月別アーカイブ: 2008年2月

テレビドクター

 読売テレビ、「テレビドクター」の収録に行って来た。午前診を怒涛の勢いで済ませ、最近稀な春のような日差しの中、4年に1度の珍しい日だし、まあうまくいくんじゃないのなどと気楽に考えながら。

 結果から言うと、とても楽しかったです。親身になってやっていただいた吉田ディレクター、優しい司会の土居さん、頼りになる御大川畑さんはじめスタッフの皆さんの心遣いのおかげで、ど素人でも気持ちよく話すことが出来ました。どうも有り難うございます。これでパワーリハビリテーションを理解される方が増えるなら本当に望外の喜びであります。

 でもねー、楽しくなかったことと言えば・・・最後にモニターでチェックをしたのですが、しかし自分の姿というのはなんというかうんざりするもんですね。「誰だ、この訳のわからんおっさんは?・・・俺か・・・(ガクッ!)」という感じです。写真でもいやなのに、動いていてしかも自分じゃないような声で喋っている!

 もう一つのショック。仲のいい美容師さんがテレビに出るんだったらこれでいきましょうと頭を短く、ツンツンに立ててくれた。気に入ってたのでそれで出かけたのですが、リハーサルが終わっていざ本番というとき、メイクの女性がさっとやって来て、あっという間に頭を横分けにしてくださったこと。やっぱり、それが妥当ですか・・・身の程知らずでした・・・

 とはいえ、とても新鮮でインパクトのあった経験でした。読売テレビが大好きになってしまった。そう何度も出たいとは思いませんが、なんというか自分というものがわかるような、客観視できる気がします。違った入れ物に自分を置くことは大切ですね。

 3月30日日曜日、朝の6時15分から放映です。早起きするように。早起き出来ない諸君は夜から寝ないで見るように。まあ俺は正視出来ないけどね。

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結構静かです

 

ナイト・エクセサイズ

 夜にパワーリハをする。孤独である。みんな帰って静かなパワーリハ室で、ipodを聴きながら3セット行う。

 効き目があるのは分かっているのだが、しばらく時間がなくてぜんぜん出来なかった。こういうのはやらないと驚くほど早く時間がたつ。

 負荷を軽く、ストレッチするつもりで筋肉を出来るだけ伸ばして、呼吸をしっかりやりながら反復運動を行う。久し振りにすると、筋肉が笑っている(喜んでだ!)のが分かる。

 確かにβ-エンドルフィンが出ているようだ。思い切り伸びをしたような、くすぐったいような気持ちのいい感じがして、やめるのが惜しくなる。この感じね。負荷があっている証拠だ。

 自分の身体にどれだけ時間をかけることが出来るか?これが実は将来を左右する大きなファクターなのだ。脳学者の池谷裕二先生によると、脳が身体をドライブするのではなく、身体が脳をドライブするのだそうだ。身体を動かすことで脳が活性化する。身体をまず動かすことで頭が働き始める。文武両道。頭でっかちでも、脳みそが筋肉でもいけない。

 本を読む時間を半分にして、その分身体の手入れに使う。それが正解なのだよ。

 はじめは寂しく思っても、終わる頃にはハイな気分になっている。これは続けられそうな気がする。楽しくやる工夫が大事だ。Ipodからはどういうわけか夏の曲ばかりかかった(シャッフルにしているのだ)。終わる頃には汗ばむ夏が待ち遠しい。

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でも一人は寂しいぞ

僕のダライ・ラマ

 ダライ・ラマの本を読む。彼の言葉に日本の写真家が撮った彼の日常生活の写真を合わせた本である。僕はダライ・ラマが好きだ。そんな風に言っていいのか(おそらくいけないだろうな)判らないくらいえらい、言ってみれば生き神さまであるが、なんともいえない温かみのある風貌である。そこらへんにいるおっちゃんみたいでもある。

 ある雑誌で彼がウォーキング・マシーンを使っている写真を見た。彼の仕事場に置かれているようであるが、宗教色のある周りの置物とウォーキング・マシーンのミスマッチが面白く、いつもと同じ格好で歩いてるダライ・ラマは、おお現代の人なんだという強い印象を僕に与えた。

