月別アーカイブ: 2005年1月

悪いやつほどよく眠る

悪いやつほどよく眠る・・・そうだろうか?知り合いに悪人だけど不眠症のやつがいる。何事にも例外はあるのだ。だけれど一般論としていい人が不眠症というのは正しい気がする。外来をしてふと気がつくと、睡眠導入剤を出しているケースがとても多いのに驚く。まずい・・・。いやー、まだ止められないんですよと言いながら、それだけを受け取りに外来に来る人がいる。みんな気にしているんだけれどやめるのは不安なのだ。そこで案外知られていない、睡眠薬の止め方について。

まずあなたの飲んでいる睡眠薬のタイプを知っておく必要がある。それにより止め方が違うから。睡眠薬は作用時間により超短時間作用型(半減期が4時間位まで。ハルシオン、アモバン、マイスリーというのが有名)、短時間作用型(10時間位まで。レンドルミン、リスミーなど)、中間作用型(28時間位まで。ロヒプノール、サイレース、ユーロジン、ベンザリンなど)、長時間作用型(それ以上、3日以上のやつもある。ベノジール、ドラールなど)の4つがある。寝つきが悪い場合、超短時間作用型。それに加えて途中ですぐ目がさめるという方は短時間型を用いているはずである。真夜中や早朝に目がさめる方は中間型以上を使用しているはずだ。

減量で一番一般的なのは薬の量を2〜4週間ごとに4分の1ずつ減らしていくやり方だ。これはどのタイプの睡眠薬にも応用できるがある用量以下では不眠が生じる可能性がある。そうなるとこのやり方では先に進めない。

中間から長期作用型では隔日法といって、始めは1日おき、それでも眠れたら2日おきとだんだん間隔を開けていく。ただ内服していた期間と同じくらいの期間をかけて中止しないと反動で不眠が悪化する場合があるのでゆっくりと。このやり方は短時間作用型以下のやつには適さない。離脱症状(不眠、不安、イライラなど)が出やすいためだ。中ではマイスリーが比較的出にくいともいわれている。 だとしたら短時間、超短時間作用型はどのようにすればいいかというと、中間型以上のものに徐々に変えていく方法がある。2週間ほど半量ずつ併用したりする。それで置換出来たら、隔日法で止めていくのだ。逆に中間型以上のものを短時間以下のものに置き換えると中止しにくくなるのでこれはよくない。

もうやめたいな、と思った時がやめ時で、毒薬じゃないんだからすぐ止めなくっちゃとあせる必要は無い。薬としては安全性の高いものだ。ただ服薬期間が長くなればなるほど止めにくくなるのは事実である。不眠が恐怖というのはよくわかる。ただ、逃げていると相手は増長する。反撃すべきだと思う、個人的には。つまり寝ないのだ。恐怖の元を直視する。幽霊の正体見たり枯れ尾花。寝なくてもどうってこと無いです。全ての人に勧められる訳じゃないけどね。

お風呂入っていいですか?

風邪の患者さんに質問されることが最も多いのが、お風呂に入っていいですかというものだ。お子さんが風邪のとき、お母さんは半分以上訊いてくる気がするし、大人の方にでも良く訊かれる・・・・実は正解はない。医学は統計の学問で、ちゃんとした研究報告を元にすれば答えを出すことが出来る。多くの医者が同様の質問をされているのにもかかわらず、風邪の時入浴が可能か研究した論文は調べた限り世界中に殆ど無い。

報告が全く無いわけではない。五十嵐正紘先生の日本の小児科医を対象とした調査では88%の小児科医は風邪の子供の入浴を容認している。しかしほとんどは熱がないこと、重症や急性期でないことの条件付である。半分近くの親は風邪の時風呂に入れない。しかし入浴させた親の回答では、82%が変化なく、15%は良くなったと答え、2%が悪くなったということである。

個人的には僕は風邪でも風呂に入る。しかしそれは治療を期待してではなく気持ちがいいからである。西欧では風邪の時入浴を勧める場合があるし、サウナは風邪の罹患率を減少させるという論文もある。大人の方は入りたければ入ればいいし、その気も起こらないぐらいしんどければやめればいいのだ。自己責任である。

風邪の時入浴を控える習慣は、江戸時代からほんの数十年前まで銭湯が主流であり、風邪を引きやすい冬に帰宅までの間湯冷めしたこと、また内湯でも浴室以外は気温が低く湯冷めしやすいことが原因ではないかと推察されている。湯冷めすると咳が出やすくなる。入浴して悪化した人は咳がひどくなったという人が多い。悪いのは湯冷めだ!気をつけろ!

