月別アーカイブ: 2012年6月

抗加齢=抗介護

抗加齢医学、アンチエイジングって言葉はどうもなー、と思っている。

年を取ることは誰にでもおこることで悪いことじゃない。アンチの姿勢をとらなくてもいいじゃないの、別に。

と感じている人が結構多いせいか、昨今 Well Aging とか Healthy Aging (アンドリュー・ワイル大先生の著作も、当院もこれを使っている)とか、いい感じに健康的に年を取るという本来の意味の言葉をつかう場合が多くなってきた。

が、認知度はまだまだです。


「アンチ・アンチエイジング」というか、抗加齢という言葉には偏見を持つ人もいて、「見かけだけ良くしてどうするの」とか「不自然!」とか、病的な老化を避け(普通に老化すると120歳くらいまで生きられる)健康で楽しく寿命を全うするという理念が誤解されている訳だ。

その結果として長寿で若くと見えるとしたらそれはそれで結構じゃないの、と僕は思っているのだが、こういった偏見をスパッと説明出来るフレーズがないかなーと考えていた。


あった。


「抗加齢は抗介護」  どうでしょう?


出来たらみんな介護は受けたくないと思っておられるのではと思う。自分のことが自分で出来なくなり他人に助けていただかなくては生活出来ない状態。不幸にしてそうならざるを得なくなった方々には本当にお気の毒だと思う。

でも幸運にもそうなっていない我々は、介護をする立場にはなっても受けるようには絶対ならないでいようではないか。強い意志を持って。国の予算の節約にもなるし、とかそういうことじゃなく、自分自身のために。

そのために抗加齢医学は Very,very useful  な医学なのである。一歩進化した予防医学。すべての人が興味を持つべきだと思う。

実際テレビなんかの健康知識は学会なんかでとうの昔に議論が終わって自明なものなんかが「びっくり!」という感じで取り上げられていることが多い。昨年のNHK スペッシャル「寿命は延ばせる」なんてカロリーリストリクションとレスベラトロールの古い話題だし、糖質制限なんかもかなり前に取り上げられていた。メラトニンは当初からスタンダードだったが、実際の医薬品として近いものが保険適応となったり。


すべてはいつか自分が消えてしまう日まで、自立して、楽しく、笑いながら生活を送るための知識なのです。抗加齢は抗介護。どう? わかってもらえる?


うわっ、アメリカっぽい。こういうイメージでも内容の根本は「抗介護」ね。


 

ハッピーピープル・リブ・ロンガー!

 第12回日本抗加齢医学会総会@横浜に行ってきた。その用意でブログも久しく更新できず。ホラーK嬢が2題発表してきました。一般オーラルと、抗加齢指導士向けのシンポジウムと。ほとんどが大学や総合病院が発表している中でなかなか健闘したと言えよう。まぁまぁ評判も良かったみたいだし。

 学会自体は前回と比べかなり面白かった。旬のネタ、旬の先生が多く発表され、7000人以上いる会員数ですが、3500人が参加したというのもその一つの証明じゃなかろうか。また医学会は勿論患者さんを治すためというのがベースにあるのだが、抗加齢医学会は自分のために、という要素が結構あるからじゃないかなという気もする。

 旬(でももう遅いか、一般化しつつある)の一つは「カロリーリストリクション」です。摂取カロリーを3割がた減らすと哺乳類も含め多くの種で本当に寿命が伸びるというのはここ数年のトピックでメカニズムも解明されつつある。今回そのやり方を間歇的断食と比較したりとかいろいろ話題があったらしい(僕は別のシンポジウムに行っていた)。スタッフが聴いていたのだが、

「でもこの中でカロリーリストリクションやってられる方はどれくらいおられますかと司会者が尋ねたら7割くらいが手を挙げたのでびっくりした!」 「ほんとー?みんな痩せてた?」 「・・・それほどでも」 「それってちょっとダイエットしてるだけじゃないの」 「確かに。でも老人性難聴の予防とか、本当にいい効果があるんだなぁ」

 素晴らしい!カロリーリストリクションは!と言いながら中華街に行ってたらふく食ってしまう我々であった。シンポジウム意味なし!聴いていたスタッフが今まとめを作っているから出来たらここでアップしたい。是非皆様実行を。

 特別講演は101歳の日野原重明先生であった。もう後光が差している。僕も外来をしていて100歳以上の方をいままで4,5人拝見しているが、全員車いすで、ご家族が丁寧に介護されている方々であった。日野原先生は30分以上立ったままで、しかも結構動きながらお話しされた。本当にすごい。登場された時はハリウッドスターなみの、スマホカメラ、フラッシュの嵐であった。僕も載せとこう。

 招待講演ではミシガン大学のクリストファー・ピーターソン先生がポジティブサイコロジーについてお話しされた。これも旬の話で、精神がいかに健康に影響を及ぼすかという話題である。フロー状態も非常にいいようである。そしてハッピーな精神状態でいることががいかに大事か。

 前日行われた立錐の余地もない学会全体の懇親会で、ピーターソン先生を招聘された慶應大学眼科の坪田教授(ポジティブが服を着て手術をしているような方)が乾杯の音頭をされた。

 「かんぱーーい!」

 じゃなく、「ハッピーピープル・リブ・(皆さんご一緒に)ロンガーーーー!」だったのであった。

 

 

鍼灸修行

 鍼灸をやったことがあるかな?患者さんに訊くと案外若い人がスポーツ外傷で受けていたりして結構興味を持っている場合が多い。ご年配はみんなOKかと思いきや「こわいわー」と言う人が案外多かったりして。

 10年以上前は僕も、鍼灸って気休めじゃないの、安全なのかな(勤務医時代に中国針で気胸を起こして入院してきた人の主治医になったことがあったりして)と割と信用していなかったのね。

 ところがだなー・・・・・・

 きったない足の写真で恐縮だが、これは僕が自分で自分の足に鍼をうった証拠写真でござる。

 僕は鍼灸の有効性に関して今や何の疑いも持っていない。これは経験上である。間違いなく効く。効かない場合、それは術者の問題と思う。

 科学的な探究もよく行われていて、最近うちの鍼灸院のホラーK先生(可愛い女性なのにホラー映画が好き)の指導医であった明治国際医療大学鍼灸学部の鈴木雅雄准教授(何度かお会いしたがワーカホリック、向上心の強い、まぎれもなく突出した人の持つオーラを持った、けれど可愛い人)が、インパクトファクターの高いArchive Internal Medicineというアメリカの医学雑誌に鍼灸のペーパーを載せて結構話題になった。

 僕は運動した翌日、結構足が痛むときがあるのでホラーK先生によく鍼をうってもらう。下半身がすごく軽くなる。ある日、鍼をうっていただいたことを全く忘れていて、なんか今日は足が楽だな、と思って突然施術していただいたことを思い出したくらいだからプラセボ効果ではない。

 で、自分で好きな時にうてたらいいなと前から思っていたのだ。日本では法律上、鍼灸ができるのは鍼灸師と医者だけだからね。かなり以前、医療に鍼灸を使おうという試みをされている先生方のワークショップに泊まり込みで行った事もあるのだが、自分でうつ踏ん切りはどういうわけかなかなかつかなかった。

 ところが、急に力が抜けてすーと出来てしまった。嬉しい。

 で、今いろいろ工夫してやっている。ツボにうつのは難しいのでトリガーポイントをねらってるけど、うまくいくこともそうでない時もある。練習だなぁ。でもいずれうまくなると思うので希望者は予約しといてね!