月別アーカイブ: 2011年8月

手を丁寧に洗う

 今日日曜はずーと雨が降った。涼しい。もう夏は終わってしまうのかしらん。まわりでも風邪をひいている人が多いようである。

 という訳でもないが以前買っていた「かぜの科学」を読む。著者はジェニファー・アッカーマンという「ナショナル・ジオグラフィック」なんかに寄稿しているサイエンスライター。原題は「Ah-Choo!? ―The Uncommon Life of Your Common Cold」という気の利いたものである。

 一般的な風邪、common cold というものは医学部ではほとんど講義されない。少なくとも僕の時代ではそうだった。今はどうか知らないが、僕の患者さんの話を聞いてもあまり変わって無いような気がする。なぜなら大学病院の医者は風邪の患者さんが来ても通り一遍の薬しか出さないから。開業して風邪の患者さんがワンサと来てからいろいろ工夫するようになる。

 風邪に対する医学書というのもないなぁ。インフルエンザや肺炎はごまんとあるが、一般的な風邪、ライノウイルスが中心の、1週間以内に完治することの多い風邪というものに対しては、系統だった学問というのはないようです。一般的な医学雑誌でまれに特集されるくらいかな。

 で「かぜの科学」は、サイエンスライターらしい切り口で(実際に風邪薬の治験などにも参加する)、歴史から文献的な紹介までユーモアを交え、退屈させないで読ませてくれる。

 で結論だが、気になる特効薬は残念ながら、ない。予防として有効なのは①手を頻繁に洗う ②顔を触らない、これにつきます。手についたウイルスが(流行っているときは机や本などいたるところにウイルスがいる。それを触って手につく)顔から口に入るので、その経路を断つのが大事。治療として個人的にはかかったかなと思ったら出来るだけ早く(数時間以内に!)NSAIDs(抗炎症剤)を飲んで睡眠時間を長くとると悪化しない感じはあります。この本にも同様のことは書いてあった。

 手を洗うのは大事だなぁ。それも丁寧に洗うこと。石鹸を使い、指の間から爪まで丁寧に時間をかけて洗う。出来れば(公共の場であれば)蛇口も触らない、トイレのドアも肘で開ける、顔を触るのも右利きの人は左を使う方がいいと「かぜの科学」は主張するが、なかなかね。

 手を洗うというのは風邪を意識しているかどうかは別として、人によりかなり個人差があるようだ。ゆっくり手を洗うというのはなかなか上品な習慣のように思える。慌てないで、今までの出来事と自分を振り返りながら丁寧に手を洗う、これはレディの習慣であると書いてあった本を読んだ記憶がある。レディじゃない人も、これからの季節は丁寧に手を洗いましょ。

表紙はなかなか可愛い

 

ヘアー・スタイル スピークス!

 あるストリートワイズに富んだ人が言った。「男の力量、勢いは髪に現れる」。

 髪?なぜだ?でも確かに考えてみると落ち目な気分の時は貧乏くさい貧相な感じの気がする。髪にまで気が回らないだろうなぁ。大体男は、ナルシストな若い男の子はいざ知らず、いいおっさんは僕も含めて自分の顔を見る時間ってかなり少ないのではないか。僕は自信をもって1日1分も無いような気がする。これはいかんね。明日から30分はかけるようにするわ。

 で女性は髪に関してかなり神経質だと思うのだが、上の格言はやはりあてはまるかな。しかし少しモディファイしてもいいような。

 いいですか、「女性の知性は髪に現れる」。

 すっごい反発を買いそうな気がするんですが、でもそうじゃないかなぁ。メテャクチャな運転をしてくれるおばさんの髪型は(怒りに満ちて後ろから運転席の頭を見るに)例外なく、ありえない!誰がするんだあんな髪?という人が多い気がする。また、なんも考えてなさそうな女の子の髪型は、これまたそういう髪型である。

 男性の髪型は仕事の種類にもっとも影響されて、個人の知性は比較的自由な女性と比べて反映しにくい感じがする。自分に関して行き届いている女性はやはり髪型も行き届いているんだな。特に横から見たら耳のあたりに顕著に表れているいる気がします。いや、これは全く私の偏見ですが。

 顔のパーツは変えることが出来ないが、髪はかなりのところまで作ることができる。髪により印象は一変する。女性は先刻ご承知だろうが、センス、ビューティーだけじゃなく知性、こいつですよ、現れるのは。

例えばキャスリン・ビグロー氏、「ハート・ロッカー」の監督ですね。

知的なのは(かなりガッツのあるのも)間違いない。

 

暑いは気のせい?

