月別アーカイブ: 2006年6月

肥満と報酬

 昨日は仕事で仕上げるものがあり就寝夜中の2時。きついです。木曜は基本的に休養日だが雑事が多く、ボーとした頭のまま移動。

 アキレス腱の手術後いまだに足が痛く歩き方が自然でない。重心の移動とか、キックを入れなきゃなとか、考えながら歩く。鍼灸、パワリハ、自己流のヨガ(らしきもの。DVDを見てする)のおかげで最近著しく良くなっているが、こいつらは結構時間がかかる。簡単で効果のあるのはスクワットというのを最近発見した。数分やるだけでかなり違う。

 しかし!それでも毎日やらないんだなー。なんでだ。何かと理屈をつけて、楽になるのが分かっているのにもかかわらず出来ない。それだけ痛みも軽くなっているということだけど、能動的な行動を続けることはいかに難しいか、人間楽に流れるか。

 肥満の解消できない人は多く、結局意志の(医師の、ではない)問題である。意志を保つにはどうするか?意を決して入った英会話スクールが続かないのは結局必要性の問題だ。向上心は持続せず、どうしても必要な場合のみ意志は持続する。やせる必要性がないと意志が続かない。健康に悪いと判っていても、現実に強い痛みがあるとかじゃないもんね。あっても僕を見よ。必ずやせなひじょーにまずい!!やせなあかんのよ!という状況を人為的に作ることが成功の秘訣。減量指導もそれを考えないかんね。

 行動心理学上、脅しはいかん。一時的にしか効果がない。報酬のほうが、いいことがあるよーという方が続く。それは何か?楽しい必要性・・気のある異性を捕まえるとかいうのが一番有効だな、やっぱり。

 僕のスクワットはどうしたら続くか?僕は走るのが好きだ。誰かホノルルマラソンに招待してくれ!

 

邪気のないものは疲れない

 今日はスケジュールタイトだった。

 午前の診察が終わってから往診、紹介状書きですでに2時。近くの嘱託医をしている社会福祉法人へ障害者の方々の検診にヒーヒー言いながら行く。昼飯は診察中におにぎり3個。クー、泣ける。こいつが週に1,2回は登場する。
 
 神様、なぜ老いさらばえた私がこんなこま鼠の様にちょこまか動かなくてはならないのですか?それはお前が悪い。そんなスケジュールを組むからだ。わかってるけどしゃーないのでございます…うだうだと後悔を繰り返しブルーになってくる。検診後すぐ午後の診察に突入すると考えると少し意識が遠くなった。
 
 情けねーとあきれることなかれ。外来は非常に神経を消耗する。病院勤務の医者が最も嫌がるのが外来で、開業の時は毎日外来がほんとにできるのか誰もが危惧する。

 こちらで選ぶことのできない多くの問題を、限られた時間内で、ある程度満足できる結果を示して、友好的に、トラブルを持ち不安げな患者さんに帰っていただかなくてはならない。

 しかし!検診しているうちにいい気分になってきた。

 知的障害を持つ多くの方には変な邪念がない。ストレイト。外来で、愛されたい欲求不満を肉体的な問題にすりかえて延々と愚痴る患者さんを診ているより、はるかに心安らかに働ける。なんとなく楽しくなってきて予定より早く終了した。邪気のないものは活力を与えてくれる。疲れない。早く帰ってきてピザまで食うことができたのであった。

 グッド!ありがとさんね。

 他人は自分を映す鏡である。彼らが素直で邪気なく生きていると、こちらもそんな気分になる。僕もそうならなくっちゃね。で、外来であんなに屈折した人が多いって事は、ひょっとして僕って・・・