 神様が糖尿病や高血圧だと駄目だよね、やっぱり。

 佐野元春に「霧の中のダライ・ラマ」という短い曲がある。この曲は僕に後光の差すオレンジ色の霧の中に浮かび上がるダライ・ラマをイメージさせる。こんな曲を書かせるのは彼が親しみやすい感じを与えるからだろうな。多分。

 で、彼の本の中に「自分自身のマインド・コントロールが大事なのだ」と書いてあって僕は然り!と思ったのだ。外的なものでなく、考え方だけが人間を幸せにすることが出来る。どう感じるかというよりも、どう感じたいか自分を変えていくことがポイントなのだ。主体は自分にある。

 少し前に読んだ宗教に関する本も同じ事を感じさせた。当たり前のことなのだが実行は難しい。奥儀はこれなのである。

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おおっ!

 

音楽をあなたに!

面白いペーパーを紹介。
Music listening enhances cognitive recovery and mood after middle cerebral artery stroke
Brain 2008 pdf

 脳卒中になった人の急性期リハビリテーションの時から、自分の好きな音楽を1日1,2時間聴く、オーディオブックを使い文章を聴く、何もしないという3群間で認知機能や精神状態に及ぼす影響を半年間に渡り比較。フィンランドからの報告。

 結果:言語記憶での改善、焦点注意力の改善が音楽群で、言語、対照群にくらべ優れていた。音楽群ではまた、うつが少なく、混乱した気分が対照群より少なかった。脳卒中発症初期の音楽聴取が認知機能回復に役立ち、気分障害予防に役立つことが示された初めての論文である。

 どんな音楽だ?読むとこれは以前好きだった音楽ということで、多くは歌詞がついていると書いてあった。考察では脳科学的にはクラッシックの方が有益かも・・・ということであるが、好きな音楽を聴くということが大きいんじゃないだろうか。少なくとも欝になりにくいのは確かだ。

 音楽療法というのがあり、うちの法人のデイサービスでも療法士の方にやっていただいているが、昔親しんだ曲というのが効果がある。個人的にも音楽療法は日常茶飯事にやっていて、今日は気分がのらないからアップテンポのこいつで行こうとか、みんなもそうでしょう?

 「うーん、君の調子が悪いのは内臓じゃないよ。心、気持ちよ。じゃ、薬出しとくからね。CSNYの「アワ・ハウス」、毎食後と寝る前、特に寝る前ね、ちゃんと聴いといてね。自分で歌えるくらいになっといてね。2週間後に僕に歌ってきかして。えっ、「いい日旅立ち」の方がいい?しょうがないなー、じゃ、それでいこか。不本意だけど。」

 こんな日はいつか来る!? 

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カルテです

イン・マイ・ドリーム

 朝9時前に小さな扉を開ける。中に入るといい匂いがする。威圧感のない小さな図書館のような場所、此処は診療所だ。受付の女の子がアロマを焚いている。細くて無口だがきれいな発音で喋る。彼女しかスタッフはいない。

 二人で少し掃除をしてコーヒーをつくる。もうすぐ予約の最初の患者さんが来る。特に普通の検査では問題がないが、なんとなく気分がすぐれないので調べて欲しいという希望。大きな画像診断は他の施設に依頼して済んでいる。血中酸化度やホルモン、免疫能などあまり調べないデータを調べ(採血も全部僕がする)、体組成、遺伝歴、生活習慣、食生活などをチェックする。酸化度が高く問診からもストレスが高そうだ。毛髪のミネラル検査では大きな異常なし。

 患者さんが来る。少し元気そうだ。ハーブティを出して少し雑談をする。こんなことからヒントが出ることが多い。家庭内の微妙な問題がなんとなく明らかになってくる。彼は数年前からの患者さんであるが生活歴がほとんど網羅されているので、わずかな変化が自分のように判る気がする。1時間かけて二人で納得する対策を立て、また結果を教えてもらうことにする。

 こんな感じで1日5,6人の患者さんを診る。みんな口コミで紹介された方で、自分のように知っている人ばかりだ。時間が延びれば時々一緒に昼食を食べる。食材の選び方、栄養価を損なわない調理方法、歯の正しい磨き方、そしてスキン・ケアなども指導する。それは受付の彼女の仕事だ。正しい姿勢と歩き方(疲労度が違う)、睡眠のとり方なども教える。場合によっては専門家を紹介する。ほとんどの人には運動習慣をつけてもらっている。