といっても基礎に病気をお持ちの方の入浴は慎重にしたほうがいい。入浴は心疾患をお持ちの方の場合、心機能を良くする場合もあるし悪化させる場合もある。要は入り方で、病弱な方に一番安全な入浴方法を完全ではないがまとめてみると・・・

1. 温度は38から41度Cまでの微温浴。
2. 一番風呂は浴室が冷えているため控える。浴室を暖めておくこと。
3. 胸下までの半身浴とし、肩はバスタオルで保温する。首まで入ると心臓に負荷がかかる。半身浴だと、ちょうど空気中で寝ころんだ程度の負荷である。
4. 入浴剤は好みならば使ってもいい。ラベンダーの香りは心拍数を減少させ脳波のアルファ波を増加させるのでリラックスするし、炭酸ガスを主成分とするものは冷えに有効。
5. ゆっくり立ち上がる。
6. 入浴後の温度変化を少なくするため、更衣室など保温する。
7. 入浴後は水分を取る。喉が渇いてなくてもコップ2杯程度の冷やし過ぎないお茶やスポーツドリンクを。
8. 夕食後1時間は入浴を避ける。入浴することで胃への血流量は減少し、水圧のため胃が押し上げられて胃から小腸への食物の排出が制限されるため。
>おまけ:運動後は最低でも30分あけて入浴したほうがいい。入浴により血液は血管拡張した皮膚表面に多くなり筋肉へは減少するため、酸素供給、老廃物除去が不十分となり筋肉の疲労回復が遅れる。また入浴の心臓への負担もあり、運動されている方はしばらく待ってから入浴を。

身体の手入れに費やす時間

TOEIC会長で、65歳で司法試験に合格した渡辺弥栄司という人がいる。今87歳だが125歳まで生きると決めている。30年前に中国人で太極拳の高名な師家に幾つまで生きるつもりですかと訊かれ、神様が決めることですからと答えたところ、「それは幼稚な考えです、社長さんが社員にこの会社は後何年続くのですかと尋ねられて俺は知らないと答えるのですか、目標は無いのですかと質問され、無い、毎日一生懸命やればいいのだと答えるのですか、そんな会社は潰れてしまいますよ、幾つまで生きるかは自分で決めるのです」と諭される。すごい話しだが、彼は逃げ回った挙句、しつこい先生についに根負けして125歳と言ってしまう。根拠は特に無い。しかしこの年齢は現在生存可能な最長年齢と科学的に言われている。そして彼は偉いことに、何とかこれを実現しようとしている。

前向きなものの考え方、控えめな食生活など、多くの方がご存知のことを実行されているが、速歩き、真向法の体操、木刀の素振りなど身体的なトレーニングを毎日40分以上休まず続けておられる。おお、なんと素晴らしい。ところが彼が三浦敬三氏(プロスキーヤーの三浦雄一郎氏のお父様で、確か一昨年アイガーだっけ、氷河を滑走した。現在100歳のはずだ)に会われたとき、三浦氏は言うのである。「それではダメです。これから本当の人生を拓いていかれるならその程度で健康なんてことを信じていてはいけません。まあ、やらないよりはいいが。私は毎日、4、5時間ほど身体の手入れをしています。125歳まで生きるという理想は大きくてよろしいが、それに見合う努力をしていませんね。本気で取り組みなさい。どんなに忙しくても時間は取れるでしょう。」

