好き嫌いは年を経てもあまり変わらず、むかし好きだった音楽は変わらず好きで、それほど好きでなかったミュージシャンをいい歳になって激愛するようになることはあまりない。ところが僕には10代20代にはあまりピンとこなかったけど今はめっちゃええやん!というロックグループが一つある。
それはビーチボーイズ。
いつ頃からかわからないが、ズンダッダズンダッダというお気楽なイントロのカリフォルニアガールを聴くと思わず笑みがこぼれるようになった。山下達郎の影響?
で、そのラブなビーチボーイズが大阪に来るというではないか!中学からのロック友達であるラブ作君が「お前好きやねんやろ、いこか?」ということでかなり前にチケットを取ってくれていて、昨晩ビルボードに行ってきた。
このセリフからも判るように彼はあまり好きでない、というかあまり聴く機会が無かったというべきであろうか。我々がティーンエイジャーの頃は何というかサーフィン?何それ?という感じだったからなぁ、生活の実感に全然リアルでなかったと云えよう。じゃあ今は実感あるのか?と云われるとそりゃ全然無いわけであるが、今までの経験の中にもろサーフィンじゃなくても、その周辺のサニーな感じというか、海とか可愛い女の子とかいうメローな記憶がそれなりに積み重なっており、彼らのサウンドは若々しいそれら、楽しさを惹起するのである。
ビルボードはめっちゃ満員でした。老若男女、始まる前から期待感が充満していて、彼らがあらわれて1曲目のイントロから30曲近くやった最後までネバー・ア・ダルモーメント。年老いて太ったおっさんになっていても、愛嬌満タンで(マイク・ラブ、ブルース・ジョンソンは阪神タイガースのユニフォームをひっかけて登場!)、できればああいうジジイになりたいと思う。声は若々しく、若いメンバーを入れていてもサウンドはビーチボーイズそのまま。
ラブ作君の感想、「最初から最後まで楽しかったコンサートって、今までポールとストーンズやなと思ってたけどこれも入るな!」というのがすべてを物語る。
村上春樹の若い時のエッセイで、死ぬときは陽のサンサンと降り注ぐ浜辺でビールを飲んでいて急に胸がぐっと苦しくなり、遠ざかる意識の中で遠くビーチボーイズが聴こえるというシチュエーションが望ましいというのがあったけど、同意する。
ゴッドファーザーの、花の咲く野原で孫と遊んでいて、その最中に椅子に座りながら急に眠るように絶命するというのも捨てがたいが、いずれにしろアウトドアだな。そしてBGMはビーチボーイズに決まりです。