 こんな仕事ぶりだと霞を食べて生きるしかない。でも霞を食べるほうが健康にも精神的にもいいかもしれない。

 全部の患者さんが終わってもまだ外は明るい。彼女は夜のバイトへ出かける(何をしているのだろう?)。僕は泳ぎに行くか映画を見に行くか少し迷う。いずれにしろまだまだ時間はたっぷりある。

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おっと、夢かー

至上の愛

 小人閑居して不善をなす。なんと僕は不善もなさずボーとしていた。

 まあ休みの醍醐味であり、こんなことを言っていては悟れん!これぞ幸福じゃ!ばか者!と思ったりもしていたのだが、チラッと見たイチローのドキュメンタリー番組で「腹が出ていて出来るスポーツは限られていて、野球はその一つなんですよ。俺は絶対、そんなの許せない!」と話しているのを聞き、むくっと起き上がる。

 出ようと思ったら雪がちらつくのでのびのびにしていた愛犬の散歩にゴー!

 その勢いで打ちっぱなしにも出かける。またかよーと思うだろうが実に2週間ぶりである。車の中でジョン・コルトレーンの「至上の愛」をかける。

 昔コルトレーンは好きじゃなかった。だってまじめすぎるんだもーん。僕の望んでいた音楽ではなかった。でも今は違う。律儀でまじめで、気持ちを裏切らない、そしてやたら仕事も優秀な友人のような感じで、時々とても会いたくなる。

 大学の先輩で敬愛していたF先生が女性につれなくされた時、入ったジャズ喫茶でかかっていた「至上の愛」を聴き涙したそうである(ほんとかい!)。彼はハンサムでクレバーで運動神経もやたらよかった。大変おもてになり、誰でも知っているフォークの女性ディオの一人と結婚したが離婚して、今は再婚し京都で活躍されている。

 コルトレーンを聴くとF先生の運動神経あふれる挙動を思い出す。人間、活発に動いて何ぼよ。今日はちょっともったいなかったな、と僕は反省する。

いぬとてにす
廃棄されたテニスコートと、ボールを見つけて遊ぶ犬

 

フォトグラファーズ・ライフ

 アニー・リーボビッツの写真集をお昼の時間に眺める。「ア・フォトグラファーズ・ライフ」、一人の写真家の人生と題された写真集である。

 彼女は世界で最も有名な写真家の一人で、全米で過去40年間に発刊された雑誌の表紙を飾った写真の評論家における人気投票で、なんと1位と2位を取った。ローリング・ストーン詩のジョン・レノンがオノ・ヨーコに抱きついている写真。ジョンが亡くなる前日に撮られたものだ。僕でも知ってる。2位はデミ・ムーアの妊娠中のヌード写真。バニティ・フェア誌に載った。これも有名。

 彼女はミュージシャンやスターの写真で知られているが、報道畑の出身である。この写真集は名前のとおり、仕事としての写真のほかに、今まで発表していない両親や子供の写真(だんなは全く出ず)がはさまれている。一番多いのは、とてもとても親しい間柄というのがわかる作家で批評家のスーザン・ソンタグの写真。どんな関係か、うーむ、微妙だ。

 この写真集は低い声で、静かにしっかりと語る。明るい話ではない。正直で、カッコづけはまるで無い。真実を浮かび上がらせると言うか、ミュージシャンでもこういう人だったのか、うーんと思わせるような写真ばかりである。中身が、ハートが写っている。

 最後の方はお父さんが亡くなったというのが判る。写真集は終わるが、この頃にスーザン・ソンタグが白血病で亡くなったというのを全く別のことから知った。そんなことがこの写真集をまとめさせたのだろう。      本当にいい本です。

 
 気に入ってる写真を載せておこう。マイケル・ムーア。アメリカの医療事情を批判した「シッコ」の監督。ブッシュをバカ扱いした映画で有名。この本人とスタッフの面構え!見てるとやる気になる。

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真ん中の太った人

 

小確幸

 寒い日が続く。忙しい日も続く。外来が忙しいのは当然だ。この時期、内科医が暇だと未来はない。それに加え抗加齢医学会、パワーリハビリテーション研究会の発表や運営関連の整理、パワーポイントの作製、アンチエイジング・ドックの整備など、なんやかんややることが多い。ブログまで手が届かん。