どうよ、お父さん。僕もテレビで見たが、確かに彼は走っていた。100歳だぜ。仕事で忙しい?いーわけ、いーわけ。言い訳、好いわけ?素直に認めよう。あなたの身体だ。目標も無く、アイデアも無く、努力も無い。結果は明らか、火を見るよりも・・・

> ※2004年10月23日のニュース(共同通信)で三浦氏のことが出ています。 世界最高齢の70歳でエベレストに登頂したプロスキーヤー三浦雄一郎さん(72)の体力は20代男性と同じで、100歳の現役スキーヤーとし て知られる父親、敬三さんの大腿(たい)骨は60歳並みの強度があることが23日、東京都老人総合研究所の調査で分かった。  同研究所分子老化研究グループの白沢卓二研究部長は「遺伝的要因もあるが、体を鍛えていることが老化を抑える一因と考えられる。日ごろから 運動することが大切」と指摘。「三浦家の長寿の秘密を探る」と題し、11月8日に都内で開く特別公開講座で発表する。

若い奴らを助けてやろうぜ!

日本は高齢化社会である。あと何年もしないうちに65歳以上の高齢者があなたの周りにあふれます。えらい事です。寝たきりばっかりでっせ!何とかしないと・・・。日本の未来はこんな話ばっかりである。だけどホントなのか?シカゴ大学のベルニース・ニューガートンという学者は65歳越えたら高齢者というのではなく、65歳から75歳までをヤングオールド、75歳を超えたらオールドオールドにしようと提唱している。日本でも前期高齢者、後期高齢者と最近言っている。前期高齢者は元気である。寝たきり老人や痴呆老人の発生率は75歳まではかなり少ない。芸能人を見よ!高倉健は73歳だっけ(間違っていたらごめんなさい、だけど70台は間違いない)?森光子とか、一体どうなるんだ?失礼な話だ。なんとなく引退というニュアンスのある高齢者という言葉はそぐわない。あなたの周りにもバリバリの70台がきっといることと思う。

ということは65歳以上が老人という定義はもう古いんじゃないか。75歳以上という方がいいんじゃない・・というのは僕のオリジナルではなくて和田秀樹というやたらめったら本を出している精神科医の先生が言っていることだ。2025年が高齢化のピークで、4人に1人が老人だということだが、75歳以上を定義にすると2025年でも現在より少なくなる。老人が増え働き盛りの人口が少なくなる。とても国は回りません。だから消費税でも介護保険でも何でもかんでも皆様に負担していただかないと・・とか言うのが政府の見解だが75歳以上を老人と定義しなおすとこの理論は成り立たなくなる。だいたい老人はみんな働けないぐらい体が弱ってるのか?どーも信じられないな。このpearlsでも書いたけど日本は健康寿命世界一だ。元気な高齢者の率が世界で一番高い。その方たちがバリバリその能力を発揮していただける場所を作るほうがもっと大事なことではないかな。

介護保険で今度おそらく介護予防というのが新設される。ガタガタにならないように気をつけてね、ちょっとそのためのお金は負担するから(といっても国民が大部分の費用を負担してるんだけどね、しかも出してくれる金額はめっちゃ安いかもしれん)、という、まあ珍しくまともなプランだと思います。僕の診療所ではパワーリハビリテーションというのに力を入れている。これは介護予防の切り札、というか介護を必要とする方にとっても身体能力回復の切り札だと確信しているのですが、考案者の国際医療福祉大学大学院の竹内孝仁教授は50歳超えたらやった方がいいといっている。予防が大事だ。よれよれの高齢者になったらアカン。スムーズに体を動かせることが大事なのだ(パワリハは筋トレじゃなく神経と筋肉の連携をスムーズにし、使っていない筋肉を利用するようになることで身体と精神を活性化する)。高齢者というと何かしょぼいイメージがある。これが問題だ。パワリハでしなやかな身体をつくり、美しい外見とさわやかで前向きな精神を持って、今から将来を思ってうつむきがちな若いやつらを助けてやりましょう。あなたには若い奴らには無い知恵があるのです。やる気があれば能力を発揮できる場所はきっとある。探しても見つからなかったら僕に連絡してください。

