7年ほど前にいわゆる草食系男子の男性ホルモン(テストステロン)は皆さんの想像通りほんとに低い!という発表を抗加齢医学会でして、医学雑誌 (日本医事新報 (4659), 32-36, 2013-08-1) にも掲載され一部でちょっとうけたことがある。とても大学等では出来ないスタディで、突っ込みどころも満載とはいえそれなりに意味のある研究だったと思うけど、もう過去の話と忘れていた。
今年の初夏にNHKスペシャルのディレクターKさんから連絡があり、今度ジェンダーについて特集をするのだが草食系の話を聞かせてほしいと連絡があった。その後何回かお会いして話を煮詰めていった。
世界的に(特に文明国で)若年、壮年を問わず男性ホルモンの値は減少しつつある。理由ははっきりしない。環境ホルモン(女性化を起こす)や妊娠期のダイエットの影響など諸説があるが、個人的に有力だと思うのは進化人類学からみて文明が進むにつれて男性ホルモンの必要性が少なくなるからではないかという説である。
男性ホルモンは皮下脂肪を減らし筋肉骨格を頑強にし、 性格的には攻撃型となる。つまり戦士型で、野生的世界で生きのびていく場合には有用なホルモンである。文明が発達し他人との協調性が重要となる世界では有用性が低下する。結婚し子供ができると男性のホルモンは明らかに減少するのは一つのわかりやすい例だ。
世界的にみて日本人男性のテストステロンは諸外国、特にアフリカや南米の男性と比べて低値である。これも和をもって尊しとなす農耕民族ゆえ当然かと。草食系男子が日本独自というのもしかり。実は最近欧米でも草食系男子が増加傾向という記事をどこかで読んだ気がするがこれは確かでない。しかしあり得ることだ。
NHKスペシャルはジェンダーの多様性、古典的男性女性の区分の希薄化をテーマとし、その例として草食系男子をとりあげたいとのことであった。僕としては男性の草食化は時代の流れでありむしろ進化系であるという趣旨を強調したかったのだが、11月3日に放送された番組では単に男性ホルモン低値の若年男性としての事例報告だけに終わっていて少し残念。
番組では2分ほど映っただけで、半日かけて取材された割にはと拍子抜けではあったが、構成上仕方のないところでしょう。僕としてはすごく丁寧な取材、打ち合わせで、このようにしてNHKスペシャルは作られるのかと興味深かった。BS版、海外版でも放映されるようなので興味のある方は見てください。
クリニックの男性更年期(低テストステロン)外来は継続して新患さんが来られる。悩み多き男性諸君。テストステロンは時代遅れのホルモンかもしれないが、認知機能を保ち長寿となり、やる気を出す重要なもの。時代はあまり必要としないかもしれないが個人的には男性ホルモン爆発!で生きたい。賛同される方は是非ご相談を。