禁煙近縁

タバコを止めたのは二十歳くらいのときだ。大学のクラブが競技スキー部で、ほんのちょっと長距離走が速かったからノルディックという走るスキーをやることになった。はからずも。荻原健二が出てから日本でも知られるようになったがそのころは全くマイナーなスポーツで、大会で部全体として得点を稼ぐためには水物のアルペン(滑降や回転など上から下に滑るやつ。実力があっても転んだりするから得点が読めない)以外にある程度実力どおりの結果が出るノルディックを鍛えるほうがかたいので、しんどいのはいやだーと言うのを無理やりやらされた訳です。箸にも棒にもかからない時期が続いて、これではいかんと一念発起。いい成績が出るようになってくると面白くなってきてもっと練習しよう(基礎は長距離の走りこみ)というわけで、タバコを吸ってると走れないから完全に止めたというわけです。スポーツ選手が喫煙なんて今では話にならないですが、その頃はそれほどシビアじゃなかったです。以後時々飲み会で吸ったりすることもあったのですが、それで終わって再び続くことはなかった。

ニコチンパッチが6月1日から保険適応になったと報道され、ここ2週間程で10人以上の患者さんがニコチンパッチを希望された。「はいはい、まいどありー♪」と言いたいとこなんですがそう簡単には入らないのです。保険で手に入るのは限られた施設、限られた患者さんなのです。知らなかったでしょー?そういう都合の悪いことはあまり報道されず、医療機関に説明させて「何だよー」と言われるわけです。なんか、ほんといつもそうなんですけど。施設基準というのがあってそれを満たしていることを(悪名高い)社会保険事務局に届け出ていなければならない。敷地内が禁煙だとか禁煙治療に係る専任の看護師、準看護師を1名以上配置することとかいろいろあるのですが、呼気1酸化炭素濃度測定器を備えていることというのがあって、こいつが10万円以上するのだ。呼気1酸化炭素濃度を測定すると、その人の喫煙数がほぼ正確に推定できる。

使用できる人もスクリーニングテストでニコチン依存症と診断される必要があり、ブリンクマン指数(1日の喫煙数X喫煙年数)が200以上であることなどハードルがある。「ニコチンパッチ、保険でもらったぜー、すっげー、えらいぜ俺!」と大威張りしたくなりますね。ブリンクマン指数は400以上で肺がんが発生しやすくなり,600以上は高度危険群。1200以上で喉頭がんの危険性が極めて高く、ブリンクマン指数が400になる前に禁煙することが望ましい。今計算した?

「禁煙なんて簡単だ!俺は何度もやっている!」というのはマークトウェインでしたっけ。ニコチンパッチのハードルはここでも。もし失敗したとして、また一からやり直しーというのはあると思うのですが、1回目の開始日より換算して1年後でなければリスタートはできません。

なんていろいろ書きましたが、でも禁煙は実行すべきです。禁煙に手遅れはなく、全く元のようにはならないまでもかなりのところまで取り返しがきく。止めて12時間以内には血中の1酸化炭素濃度が下がり始め、8ヶ月以内には肺は以前よりきれいになり、5年後には動脈の老化度が喫煙しない人とほぼ同等まで回復する可能性がある。1日1箱タバコを吸う人は実年齢より8歳老化しているといわれるが、禁煙により7年は取り返せる。

8週間のニコチンパッチ。保険診療で診察代も入れて8〜9000円位、自費でも20000円位です。タバコ代を考えると、そしてこれからの人生を考えると超お買い得では?ご存知とは思いますが明らかになっているタバコの害を列挙。著しく動脈硬化を促進(心筋梗塞、脳卒中にとてもなりやすい)、肺癌、喉頭癌、腎臓癌、膀胱癌のリスクを増やす。乳癌も可能性あり。慢性閉塞性肺疾患(COPDというやつでお年寄りが息苦しそうにしているのは心臓よりこっちが多い。これからの著しい増加が懸念されている。)免疫力の低下(風邪も引きやすい)等など。みんな自分だけは関係ないと思ってるんでしょう?甘っー。これらから逃れられる確率はワールドカップドイツ大会における日本代表の決勝トーナメント進出の可能性くらいです、知りませんけど。

それでも吸ってるチャレンジャー達よ!安心してね。僕の診療所でも7月から保険がきくようになります(多分)。来たれ!勇気ある自殺志願者たち!呼気1酸化炭素濃度測定器をかまえて待ってるよ!