楽天的で長生きを

2002年12月12日発行のメディカルトリビューンによれば、エール大学疫学公衆衛生学のBecca Levy助教授が「加齢に対して肯定的な態度を取れば寿命が平均7年半延びる」と発表した。1975年に50歳以上の660人の男女にアンケートを行い、23年後に回答内容と生存の関係を検討した。その結果加齢についての考え方がより肯定的と判断された回答者は多くの条件(年齢、性、社会的経済的地位、身体機能など)を補正一致させた段階でもより長寿であることが認められ、それは高血圧や高コレステロール血症の治療、禁煙や持続的な運動よりも寿命に対する効果が大きかった。自分を消極的に評価すれば寿命が短くなり、前向きに評価すれば長くなる。同助教授の前回の研究では、高齢者は加齢により自分が賢明になったと思うかその反対かと思うかにより、ストレスに対する心血管反応、記憶力、演算能力などに大きな差が出てくることが証明されている。

自分を前向きに評価するにはそれなりの自信が必要だろう。根拠の無い楽天性も有効に作用する可能性があるが、年をとっていく自分に自信がもてるだけの生活設計がちゃんとなされていたことが寿命の延長に一番大きかったのではないかな?とはいえ楽天的に考えることの効用はあなどれない。最近ご老人の欝傾向が増加しているが今までの人生が無駄に思えるような痛々しい結果になる場合もある。笑えば免疫力も増強する。単純に楽天的に考えるように心がけるようにしよう。

日本は健康寿命世界一

世界保健機構(WHO)は2000年に日本を健康寿命のランクを世界1位としました。これは日本が単に余命だけでなく活動的余命においても世界1の長寿国である、つまり年をとっても元気な人が多いという事をあらわします。わが国には長寿者が多いが反面寝たきりが多いなど高齢化社会に悲観的な感じを持たせる報道が多く、この結果に意外な感じを抱く人が多いのではないでしょうか。2001年2月1日のmedical tribuneは老化に関する疫学研究の専門家である桜美林大学の柴田博教授にインタビューし、興味深い話を引き出しています。

日本において死の直前に寝込む期間が半年に及ぶものは10数%に過ぎず、多くの高齢者は死の間際まで高い身体能力を保っている。

統計を出す場合施設入所者を対象にする場合が多いが、日本はかなり身体能力が悪くなってから入所する例が多く、比較的軽度でも入所していることの多い北欧と比較した場合、高齢者の能力は悪く出て当然である。

日米比較調査では、地域在住高齢者を比較した場合、日本の方が慢性疾患を持つ者の割合も低く、身体能力も高いことが明らかにされている。

寝たきりの実態が過大評価されているところがあり、介護保険ビジネスの伸び悩みはそれを裏付けるものである。わが国の地域高齢者の健康度が高いのは事実でその要因を解明していくのが今後の課題である。

わが国の高齢化社会の問題点は自殺が年々増加していることであり、その背景にある鬱への対策が今後大きな課題となる。これまで障害を持った高齢者のサポートが問題とされてきたがこれからは健常な高齢者について議論することも重要となる。

年をとることの悲観的な面ばかり強調されていますが、むしろ年をとることで伸びていく英知というものがあります。障害を持った高齢者に対する医療介護だけでなく、健常な高齢者の問題を考えなくては。 能力を保つためにどうすればいいかという医学的側面に加え、社会にとって必要な人間でありつづけるためには地域社会はどうあればいいかという社会的側面が大事です。医療という枠を越えて地域とかかわっていくにはどうしていけばいいか、私自身の問題です。

感情が怖い

夏樹静子の「椅子がこわい」を初めて読んだ時の衝撃は大きかった。彼女が実際に経験した激しい腰痛が整形外科的なもので無く精神的なものであり、精神科的な絶食療法で治癒するまでのドキュメントだ。それまで外来診療にはそれなりの自信もあって望んでいたのだが当時は専門バカであった。腰痛が心理的なものから呼び起こされるとは知らなかったのだ。おぉ、なんたる無知よ!

