月別アーカイブ: 2012年9月

裸足で仕事

この前5本指シューズのことを書いた。仕事場にも履いていくと言ってたんだが、これがだねー、実際にやってみるとすごく快適なのである。ヤバい。もうほかの靴を履くと違和感を感じるようになってきた。

何が違うか?

 

今年オリンピックの前だったかな、NHKでケニアのマラソンランナーの走り方を日本のランナーと比較したドキュメンタリーがあった。普通マラソンの走行では前足は踵着地になる。ところがなんとケニアのランナーはつま先、親指の内側位から前半分を全部使って柔らかく着地していたのだ。この方が膝への負担が少なく蹴りだしも早くなる。

なぜこうなるのか?それは彼らが小さいころから裸足で走っているためだ。

僕たちも裸足でいると踵着地はしない。裸足で走ったことはあまりないが、家で裸足でいると歩き方は明らかに踵着地ではない。靴を履いてウォーキングする時踵着地が推奨されているが、あれが膝を痛めるもとではないだろうか。

手足は脳の一部である。認知症の予防に足指じゃんけんが推奨されているが、足指の動きを妨げないこと、指で踏ん張ることは間違いなく頭にいいに違いない。大体気持ちいいのだ。

で5本指シューズは僕の日常の靴となった。診察室でも履いているが、患者さんはかなり目ざとく反応する。最近は以前のアディダスじゃなくビブラムのやつが気に入っている。アディダスより一層裸足に近い。見かけは悪いが値段は高い。やれやれ。でも生理的に快適なものは間違いなく善だ。

 

スタッフに勧める。「なんならプレゼントしようか?」   

「・・・いいです」と言われるのは傷つくなぁ。

 

まっ、カッコはよくないねー、確かに。

NSTの男

第23回なにわNST倶楽部で発表してきた。

NSTとはなにか?

NST:Nutrition Support Teamのことで、職種の壁を越え、栄養サポートを実施する多職種の集団のこと。栄養サポートとは、基本的医療である栄養管理を症例個々や各疾患治療に応じて適切に実施することである。なにわNST倶楽部は食道楽の会ではなく(そんな感じだ)、大阪市立医療センター、消化器センター部長の西口幸雄先生が中心となって出来たNSTの勉強会である。医療の領域で実は栄養部門は結構なおざりにされてきたのである。医学部での授業時間も少ないし。しかし近年栄養の重要性が見直されてきた。

本来NSTは病院内で実施されるものがほとんどで開業医とは関係が薄いともいえるが、在宅診療をやっていると患者さんの栄養管理は切実な問題で、歩けない患者さんは圧倒的に栄養不良が多いのである。病診連携(病院とクリニックが患者さんのことで連携すること)のこともありNSTとは無関係でおられない。で僕は知り合いのお声掛けもあってどういうわけか世話人となっているのだ、といっても偉そうなことは言えない、たまに参加すると「お久しぶり!」の声がかかる不良世話人なのである。

今回はPEG(経皮的内視鏡的胃瘻造設術)の適応が話題となっており、開業医の立場からお話をしてきた。胃瘻とは経口摂取できない人に腹壁から人工的に食事を入れるカテーテルを装着して栄養を送り込むシステムである。簡単安全で一気に普及したのだが、本来本当に必要か考えなくてはいけない人、たとえば末期の癌だとか重度の認知症だとかの患者さんにも多く増設された時期があり、今その適応が問題となっている。

僕は在宅診療でPEGを装着された認知症の患者さん–かなり高齢ですでに意識もないのだがPEGにより栄養補給が万全なため、ご家族の献身的な介護もあって数年間同じ状態が続いている–を数例あげ、このまま続けることの意味をどう考えるか、問題提起をさせていただいた。批判ではない。

去年NHKで放送された「胃瘻の功罪」という番組以来、胃瘻をすると死ぬこともできないという誤解が広がっており、昨年から胃瘻造設術は日本中でかなり減少した故。適応もなく胃瘻を作ることは問題であるが、それがために本来生きながらえて治癒に向かう可能性のある人さえもご家族が断るという事態も起こっている。日本には今ちゃんとしたアルゴリズムもできて、いい加減な形で胃瘻造設術はおこなわれていないし、途中中止の規定さえも出来つつある。欧米は重度の認知症へのPEGは否定的だが、日本では認知症でも時期を問わず予後がいいというデータもあり、事情がかなり違う。死生観とか宗教も。慎重に考えなくてはならない。

結論として意識のある場合はご本人、ない場合はご家族とどれだけ深い意思疎通ができているかという問題になる。簡単にアルゴリズムで決めるのでなくケースバイケース、テイラーメイドの考え方が必要となるのだ。欧米の受け売りでなく日本独自の考え方で。

いろいろ考えることのできたいい会でした。午後9時過ぎまであったのですが、140人以上の方が参加されていて、特別講演に来られた西美濃厚生病院の西脇伸二先生が「大阪はすごいですねぇ、岐阜では熱心にプロモーションしてもこんなに集まりません」とのこと。

