月別アーカイブ: 2013年7月

祭りのあと

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年1回おこなわれる抗加齢医学会臨床データ報告会が終わった。今回は幹事として半年くらい前からいろいろ用意していたのだ(2日にわたって開催するので、このハイシーズンに開催場所である六甲山ホテルを40室おさえたりね。大変協力的でフレンドリーな素晴らしいホテルです)。いざはじまると何かとおこるものだが、事務局であるヘルシーパスの皆さんとうちのスタッフのおかげで恙なく終わり、脱力感と充実感が残った。楽しかったねー。

この会の特徴は日々臨床業務に従事している開業医が、保険診療と別にリサーチを行って発表することにある。これはかなり大変なことで、僕はこの会に参加されているドクターの情熱とその優秀さにいつも大いに勇気づけられるのである。

1日目が終わって寝る前に博多のN先生とビールを飲みながら話したこと。彼は温厚な外観とは裏腹にスノーボードとロックミュージックが趣味で僕と同年齢。発表で自分を実験台に1日に何回も採血したデータを出していた。男性ホルモンを注射でうつ、軟膏で塗るといった場合の違いを唾液での濃度とかと比べて面白いデータを見せてくれた。

「えらいねぇ、医者の鏡!」 「そんなことない。でも面白いからね。おねえちゃんと飲むよりリサーチを考えているほうが楽しい」

正直なところちょっと僕も同意する。

「男性ホルモンうつとさ、どんな感じになるの?」「・・・・雑誌があって右に仏像の写真、左に裸のお姉さんの写真がある(どんな雑誌や!)とする。前はどっち見てもおんなじ感じだったんだけど(それはまずいで!)、うつと左の方に「いいね!」をつけたくなる・・・」

おいおい。しかしこんな話を聴けるのもこの会ならではだ。

常連の方々に加えて新しく参加された皆さん、一人一人に心から有難うを言いたい。そして明日からまた楽しく頑張りましょう。

そしてその中で一人、日本で間違いなく最先端の抗加齢医学を実践している川崎のH先生、待ってたよ、ウェルカンバック!

休日だけ野蛮人

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今日は休みで1日家にいた。みんな忙しく、僕と愛犬だけ、二人っきりの濃厚な時間を過ごす。

外は大変暑いが、窓をあけ放ち風を通すと大変快適だ、と思うのは僕だけらしく愛犬は冷たい床に張り付いてハアハア言っている。扇風機をあててやる。犬は屋内で扇風機にあたり、僕はベランダで寝転がって本を読む。主従関係はすでに逆転していたが、ライフスタイルにおける選択も逆転している。

開高健氏の「輝ける闇」で描かれたベトナム戦下サイゴンの空気を満喫していると裸になりたくなったが、ギリギリのところで抑える。人間は野蛮人に近いほど元気でいられる。食べたい時に食べ寝たい時に寝る。自分の体内時計で生きる。文明の利器は遠ざける。電気も使わず(これはつらいか)、言葉もしゃべらず四つん這いでうなるだけにして・・・これも難しいか。TVは論外と。こういう生活を続けると間違いなくリファインされるぞ。

そして野蛮人生活のポイントは実は自分を見つめ直すというところにもあるのだよ、諸君。雑音無しにね。

生活の糧もあるのでとりあえずは休日だけ野蛮人だけど、この日数をじりじりと増やしていこう。そして頭は科学者、ハートは少年、そして身体は野蛮人っと。こういきたい。順番は間違えないように。

黙祷

 

 

前福島第1原発の所長であり、中学高校と同級生であった吉田昌郎君が亡くなった。僕はそれほど親しいわけではなかったけれど、当時の言動を報道で知るたびに、彼らしいと思い、出身校が規定するわけではないけれど、何か付属天王寺高らしいと思っていた。いちばんいい部分を体現していた。58歳は早すぎる。直接影響はないとされていたけれど、結果的には原発に殉じたようなものだ。今の東電を見ていると頭にくる。吉田君が心安らかに眠れるように。心よりお悔やみを申し上げます。

空海のように

空海院長ブログがリニューアルされました、とHPの最新情報にあるが見かけが変わっただけです。Old wine into a new bottle 新しい革袋に古い酒を入れただけー、ですが、見かけが変わると中身も影響されるので少し変わるかもしれない。

ここしばらく熱心に読んでいたのは夢枕獏氏の「沙門空海、唐の国にて鬼と宴す」で、全4巻、怒涛のように読んでしまった。キンドルで久しぶりに漫画から離れさせてくれたチャーミングな本。空海が遣唐使として唐の国に渡ったそこでの冒険譚ですが、いや面白いのなんの。びっくりだ。空海、スーパースターじゃないの。タイトルの意味は最後に分かるが、いや勉強にもなったし読後感が非常に爽やかだった。なんと完成まで17年かかっていて、後書きで作者自ら「最高傑作!」と断言し思い入れを吐露するくらいの本です。

その中で「白髪の老人が現れた、年の頃は60くらいであろうか」という感じの文章があって僕はひっくり返ったわけだ。60!?老人!?俺はどうなる?

まあ昔の唐だからそんなもん・・・と皆さんは思うだろうし実際そうだろうが、そこに注目したいポイントがある。昔の人と比べると現代人は明らかに若返っている。運動能力において50年前とは比べると10才若くなっていることは統計上明らかで、サザエさんの御父さん、波平さんは54歳ということになっていて僕より年下なわけだが、どう見ても今の70歳だ。つまり抗加齢は文明の進歩とともに自然に成し遂げられているのである。

抗加齢という言葉に対して不自然とか、できないとか言う方がいるがそんなことは全然ない。すでに我々は達成している。すると、今以上に加齢スピードを遅くすることは当然可能だと考えられるわけだ。iPS細胞とかブレイクスルーがあると医学は急激に進歩する。この前の抗加齢医学会の講演を聴いていても、すぐ応用できそうな話はいっぱいあるし確実に老化スピードを遅くする方法は進歩していると思う。これから全くどうなるか判らない。

考えなければいけないのはそうして得た時間を何に使うかという話で、ここは各人の哲学です。長生きしなくてもいいや、というのはよく聞くセリフだが、それほど充実して生きているようにも見えないぞ。

で僕はみんなの10分の1のスピードで年を取ることにした。みんなの10年が僕の1年。とすると10倍分働かなくてはならないが、それもまたよし、楽しみだ。空海のように。

「急げ」 弥勒菩薩は言った。

「雲のように急げ」「過ぎてゆくぞ、過ぎてゆくぞ。瞬く間の五十年ぞ。一夜の夢のごとき一生ぞ」

「ぬしが為すべきことあらば、急げ」

「雲のように?」 「そうだ。空をゆく雲のように往け」