多くの医療機関を受診して全く異常ないといわれる。しかし恐ろしいぐらいの激痛が走る・・・症状が過度に激しく思えるとき精神的なものを疑うのは経験から知っていたが、一見何ら精神的な問題の見つからない知的な人間がそう訴えたとき診断は難しい(今となってはかなり確診をつける自信はあるけどねー、僕の患者さんが怯えないようにそう言っておこう)。内科の外来をしていると、この人が肉体的に苦しんでいるのは精神的なものが原因であり、症状はそれを表しているのに過ぎないと思うことがある、というか多いのだ、割と。同業者ならわかると思う。動悸、眩暈、腹痛など色々な場所の痛み・・・多くはご自身も気持ちから来るものだなと感じているが、時には全く意識されていないときもある。身体表現性障害だ。交通事故後のどうしても治らない腕の痛みに対して訴訟まで起こしていた人が、抗不安剤の投与で全く痛みが消失し神様扱いをされたことがある。原因はどうであれご本人の苦しみはリアルにあるわけだから、理解されないと痛みは2乗になるだろう。潜在意識は怖い・・・実は今アキレス腱を切断してやっとギプスが取れたところなのだが、健常側の股関節が痛くて困っている。松葉杖の片足歩行で無理がかかった結果なのだと思っていたが実は心因性だったりして。完全な状態で働くことの恐れが痛みを作り出している可能性は・・・心配になってきた・・・。

精神は肉体を支配する。健全な精神は健全な肉体に宿るというがありゃ嘘だ。そういう時もあるが、健全な肉体を持つ不埒な輩は多いし、不健全な肉体を持つ健全な不屈の精神の持ち主もいる。パラリンピックを見よ。いずれにしろ、身体は精神の単なる乗り物に過ぎないのかもしれん。感情は強い。全てをぶち壊すのは肉体ではなく精神であり感情だ。頑張ってるとき、肉体よりも感情が負けた時が最後の時だ。肉体のコンディションに気をつける人は多いが自分の気持ちのコンディションは結構投げやりだ。そいつは間違いだ、大事にしなくてはいけない。最優先事項だと思う。

ボケたくなけりゃ肉を食え!

なんてタイトルだ。だけどこれ嘘じゃないかも。高齢者がどんどん増えてきて大騒ぎしている割には、実のところ高齢者の方のデータというのはあまり無くてわかってないことも多い。その中で東京都老人総合研究所は多くの高齢者のデータを発表しているが、その中で長寿と栄養について面白い発表があるのでいくつかを書き出してみよう。

1. 1970年代における100歳以上の方100人のデータでは、食事における蛋白質の割合は当時の日本人の平均を大きく上回っていた。
2. 東京の高齢者の中で20%ほどは、量は多くないものの毎日肉を摂取していた。沖縄の高齢者はもっと多くの肉を摂取していたが脳卒中の発生率は全国最低だ。
3. 牛乳をよく飲む高齢者ほど魚、肉、卵などの動物性食品を積極的に取っており、高学歴で運動習慣があり、歯が多く残っていて朝食を取る習慣があるという共通点があった。
4. これらの方は栄養状態の指標である血中アルブミン値が高く、その値と長寿とは相関関係がある。
5. 肉に多く含まれるセロトニンは脳内神経伝達物質であり、鬱やボケの予防につながる可能性がある。

どうよ、皆さん。他にもあるぞ。神奈川県立保健福祉大学の杉山みち子教授は、高齢者の最大の栄養問題はたんぱく質、エネルギー低栄養状態であると看破している(日本医事新報4141:1,2003)。70歳以上では体力と筋力をつけるためエネルギー、たんぱく質をちゃんと食べることを目標とした栄養教育が必要とまで言っているのだ。肉を食べるな、粗食こそ長寿のもと、というのが一般論だが、それは成人病になりやすい70歳台までにいえることで、その激戦区を勝ち抜いてきた高齢者の方はむしろ栄養をつける必要があるのであった。

