月別アーカイブ: 2007年6月

優雅な人生

 僕はよく雑誌を読むのですが、「ブルータス」とか「GQ」とかには50代で引退して自由気ままに生きている人が男の理想みたいな形で時々出てきます。
 
 いったいどうやって食ってるの?

 若くして資産を築いた能力かつ運のある人たちですが、実際俺の周りにはいねぇなーと思っていたのですが、いました!ついに。このまえゴルフをひょんなことでご一緒した方なのですが、自分で貿易関連の会社をされていて55才で引退、今は大阪大学の社会人大学院で文学部の授業に出ていて美術史を勉強しているとのこと。もう5年目で(何年でもいける)試験も一般学生と一緒に受けるそうです。同じ年代のクラスメートも結構いて、5年目でちょっと飽きたので、友人と一緒に単位の交換ができる神戸大学へ移ろうかと思案中とのこと。

 苦みばしったいい男ですが60歳よりかなり若く見える。今まで仕事に関係あったのだがよく知らなかったヨーロッパの美術史を遅まきながら勉強できて大変嬉しいと。

 そりゃそうだろう。彼は日本にタイガー・ウッズが来た時見に行って、「とても同じ人間とは思えなかった」と言っていましたが、僕かりゃすりゃあなたも同じように感じるよ。現実にはいろいろあるのかもしれないがなんと優雅な人生・・・と思いますが、なんとなく俺もぜひそうなりたい!と思わないのはなぜなんだろうな。

 僕にとって仕事が一番スリリングで面白みのあるサブジェクトなんだろうなと思います。リスクは総てにおいて厄介ではあるが、それが無ければ何でも単なる暇つぶし。がっつり仕事にぶつかることが出来ることはある意味大変幸せでは、と思っています。

 と言った舌の根も乾かぬうちに「引退だよーん」と言ったりして。しかしその確率は僕が全米オープンに出る確率くらいか。それも寂しい・・・・

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「ヤングでリッチでリタイヤ」という本。読むかい!

タクシー・ベジタリアン

 ちょっと用事があってタクシーに乗りました。ある会合があってタクシーを遠距離で回してくれたので1時間弱乗っていたのですが、この運転手さんが面白かった。最初あまりに無謀なおばちゃんの運転に直面して、「あぶないっすよねー!」「おばちゃんは本当に滅茶苦茶だからな(偏見か)」と話し始めたのですが妙にうまが合い、ずーとしゃべり続けていました。

 判明したのは彼がベジタリアンとのこと。20代だと思うのですがアトピーが玄米食に変えて1ヶ月で治った友人を見てからいろいろ勉強しているとのこと。なかなかの知識量でした。例のミートホープ社ですが、「あれ1社だけってことは絶対無いよなー」「とーぜんですよ」というところから彼が言うには ①「何とか牛(但馬牛とか)」というのは屠殺された場所で名前をつけるので、輸入してきた牛を1週間おいといて屠殺するとそれで「何とか牛」になる(へー!)②輸入する時弱らないように薬をいっぱい使うので現地で屠殺したオージービーフとかの方が安全(うーむ、アメリカでもどこでも、うまいステーキ屋はうまいので別に日本産にこだわることは全くないよな)③友人のやっているチェーンの焼き鳥屋さんは冷凍で来るやつを焼いているが、カンガルーの肉だといっている(ほんまか!ひぇー。味は近いの?鶏そっくりらしいです)。などなど、びっくり情報満載です。ほかにもあきれた話がいっぱいで、勿論真偽の程は判りませんがすごい話というのは大概本当だしね。ともかく外食でこれは安い!というのはほとんどやばい。

 僕が頭も石鹸で洗ってるといったら当然のごとく「僕も無香料の石鹸で洗ってます。無香料、というのが大事なんですよ」。おやつはバナナかプルーン、ナッツという人で、無農薬野菜が主食の本ちゃんベジタリアン。肉、魚は最近食べたこと無い。友達と飯を食うときはバイキングにして野菜だけ食うという人でした。といっても付き合いにくい感じはなく快活で明るい。田舎で自給自足で暮らすのが目標だそうです。生まれは芦屋だそうですが。

 人はわからん。袖刷りあうも他生の縁。他人とはできるだけ喋ったほうがいいなと社会的人間を目指す僕は思います。

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産地直送?こいつも危ない?

