診察室においてある空気汚染計測器は、窓辺だといつもGOODの緑ランプだけど今日は危険な赤
今日は黄砂がひどい。僕は鈍感で何も感じないが、周りには鼻水や咽頭痛などを訴えるセンシティブな人が複数いる。
大気汚染、PM2.5(粒子径が2.5μm以下のもの)が認知症の危険因子として最近注目されている。ランセットというハイレベルな医学ジャーナルが昨年12の認知症リスクファクターを発表した(Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission – The Lancet)。3年前には明らかでなかった新たな3つの因子が加わり、その一つが大気汚染(他は頭部外傷と過度の飲酒。ドキッとした?)。JAMAというこれまたハイレベルな医学ジャーナルが昨年、居住地PM2.5の程度と認知症の方の脳内アミロイドβ蓄積度が相関すると報告した(JAMA Neurol 2021;78:197-207)。
PM2.5がどのように認知症を起こすのか?
PM2.5は肺胞内に達した後、肺胞内上皮に取り込まれたりマクロファージに貪食されたりして免疫系を刺激し全身に炎症反応を起こす。それに加えて鼻腔から臭神経を介して能動的に臭球から脳内へ、また受動的拡散で脳脊髄液内に入り最終的に脳の炎症を引き起こす。そしてアミロイドβの蓄積を増悪させる。鼻腔ルートを使用する脳への到達方法としてインスリンを鼻腔吸入して脳の糖代謝を手助けし認知症を治療する試みがあった。残念ながらいい結果は得られなかったけど。アロマセラピーとか、やったことないけどコカインの吸入も鼻からというのは脳への直接作用を期待してのことだ。
PM2.5 の認知機能への悪影響を証明した大規模スタディが集積され、ランセットによれば大気汚染を回避すれば全認知症の2%は減らすことができる。この2%は運動不足と同じ程度で、糖尿病が1%だから侮れない影響力だ。黄砂径は4μmが主だがそれ以下の大きさのものも含むので用心するにこしたことはない。
不織布マスクは残念ながら網目が5μmでPM2.5の防御は難しいが2重にすればましかも。また血中ω3濃度が高ければPM2.5による脳萎縮程度は軽減されるようだ(Neurology 2020;95:e995-e1007)。EPA、DHA! やはり青魚はいろんなところでいい働きをする。
自分のいる地域での大気汚染程度は環境省や民間団体のサイト(https://aqicn.org/map/japan/jp/)でもほぼリアルタイムで知ることができる。あまりひどいと外出をひかえるのがベターか。
PM2.5も花粉症と同じように積極的な防御策をとるべきかと思うね。