわ。あなたはそんなこと考えてもみないでしょう」と言われたことをなんとなく思い出す。いや、もうすでに受け止められないです。暑いっす。

 街はゴーストタウンである。ぷらぷら自転車をこぎながら僕は本来こんな気楽な形で仕事をするのが希望だったのかなと思う。今でもどこかの島でドクター・コトーよろしく働くのは大いに気が動く。が、すぐ退屈してしまうかもしれんとも思う。いまだ自分がわからん。

 おお!「シスター」が開いているではないか!ここは近所のイカ焼きの名店である。どう見ても昭和のまま、というか終戦の頃のまま時間が止まったような店だがイカ焼きはでっかく(直径30cm)もちもちしてうまい。奥さんが患者さんだったのだが亡くなられ、店は閉まったままだったので心配してたのだ。

 おっちゃんと息子さん(といっても僕と同じくらいの年)は元気だった。顛末をいろいろお話してくださり、テイクアウトにお茶もおまけにつけてくれた。今日の昼は久しぶりにイカ焼きである。しかしどう見ても時間が完全に止まってるな、ここは。今日という日自体がなんとなく時間が静止しているようである。お盆の特性か。過去、昔の人が甦る。後少しでまた慌しく時間がすっ飛んでいく日々になる、といってもしばらくの間、僕はそんな時間とはおさらばだけどね。いや、修行の旅に。つらいです・・・

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畳んでいるのででっかさがでてないなぁ

Decency

 当法人のモットーはDecencyであります。いったいこれはなんじゃい?と訊かれることがあります。上品で礼儀正しいというのが訳として書かれていますが、これは人間としてでもあり、また医療介護に携わる人間として必要な資質と僕は思っています。でも上品で礼儀正しいという訳だけでは何か少し足りないなー。表面的な礼儀正しさというか、慇懃無礼みたいな感じもするし、なんかもう一歩。

 どんな苦境にあっても他人に対してDecencyであることは簡単には出来ません。その種の強さが必要。またどんな状態の、どんな関係の人間に対しても他人を認めている、尊重しているというのが根底にあります。内田樹先生は他人との関係を築くのにDecencyを持っている人間が一番強い、Decentな個体は生き延びる個体である、これの機微はわかる人にはわかるし、わからない人にはわからない、と書いています。人間は社会的動物であり、社会的関係を維持するのに最も大切なものという風に解釈しています。

 他人にも自分にも礼儀正しい、つまり尊重している、付き合い方が乱暴でなく丁寧である、我儘で自己本位でない、といったところかな。と考えていたのですが、ある雑誌を読んでいて宮崎哲弥氏のコラムにDecencyが出てきたのでおっ!っと。

 ・・・最近「品格」がよく出てくるが、この「品格」って英語ではどの語が適当だろうねという話に藤原帰一氏(国際政治学者です)となって、「大方Decency辺りじゃないの」みたいなやり取りをしていたら・・・という話です。「品格」。
 おお、「品格」か!

 「国家の品格」「女性の品格」「男の品格」「ハケンの品格」ね。「クリニックの品格」「デイケア、デイサービスの品格」。あまり考えないですね。でもみんなある程度無意識で意識しているんじゃないでしょうか。品格ある施設を目指す。表面的な礼儀ではなく中身のある品格を。頭を使って考えよう。

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Dでいこう!