向現Cogen

 村上龍氏の「5分後の世界」といういかした小説に「向現Cogen」という薬が登場する。現実の日本と違うパラレルワールドで時間が5分遅れた別の日本では、第2次大戦は終わっておらず、日本はアメリカに降伏せず、地下にもぐってゲリラ戦を繰り広げている。登場してくる日本人たちは、想像する過去のいい部分を持っている日本人で、礼儀正しく、弱音を吐かず、意志が強く、堂々として優しい。

 偶然別の日本に移動してしまったえー加減な主人公が、徐々にその別の世界の日本人にシンパシーを感じ、最後の究極の戦闘シーンで友人を助けるために元の世界に戻ることを放棄する(それはどのような行動で表されるか?彼は自分の時計の針を5分遅らせるのである)のはぐっとくるが、「向現」は戦闘シーンに現れる。麻薬のようなもので、負傷して痛みのため意識が遠くなりかけたりした時、「向現」を内服することで常時に戻るのである。

 なんというか、使われ方がひじょーにカッコよろしい。出た!「向現」だ!みたいな感じで思わず好きになってしまうが、作者もお気に入りのようで、自分のサイトの一つの名前に使っていた。現(うつつ)に向うというのが効能そのままだ。

 なんとなく自分がパッとしない時、「向現」のような薬はないものか?リアルに現実に立ち向かう勇気の出る薬。最近のビジネスマンの「飲む、打つ、買う」は「胃カメラを飲む」「欝」「{会社を止めようと}宝くじを買う」だそうだが、本来の「飲む、打つ、買う」に戻るような(まっ、これが魅力があるとは思いませんが}。

 軽症欝に有効な「パキシル」「トレドミン」?うーむ、違うなー。「ハルシオン」?全然。案外「バイアグラ」ってのが一番近いか。出でよ!真の「向現」!

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本では平凡な外観のようです

生還

 ジェームス・テイラーへのトリビュートコンサートDVDを見ました。非常にいい感じのコンサートなのですが、スティングが登場してきます。なにかJTとはあわない感じですが(ブルース・スプリングスティーンも登場し、こっちはもっとあわねえ!感じですね、でもJTを大好きみたいです)、ギターを2つくっつけたような不思議な楽器を操って、マイナーな歌を一人でとても美しく演奏し歌いました。

 カッコええなー、スティング。格好のいいおじさんミュージシャンといえばクラプトンと並んで必ずランキングされますが、もう60歳くらいですよね。体脂肪もどう見ても1桁という感じですが(ヨガが趣味らしい)、あの面構えがいいでしょう。はげてても色気のある見本です。

 僕の患者さんで、年齢も面構えもスティングにそっくりな人がいます。彼はある政治結社のえらいさんで、ちょっと怖いのですが、年に1度、必ず検診に来られます。

 ある年、胃カメラを○生会○江病院にお願いしたのですが、「100%胃がん、すぐ入院してください」と連絡が来ました。細胞診ではクラス4で確定ではないですが灰色で、検査したドクターは確信していました。

 「ちょっと悪いものの可能性が強いので手術しましょう。まだ間に合う可能性があります」とお話しました。「・・・わかりました」と彼は言って数日後入院していきました。

 しかし入院後の検査で胃がんは全く認められず、外来で検査したものが人違いでないか何度も調べられたのですが間違いなく、写真で見た凶悪な面構えの胃壁は全くきれいになっていました。まれではあるが急性の胃粘膜病変が治癒したということで退院され、報告に来られた彼に「よかったですねー!」と言っていたら・・・

 「実はうちの家内は霊感が強くて、ちょっとそんな仕事もやっとるんです。胃がんや、というたら1週間、物も食わんとずーと祈っとんですわ。やはりそれですかな・・・」と話されました。まさかね、と思いながら、その時はちょっとあるかもしれないという気になったことは否定できないな。それほど劇的な変化でした。僕は消化器の専門家ではないので結構あることかもしれませんが、あれほど僕の目にも、また専門医も間違いないと自信を持っていた所見が激変したのは初めてで、それ以後もありません。 

 スティングを見ると彼を思い出します。すごい生命力が強そうで、そういう感じがする人でないとあんな出来事は起こらないな。

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Mさん、いやスティング

  

説明会

 今、法人内で新しいプロジェクトが計画されていて、土曜日にスタッフに対して説明会をした。かなりシステムが変わるのだが、それを押し付けるのではなく、トップダウンでなく、スタッフみんなの意見が欲しい。そのためにも今までの経緯、理由、だいたいの計画を発表した。大変な努力をした事務長はじめ法人本部のスタッフに感謝する。

 うちの法人では年度末に業績の報告を経営的なことも全部スタッフに明らかにしている。そんな時、どちらかいうと雇用する側、される側といった対立構造が自然に出来てしまうもので僕個人としては微妙な緊張感が出てしまうのだが昨日は違った。

 これは院長である僕をはじめとしてうちのスタッフみんな一丸として協力していかないとうまくいかないプロジェクトだが、スタッフみんなの気持ちが前に向いているというのが僕にすごく伝わってきた。だからとても安心感があった。各々感じていることは違うだろうし、僕の感じた一体感も「それは誤解!」と茶々を入れたい人もいるだろう。でもね、僕の敏感なバイブレーション感知アンテナは「OK!」と確信を持って告げている。

 うちのスタッフは真っ当で熱くて優しい。「いいな」と暖かく心強く思えた夜だった。サンキュー。

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しんどくてもOkayよ!