 最近の最高の楽しみは睡眠である。特に昼寝。昼飯の後、30分だけ寝ようと思ってソファーで身体を伸ばしたときの幸福感は、何物にも変えがたい。

 おお、なんて幸福の閾値が低いのだろう。でもこれこそ幸福への確かな道なのである。今日昼飯を食いながらパラパラ読んでいた新潮選書の「どの宗教が役に立つか」・・・この本は最高である、宗教について新鮮な見方に目が覚めるぞ・・・を読んでいて、ハタッと思わず本を落としそうになった。そうか、幸福はこれなのだ。まあ、詳しく説明すると長くなるけど。

 まあ、ともかく時間がないっす。今日も朝の7時半から本部で仕事である。出勤の車から眺める朝日があまり美しいのでシャッターを押す。こういうのも幸福なのである。
 
 「小確幸」、小さいけれど確かな幸福。目立たないけどお気に入りのおいしい豚カツ屋に行くとか、ばっちり気分にあった美しい曲が流れてきた時とか、そういうことの集積が美しく楽しい人生をつくる。これよ。ビッグ・ショットは後のお楽しみだ。

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冬の空気だなー

二言のある医者

 「おぬし、確かよな?」「おお、武士に二言はない!」

 素晴らしいことである。しかし医者に二言はある。

 この変化の激しい世界において、以前の常識が引っくり返ることは稀ではない。医学の世界においても同様であって、10年前の常識が、じつは間違ってましたー、絶対にしないでね、ということは結構起こることである。

 今では常識の心臓や脳の急性期血管造影と血管拡張は僕の研修期の頃は本当に常識に反することだったし、内視鏡を使って手術をするなんぞ想像の範囲を超えることであった。つまり二言あるのは進歩するからなのだ。

 そんな大技でなくっても、エクセレントな小技もあるぞ。

 注射するときアルコール綿で消毒する。常識であるが実はこれはただの水でもよく、極言すれば拭かなくてもいいのである。

 皮膚の常在菌は皮膚の酸性環境で生存できる。体内は中性である。注射針で押し込まれても増殖できず、また中性でも増殖できる病原性のある黄色ブドウ球菌などは皮膚ではあまり増殖できず、注射により体内に入る菌数(わずか数個とのこと)ではすぐ免疫機構でやられてしまう。

 実際にアルコール綿と蒸留水で消毒したグループを比較した673人参加した結果では、ともに感染は認められなかったとのこと。

 すごい。傷の治療は乾かすのではなく、浸潤環境を保つためにサランラップを貼るほうが治癒がきれいで早いというのに続く目からウロコの知見である。

 常識を疑う好奇心と柔らかい頭、科学的な推察能力、実行できる決断力がないとこういうことは出来ない。

 二言のある医者はすごい実力者なのである。

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するのは好きですがされるのは嫌い

 

 

 
 

マック再訪

 今日免許の更新に行った。朝早く出かけて時間が余りそうだったからコーヒーでも飲もうと、昨日コメントを書いていただいた浮気性の旦那さんに悩むmacmamaに敬意を表し(というわけじゃないけど。macはappleだよね)24時間営業のマクドナルドに午前8時頃に入る。道路沿いで目立つのよ。

 おお、マクドナルドに入るのは何年ぶりだろう。時間のせいだろう、1組の家族連れ以外は数人の、サラリーマンや訳のわからないおっさんたち、一人で来ているのがメインである。みんな新聞や週刊誌片手にコーヒーとマックである。しぶい。

 アメリカにいた頃は激!行った。日本と違うのは老人が多いことだ。ご夫婦も多く、なにか会話もなく無表情で寂しそうであったという印象が強い。夕食につかっている老人たちも多かった。夕日と固い横顔を見ていると、年をとるとアメリカは一層淋しいと思った。

 ここはすごく清潔で、来ている人もなんとなく屈託がない。適正に利用しているという感じだ。僕も持っていった仕事を少ししたのだが、机の上は明るいし、よく集中できた。値段も安いし。

 アメリカのファーストフードは侘しくてロンリー、というのがイメージだったのだが、日本に来ると変わってしまう。何か目新しいもの(まあマックは新しくないけどさ)は一緒に楽しんでしまうという、この包容力が日本の強さかもね。

hhhhhho
早い、安い、きれい