関係者の皆さん、お疲れ様でございました。

 

 

 

裸足の男

靴が好きである。

まったくそういうのに興味がなかった—-これは最近仕入れた言い方で言うと「ファッション・リテラシーが低い」—-僕に靴の楽しさを教えてくれたのは今を去ること30年くらい前、入局してきた後輩のalfista君である。

「かっこいい靴はいてるねー」「今度一緒に買いに行きましょうか」ということで、初めて自分でイタリア物のローファーを買った。すごく気にいっていた。それから靴は結構興味の対象であったのだが、最近は圧倒的にスニーカーなのである。歩きやすい。カッコもいいしね。靴は結構姿勢に影響して、外反母趾はじめ靴で病気を作ったりしていることも思いのほか多いので、とりあえず靴は機能が最優先ではないか、と思っております。

MBTも一時気に入ってよく履いていた。あるコーチングの先生を東京からお呼びした時、会食の席にいた数人が偶然にも全員MBTを履いていたので驚いたことがある。ま、結構普及しているということですね。

で最近のお気に入りはこれです。

地下足袋、じゃなく五本指靴。これはadidas社製ですが、ビブラム社製の五本指の靴の記事がある。走ったことないが歩くには非常に快適な靴です。まさに裸足の感覚。野生の感覚を持つ時間が増えれば増えるほど健康になると僕は思ってますが、ぴったりでござる。

しかし目下のところ愛犬の散歩にしか使用していない。これを日常使用するのは少し工夫がいる・・・ような気がしていたがそうでもないか。寒くなったら五本指の靴下を履けばいいし。もともと診察をバランスボールに乗ってやっているので変人とすでに思われているから今更考えることも無し。いつでも履いてればいいのだ。ああいう人よ、と思われればOKですね。

というわけで連休明けから勤務先での使用が決定!追従者を求む。

 

 

ダークな男

いつ頃からコーヒーを愛飲するようになったのかは定かじゃない。


二十歳ぐらいの時にはコーヒーミルで豆をガリガリ削っていたのは確かなので(十八歳ぐらいのときに初めて行ったヨーロッパで確か自分で購入したのだ。淡い思い出である。あの時知り合った皆さんは今も元気なのであろうか?)、結構古くから大量に飲んでいたことになる。しかも割と早期からブラックであった。


それが自分の身体にどう影響しているか?


これも定かではないが、目下のところコーヒーの健康に与える影響は概ねいい話が多い。つまるところポリフェノールがいいのね、抗酸化ね、ということになるが、コーヒーと並んでポリフェノールが多く、かなり中毒に近い人も多い嗜好品としてチョコレートがある。

そう、チョコレート。あなたの好きな、あれです。

チョコレートも身体にいいよという話があった。


スウェーデン・カロリンスカ研究所のSusanna C. Larsson氏らは,男性のチョコレート消費と脳卒中リスクについて45~79歳のスウェーデン人男性3万7,103人を約10年間追跡。年齢,教育,喫煙,BMI,運動,アスピリン,高血圧,心房細動の既往,心筋梗塞の家族歴,飲酒,食事などを調整後のデータで、消費量が最も多いグループ(中央値62.9g/週)は,最も少ないグループ(中央値0g/週)と比べて脳卒中のリスクが17%低下していたと報告した。さらに欧米の5つの前向き研究のメタ解析を行ったところ,消費量の最も多いカテゴリーは最も少ないカテゴリーより脳卒中リスクが19%低かった。Larsson氏らは,これまでに女性でチョコレート消費が脳卒中のリスクを低下させることを報告しているが,男性でもほぼ同様の結果であった。 なお,1990年代のスウェーデンにおけるチョコレート消費の90%は,カカオ含有量30%程度のミルクチョコレートだった。(Neurology on line edition. 2012, 8.29)


カカオ含有量30%程度というのはロッテガーナチョコくらい。明治ブラックなんてのは44%位。ミルクチョコだったというのが嬉しいな。板チョコは大体1枚65 gくらいなので、毎週これくらいだったら結構食べている人がいるんじゃないだろうか。


こういうのは案外バックにお菓子メーカーがいたりするので要注意だが、チョコレートの積極的摂取を推奨しているわけではなくて(そうとりたい婦女子もいるかもしれないが)、ちょっと甘いものが欲しいときはケーキよりもチョコを食べようというくらいの意識が妥当なところなんじゃないだろうか。そして出来れば砂糖少なめが望ましいだろうなー、当院のJet O嬢のように「それでは意味がありません、甘くなくっちゃ」という意見もあるが。

 

昔見たフランス映画で(中年の不倫恋愛もので、なんと最後は二人ですべてを置き去りにしてバイクで去っていくのだ)いいおっさんが会社帰りにチョコレートショップに寄って自分のためにチョコレートを買って帰るシーンがあった。アルコールじゃなくチョコというのが何とも新鮮でおっしゃれーとその頃思ったのだが、まっ、それも悪くないな。ダークチョコにうるさいおっさんというのは割と自分に合ってそうな気がします。

 

おじさんは何があっても驚かない