月別アーカイブ: 2012年2月

見かけを若くする

 ニュースをチェックしていると 「65歳以上は高齢者」見直しを という見出しが眼に飛び込んできた。フムフム。外来で患者さんを診ていると、確かに65歳というのは全然若いなぁと思うことが多い。イメージとしての高齢者は75歳以上か。65から75歳というディケイドは高齢ビギナーというか見習いという感じです。まだまだ本番ではありません。医学的な区分の変更かと思ってたら、実はニュースはこう続く・・・

 政府は65歳以上を一律に「高齢者」と位置づける現行の定義の見直しに着手する。5月をめどにまとめる「高齢社会対策大綱」で、高齢者も可能な限り「支える側」に回る考え方を打ち出す。元気に働くシニアも多く、すべて「弱者」と見なす仕組みでは、現役世代の負担増大に歯止めがかからないためだ・・・

 なんじゃらほい。税金の話である。ともかく何とかしてお金を取ろうという話だなぁ。いや、気持ちはわかるよ。人口構成が変わるから当然考えていかなくてはならない問題ではあろう。それがムッとくるのは、もうちょっと何とかせいよという部分を知らぬふりをしてこう持ってくるからなんだが。

 この話は置いといて実年齢の話だが、実際高齢者の身体能力に関しては、昭和の頃と比べ10年は若返っているとデータで示されている。

 また見かけで若く見える人も増えているが、若く見える人は実際に長寿であることも1卵性双生児を使った(つまり遺伝子構成は同じわけだ)デンマークのスタディで報告されている。70代以上になると双子でも外観の印象が変わってくる。それは40代以降のライフスタイル違いによるところが多い。どちらかがより若く見えるという差も出てくるわけだが、それを判定して7年後調べると、老けて見えた方の死亡率が明らかに高かったのである(British Medical Journal, 2009) 。

 ということは暦の年齢より見かけの年齢の方が実際の年齢というか老化を反映しているということになる。化粧でごまかすのはナシね。見かけの年齢がその人の内臓の年齢、とくに血管の年齢を示しているという印象は多くの医者が感じていることではなかろうか。

 見かけとは何か?皮膚がツヤツヤ、表情が豊か、姿勢がいい、皮下脂肪が少ない、動きが素早い…ここら辺が若い印象だなぁ。と考えると、これらは必ずしも実年齢が若いことが絶対条件でないということが分かる。そういうふうになるには何がポイントか?これは運動量だと思う。日常生活でどれだけ動いているか。人が老いるのは年齢のせいではない。それは動かなくなるからだ、というのは確立したセオリーである。

 若者のように動くこと、10代のライフスタイル、そんなことを意識しているだけで変わっていく可能性がある。「そんなこと出来るわけない…」、そう思った時点で君は老人である。実年齢が80代であろうと「おお、わかった!」と言えればあなたは若者なのである。

 50歳からのポイントとしては週4日有酸素運動(ジョギングより早歩きが安全)、2日筋肉トレーニング(ウエイトは軽くていい)。毎日ストレッチ(関節の柔軟性は一番大事だ)。実行すると間違いなく最低5歳は若返る。実行!

この双子の違いはどこから生じたのでしょう?

 

マインドセット

 糖尿病治療の基本の一つに運動がある。こいつが難しい。薬を飲むこと、食事療法(これもかなり難だけど)は比較的頑張れても、時間を取って運動することをちゃんとできる人は少ない。で多くの方は通勤の時一駅前で降りて歩くとか、出来るだけ車は使わないようにしていますという感じになる。

 それでも十分です、細切れの運動でもやらないよりずっと効果はあることは証明されていますと話すのだが、正直なところほんとに出来てるのかなぁと思うくらい効果の上がっていない人も多い。はっきりやってますと言える人はちゃんとそれなりに効果を出しているのと対照的だ。運動強度の問題かなぁ。

 そこでこういう論文を見つけた。Mind-set matters: exercise and the placebo effect. Psychol Sci 18: 165-171, 2001. ホテルの清掃者を2群に分け、一つのグループには清掃は十分なエクセサイズであり血糖値や血圧にいい影響があると十分教育し常にそれを喚起した。もう一群は同じ労働量ではあるがそのような働き掛けは一切行わなかった。1か月後驚いたことに教育群のみ体重、血圧、血糖値が低下していたのだ!彼らは清掃は運動であり運動量が増えたと意識しており、発表者のハーバード大学ランガー博士は「運動は意識しないと効果が出ないかもしれず、プラセボ効果が運動の意義に大きいのかもしれない」と述べている。これは結構有名な論文らしい。

 筋肉トレーニングの際、漫然とするのではなくこの筋肉を鍛えたいとその場所を意識すると筋肉量の増加が違うとよく言われる。意識の働きかけが微妙に運動の仕方に影響しているのかもしれない。身体を動かすときはこれは運動、エクセサイズである!今鍛えている!と思うことで、単に歩いていても効果が変わると思えばなかなか楽しいではないか。

 生活すべてエクセサイズです。わずかの時間でも面倒くさがらずせっせと身体を動かそう。リモコンは使わず、エレベーターは使わず、風呂で頭を洗う時もイスを使わない。やってるやってる、いいぞ俺、とちゃんと意識しよう。間違いなく半年後は違います。いいね!(と自分に言い聞かす)。

これにのって診察を始めてからはや3年。

P.S.