イメージが変わるなぁ。後期高齢者は絵や音楽をたしなみ(芸術はボケ予防に最適だ!)、マシーンを使ってパワリハをし、赤ワイン(含まれるポリフェノールは老化やボケ予防に効果ありとされている)でステーキを食うのが望ましい生活なのである。店の方も考えないといけない。焼肉屋は年齢によって値段を変える。成人病予備軍の30歳から70歳までは高めの設定で、それ以上は半額。今日は金が無いから焼肉にしようぜと、高齢者はスポーツで汗を流した後相談する。こういう人が増えると暗い日本も少しは変わるんじゃないかなぁ。

高血圧の人(特に70歳以上)の血圧はいくらまで下がればいい?

高血圧と診断され薬を飲んでいただいている場合、当院では家庭血圧測定器をどこかで購入していただいて、できるだけ家庭内でも血圧を測定していただくようにしています。診察に来られた場合と家庭内ではほとんどの場合家庭内の方が低く出ますが(これは白衣性高血圧といって医療機関での緊張が反映していると考えられるます)、時により下がりすぎではないですかと心配される場合があります。血圧の下がりすぎは御高齢の場合かえって脳梗塞や心筋梗塞を発症する危険性があるということを良くご存知なのです。

ご高齢の場合、いくらぐらいの血圧が適当なのでしょうか?

米国やWHOなどでは年齢に関係なく140/90mmHg以下が目標とされています。日本でも若年、中年者や糖尿病合併例では同様に考えられていますが、高齢者(70歳以上)に関しては少し異論があるようです。同様の降圧をめざすべきという意見とともに、脳や心臓の循環障害の発生を考え、もう少し緩めの目標が良いとする意見があります。色々なデータの解釈の問題がありますが、日本人を対象にした決定的な高血圧の介入試験がないのが混乱の元と思われます。

しかしながら目下のところの妥当な考え方は、基本的に140/90mmHg以下に下げる、しかし拡張期血圧(低いほうの血圧)は70mmHg以下に下げない というところと思われます。

高齢者は高血圧の人でも拡張期血圧はあまり高くならない傾向があります(血管が硬くなっているとその傾向が出てくる)。高い方の血圧だけに注目して降圧をはかると下がりすぎて、拡張期血圧に依存している心臓の冠動脈の流れが妨げられ心筋梗塞などが発症しやすくなります。

拡張期血圧は70mmHg以下にならないように。ゆっくりと最低3ヶ月ぐらい時間をかけて。めまいなどの症状に注意して、症状があれば 測定値が低くなくても 下がりすぎを疑うというのが注意すべきところではないかと考えます。

家庭血圧測定の際の注意点と逆白衣性高血圧

高血圧に診断、治療には家庭血圧の測定が大事です。その際に知っておいたほうがいい知識を東北大学教授の今井潤先生の文献を参考にまとめてみました。血圧値に一喜一憂しないよう以下の事を覚えておきましょう。

1. 血圧は1心拍ごとに変動するし、わずかな内的外的刺激(腹が立っていること、寒い、痛いなど)により簡単に上昇する。
2. 1度に数回測定すれば一般に最初の血圧値が高く、だんだん低くなる。どの値をとるかは諸説あり、すべて記録しておく。計時的変化を見るには1回目に統一しておく。
3. 測定開始の最初の数日はその後の血圧より高い。
4. 一般に朝寝床から起きて動き出した直後の血圧は夜の血圧にくらべ高い。起き上がらず寝床の中でぼんやりしている状態で測った血圧は基礎血圧といい、この血圧が高い場合は注意。
5. 冬季には夏季に較べ血圧が上昇する。

病院でお医者さんや看護婦さんに測定してもらうと緊張して血圧が上がるのを「白衣性高血圧」といいます。逆に家庭内で自己測定時に神経質になって高い血圧値がでると下がるまで何度も測定を続ける人がおり、病院で測るほうが安心して低くなる人もいます。そういう人を「逆白衣性高血圧」といいます。

血圧に神経質になって自分で高血圧を作り出さないようにしましょうね。