 お盆も終わりですが、お昼時の暑さはなかなかのものである。僕は非常に暑さに強くて、クーラーをつけて寝たことがなく(この夏でもだ!せいぜい除湿を1時間ほど)、PCいっぱいでかなり熱がこもる診察室でもクーラーをつけていると調子が悪くなるので時々切る。忍耐強いNナースがふと見ると汗をいっぱいかいているので「暑い?」と訊くと、ささやくような声で「暑いです…」と言ったので非常に反省した。

 しかし「心頭滅却すれば火もまた涼し」という諺もある。実は先ごろ『European Journal of Applied Physiology』誌にそれを実証するような結果が発表されていた。この研究では、男性の自転車競技選手7名に固定した自転車を用いて30分のタイム・トライアルを行わせた。このとき研究結果を大きく左右したのは、テスト環境の実際の温度ではなく、被験者に見えるように表示されていた温度だったというのだ。

 3つの試験が行われた。まずは室温を摂氏約21.8度に設定した試験。2つめの「暑熱」試験では室温を約31.4度に設定。そして最後の「虚偽」試験では、表示室温は26.0度だったが、実際の室温は約31.6度と、3つの試験中で最も高温に設定された。

 試験はランダムに実施され、7名の被験者は全員、3つの試験をすべて受けた。その結果、約21.8度での成績は平均約16.63kmで、暑熱試験の成績(同約15.88km)を上回った。しかし虚偽試験は、他の2つよりもさらによい成績(同約16.74km)を記録した。

 また、被験者がこれらの自転車運動で発揮した平均パワーも、虚偽試験(184.4ワット)が暑熱試験(168.1ワット)を上回った。約21.8度での試験と虚偽試験は、実施時の室温が後者は10度近く高かったにもかかわらず、発揮されたパワーに大きな差はなかった。

 過酷な条件下であっても、温度の表示といった視覚的な刺激だけで運動パフォーマンスに直接的な影響を与える可能性があるということが示されたのである。

 なかなか興味深い。プラセボ効果という、実際に効果がない薬物でも効果があると信じていればそれなりに有意の効果を示すという現象は医者ならだれでも知っている。言い換えてみれば、心理的な作用は十分身体的パフォーマンスに影響を与えるということであり、この実験もそれを証明したということだ。

 「暑い、暑いっていうな!」と怒る人がときどきいるが、暑いという言葉を聞いているともっと暑くなってくるからだろう。「いやー、いいお気温で」と言ってる方がいいな。やせ我慢も意味がある。まっ、僕は単に鈍いだけだけどね。

 でも診察室はちゃんとクーラーをつけていることにする。みんなのためね。

ビッグ・ボーイの危機

 「あっ、サボテンの先が黒くなっている!」。今まで5年以上苦楽を共にし、30㎝のチビから今では2m近いビッグ・ボーイに成長したサボテンの先が腐食したように黒くなっている。ついこの間までつやつやした若芽の薄緑色だった部分の先に幅1㎝ほどの黒い異常が。

診察室にいるビッグ・ボーイ

 

 植木業者さんに診ていただいて、半分くらいの高さのところから切ることになった。大変残念。確かにこのままだと天井についてしまうのでどうしようか迷っていたところではあった。その気配を察したか。

 植物、特にサボテンは喋るのだという話が昔あった。意志があるのである。「プラントロン」という機械があり、植物の葉に電極を取り付けて電位を測定して音声信号化するもので、植物の環境に対する反応を反映するらしい。そこで聞き取れるのは植物とそこにいる人間との関係性を表現しているようだということ。

 「プラントロン」があればどう言うかな。うーむ、今まで元気だったからほりっ放しにしていたのが悪かったか。反省。スタッフのみんなはちゃんと愛情込めて世話をしてくれていたのだが。ちゃんといつも僕は見ていたんだよ。愛情表現が乏しかったのが悪かったかなー。

 手術がすんだら毎日ちゃんと声をかけてナゼナゼしてあげよう。愛情表現はオーバーにしよう。サボテンに対してだけじゃなくって。そして「レオン」のように、逃亡することになってもちゃんと連れて行くからね。