この前ふくしまカンバッジの話を書きました。おかげさまで100個完売いたしました。カンパに協力いただいた皆様、本当に有難うございました。心より感謝いたします。

 

2月の雨

 一日雨が降り肌寒い。私の中では「2月の雨ニヤリーイコール最悪!」である。雪の方がいいな・・・とはいっても豪雪で苦しんでいる地方もある。勝手なことは言えない。

 厳しい季節であり体調を崩す人、亡くなる方も多い。今日も在宅で診ていた方が一人息を引き取った。90歳も大きく超えられており大往生である。ご家族の方は自宅で看とると決めておられ、呼吸が急に止まった時も冷静に電話をかけてこられた。亡くなられた方のそばに行っても医者のできることはわずかである。死亡確認をし、お悔やみを言い、少し事務的なことをお話しし、ほとんどはご家族のかたのお気持ちを聞くことに専念する。そして静かに御いとまし、車で帰路に就く。

 もう3ケタをこす数くらい人の亡くなる場面に立会ってきたが、その後はいつも同じように厳粛に冷静な気持ちになる。来世とか、死後の世界とか、霊とか、そんなことは僕には全く信じられない。生物学的な死亡は人も動物も同じ、動かなくなり冷たくなり、すべては終わったのだと思う。誰かの心の中には生き続ける、もちろん。でも個体として生きるということは別である。

 ジョン・レノンがGodのなかで「神は人々が苦悩の程度を量るコンセプトなのだ」と歌ったように、僕も霊とは、人がその方や何かに対する愛着や後悔を量るコンセプトなのだと思う。在るのではなくその人が心の(脳の)眼で見てしまう。客観でなく主観なのだ。そして供養というのは残された人がその人のことを思いながら現在を楽しく生きていくことなんじゃないだろうか。それを死者に捧げるのである。

 人は2度死ぬ。1度は生物学的に、2度目は心の中から消えた時。僕が死んだらどうなのかなぁと思う。2度死ねるんでしょうか。

 僕は霊は信じないが、僕が死んだら絶対化けて出てきてやると思う。この面白い世の中からバイバイなんてできるものか。楽しみにしといてね(支離滅裂だなぁ)。

 

今日の空

  

コールド!

 爆発してます。何が?カンバッジ、じゃなかったインフルエンザ。カンバッジはおかげさまで完売しました。サンキュウ!

 ここ2週間ばかりインフルエンザ大爆発で、風邪らしき症状で来る人の7割はインフルエンザ(9割はA型)です。高い熱、関節痛、強度の倦怠感という典型的なやつでなく、何となく微熱が続くとか、ちょっと鼻風邪っぽい、とかいう人に検査するとバンバンA型がでる。お気をつけあそばせ。

 インフルエンザも含むけど、いわゆる風邪について少し勉強(ありふれた風邪についての学術的なペーパーはほとんど無いのだ。大概勝手に治るから)。

①予防法は手洗いに尽きる。感染はいたるところにいる風邪ウイルスが手について、顔を触ることで鼻や目から感染する。人は1時間で約16回顔を触る。ウイルスはプラスチックやステンレスのような硬いツルツルした表面でかなり長く(数日から2週間ほど)生き長らえる。今君の周りはウイルスだらけだよ。

②洗うのは石鹸で十分。殺菌作用はないが手から剥がれやすくなる。しつこいほど擦るほうがいいが傷をつけてはいけない。アルコール消毒もいい。アルコールは風邪で多いライノウイルスより、インフルエンザの方により有効。

③うがいはすでに手遅れだが、塩水でうがいすると浸透圧の関係で扁桃の浮腫が取れて痛みがましになるそうである。高血圧の人はだめね。

④くしゃみや咳をすると、風邪ウイルスはその周り1m内に落ち、その後接触感染となるわけだ。インフルエンザは1mは飛ぶ。飛沫感染ね。

⑤風邪の主たる感染源は「子供」!である。子供のいるところから始まる。

⑥風邪にひきやすい人は確かにいて、遺伝子多型の問題も指摘されているようだ。ある種のウイルスに感染しやすいタイプというわけである。インフルエンザ脳症の発症も遺伝子の関連が指摘されている。

⑦加湿すると鼻粘膜が傷つきにくく、ウイルスにやられにくい。寒い所に住む人はそのため乾燥しないように鼻が高く鼻の穴が下を向いているが、暑いところの住民はあまり問題じゃないので鼻が低く上を向いている(風があたって乾燥しやすいわけだ)という説がある。面白いけど本当かどうかわからない。

 もし僕があなたに向かって「風邪をひきやすいタイプでしょう?」と言ったとしたら、それはあなたの鼻が・・・・