音楽療法というのがある。音楽を聴いたり演奏したりすることで起こる人間の生理的な変化を利用して持っている能力を引き出したり疾病の改善を試みる代替療法ということになるのかな。当法人のデイサービスでも音楽療法士の先生に来ていただき、その日はとても参加希望者が多くなる。みんな音楽が好きなのね。
認知機能が落ちると音楽の構成要素である和音が引き起こす情動の変化が起こりにくくなるというのを以前第18回抗加齢医学会総会で発表した。認知症の方は早期から嗅覚が落ちるというのは報告されているが、同じように感覚的なトラブルが起きてくる。音楽療法に反応されているのは音楽のメロディックな部分やリズムが大きいのかなと思う。
僕は介護施設をはじめて安定するまでの2年間くらい結構苦労して、仕事に行くのが嫌で嫌でたまらない時が度々あった。そんな時、車に乗ると自分を勇気づけるために大音量で好きな曲、元気の出る音楽をかけた。その時の経験から、①比較的元気な時は洋物ロックがいい、新しいのがいけるほど元気度が高い、②落ち込んでいるときは和物、J-POPが入りやすい。ユーミンとか切ないのがしみるときはかなりやばい、③JAZZが聴けるときは絶好調に近い、という公式ができ、自分のコンディションを判断できるのである。
絶好調時のバックグラウンドミュージック、JAZZであるが、とろけそうに甘いバラードよりわけのわからん前衛ジャズが昔から割と気に入っていた。セシルテイラーとかドンチェリーとかも聴きに行ったりしてたけど本当に好きだったのかわからん。なんとなく雰囲気が好きという感じだったのかな。ところが最近、久しぶりに聞いたアンソニーブラクストンとかオーネットコールマンとかがズズーーンと入ってきたのである。心の被膜をスッと針が突き抜けて簡単に柔らかい内部に達した。・・・・すげぇソウルフルじゃん!!この時は実は割と心の不安定な時で(理由は秘密)、本当に偶然手近にあったCDをかけたんだけど・・・効いたね。でヨレヨレの時は前衛ジャズと。
でそういう日が続いてかなり心の中に重いものが、意識する、しないにかかわらず溜まってきているとする。その時は突然荒療治をしたくなる。翌日が休みの時にCDでもユーチューブでもともかく好きな音楽をかけまくりアルコールを数種飲みまくる。好きな歌を思い切りポーズを付け歌う。踊る。一人で騒いで泥酔して寝る。発作である。
翌日はスッキリするわけがない。後悔のみ。馬鹿だなぁと思い、でもこれで底を打ったという感じでじんわりと立ち直るのである。 ま、あんまりお勧めはしないよ。