 

嘘みたいな本当の話

ついこの間、用事があって車で初めての道を走っていた。お昼前で腹ごしらえをしなくちゃなと思い、ちょっとよさそうな看板があったのでそこに入ることにした。

脇道を入って少し行くと、大きな駐車場があってきれいなお屋敷風の店があった。「10歳以下の子供さんはご遠慮お願いします」と書いてあって、これは良さそうじゃないのと期待が膨らむ。中の作りは高級感がありセンスもあって予想よりかなりいい。なにかスピリットが漂っているのだ。店員さんも合格。鄙にはまれないいセンスだと思い、テーブルの上においてあった紹介パンフを見る。かなり手広くやっておられるのだが何かポリシーが感じられる。提供されるものの素材もそうだが、利益だけでなくもっと大きいものを求めているような。どこがやっているんだろう?

見覚えのある会社名を見つけた。・・・?これは昔仲の良かったガールフレンドの実家じゃないかな?

お伺いしたこともあるのだ。社長さんの名字を見て確信に変わる。うーむ、何たる偶然。「お父さんにはお会いしたことなかったけど頑張っておられるんだ」と少し感慨に耽る。いろいろ見ているうちに、地域の障害者の方を率先して雇用されているのが判った。

文章を読んでいくと「・・・私たちは障害のある方々を敬意を込めて貴世満さんと呼んでいます。高貴な心が世の中に満ちるように・・・」

キヨミツ?これは僕の名前じゃなかろかね?漢字は違うけど・・・・

 

鳥肌が立ちました。偶然とはいえね。こんなことがあるんだ。


備前清光という刀。関係ないですけど。

見た目よ、見た目。

昨日の日曜日は絶好の海日和でしたが、梅田であった「第5回見た目のアンチエイジング研究会」へ行ってきました。クー(泣)!

この前あった抗加齢富山合宿で近畿大学奈良病院皮膚科教授の山田先生(皮膚科学会のやんちゃ坊主と紹介されておられました。全くその通り)からお誘いを受けていたので、また面白い話が聞けるならと思い朝の10時から夕方5時までギッチリのスケジュールをこなしてきた。いかにも誤解を受けそうな「見た目のアンチエイジング」というタイトルだが、中身は学術的で皮膚とか体型とか顔の構造とかが話題になるのが違うだけ。病的な老化を避けいつまでも元気でいようという抗加齢医学会の根本精神は同じです。

興味深い話題をいくつか。

①コラーゲンは医学会においては「あんな高分子のものを飲んでも吸収されないから関節や皮膚にいくわけがない」とインチキ商品扱いが一般的である。しかし京都府立大学の佐藤教授は動物や人間で実際に血中濃度が上昇し皮膚や軟骨の細胞に取り込まれていることを明らかにした。コラーゲンペプチドはヒアルロン酸などの保湿成分の合成促進、血流改善、軟骨細胞の減少抑制などの作用があるようで皮膚や関節の状態を改善する可能性がある。

これはビックリ!以前から効果があるはずがないとは思いながらも実際に飲んでいる方はプラセボ以上の効果を示す方がいたので不思議に思っていたのである。実際にいっていたのか。

 

②年を取ると眼瞼が下がってくるが、それを防ごうとする顔面筋の緊張で頭痛、肩こりが高頻度におこる。福岡大学形成外科、大慈弥教授の発表。年配の方の頭痛、肩こりの大きな原因で、眼瞼形成術で消失する!

フロアーから「肩こり研究会」によく参加する整形外科の先生が「目からウロコ!」とコメントを述べられていた。同感。

 

③年がいっても体型が崩れない女性は、筋肉量があり姿勢よく大股で歩き、食生活の乱れが少ない。当然であるが生活習慣病の予備軍はおらず大変健康である。そしてサイズのあった下着を着けている。

45年間、2000人近い女性の体型計測を継続的に行ってきたワコール人間科学研究所から篠崎所長の発表。当然といえば当然の結果。努力が必要。no pain, no gain. しかしそのあまりの人による差異に思わず自分を振り返り、考えてしまう。

 

ほかにも面白い演題がいくつもあり行った甲斐がありました。健康を意識していたら、自ずから外見にも興味が向く。内から、そして外から健康を意識すること。結局同じことね。