目的は?

 「僕は抗加齢医学会の専門医だよーん、やーい、羨ましいか」と医者仲間に言ったとき、よく見られる反応の一つとして「お前そんなに長生きしたいの?俺は長生きなんざしたくねーよ、まっぴら」というのがあります。

 本当にそうなのかな?患者さんでも70歳位の方に検査をして、「素晴らしい、あと30年は十分生きられますよ」と言った時、90%の方は「エー、早くお迎えが来て欲しいのに、待ってるのに」です。今まで、「まあ嬉しい」と言った方は記憶にはっきりしていますが2人だけです。

 長生きは望まれていない?何でも額面どおりに受け取るわけにはいきませんが、どーも僕が思ってるよりみんな太く短く生きたいらしい。というか、高齢になることは楽しくなさそうだという感覚ですね。

 抗加齢医学の目標は単なる長生きではなく、「その年代における最高の健康状態を維持する」ことで、結果としての長寿です。標的は未来でなく今を向いている。

 そして、ここがポイントですが、目的がいる。これをしていると楽しい、止めたくない、ずーとしていたい、そのためにずーと健康でいたいのだ、という目的です。中谷彰宏氏は「100歳まで女の人とエッチが出来る体でいたい」という目標を立ててられます。立派です。男です。こういう目的があることで抗加齢医学が生きてくるのです。目的がないと確かに必要ないけどね。でもみんなそんなものも無くて生きていけるのかな?考えよう、きっとあるはずだよ。

 ギネスブックに載る長寿を目指すことが(今認定されている世界最高齢は男女とも日本人だよ)目的ではない。欲望を持続すること、太く長く生きるための身体、精神を作ることが抗加齢医学の目的なのである。わかるかな?で、僕は専門医なのだ。やーい、羨ましいか。

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94才でフルマラソンを完走したランナー

悦楽ゲージ

 今日はなー、夕方からみっちり1時間、愛犬と散歩して汗だくになりました。早めにシャワーを浴びたのだが、この筋肉がほぐれる温かいシャワーの快楽はなんというのでしょう。本当に気持ちいいですよね。汗をかいて運動した後のシャワーは、脳内のベータ・エンドルフィンをどれくらい分泌させるかというのは研究がないですが、間違いなく・快楽物質は・異常に上昇している・はずだ。

 日常生活で感じるストレスも、それを客観的にスコア化するのは難しいですが、間違いなくヘドロが海底にたまるように蓄積していきます。それがついに爆発し、ぎゃああああああと暴れると、雲霧消散していくのも経験上知っています(そんなことないですか?)。これもある種、快楽である。

 この快楽体験指数をゲージで表示できたらかなり健康管理に有益だと思いますが、これは自分の身体に訊くしかない。

 これは楽しいはずだ、と思っていても実はちゃう、ということがあると思います。頭はだますし、ごまかすのです。身体、肉体感覚のほうが信頼できます。できるだけ、ああ、本当に気持ち良いなぁ、極楽、極楽という体験を重ねること。ゲージでフルに近いところまで保つように意識することは本当に大事で、そうやってるやつはきっとすっきりした顔をしているんだろうなぁと思います。悦楽を重ねよ。勉強も結構悦楽だったりするのですが。

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中央のゲージが「悦楽ゲージ」です

夕涼み

 午後の診察は淡々と7時過ぎに終わり、窓から見える夕方の空は切ないくらい美しい。ピンクの雲と青い空が宗教画のようだ。清少納言の枕草子は「夏は夜」としぶくきめてるが、清光院長の「外来ウォッチ!」では「夏は夕暮れ」となる。

 この時間、そよ風に吹かれていると思い出す曲はユーミンの「夕涼み」である。二人で洗車をしながらホースからの水を真上に吹き上げて虹を作る・・・おお、夢のような時間、楽しい日々である。確かそういう時もあったような無かったような。

 ユーミンのベストアルバムにはぜーーったい入らないが、切なくなるくらい好きな曲がある。僕の場合は「夕涼み」「丘の上の光」「私を忘れる頃」(各々が収録されているアルバム名をあげよ!)がベストスリーだな。どの曲も僕を美しい清らかな酸素があふれている時間、場所に連れて行ってくれるのである。あーあ。

 「丘の上の光」は初夏の夕焼け雲が流れている草原(八ヶ岳かな)に、「私を忘れる頃」は真冬の凍えるような、夜景が小さく震えているような山頂(どこだ?イメージはLAの天文台だな)にテレポートさせてくれる。別に何か出来事があってそのBGMだったというのではなく、歌詞からイメージが強く喚起されるのである。大したものだよ。

 つらい状態にいても楽しい思い出の記憶があれば耐えられる、と言ったのは村上龍氏だが、思い出を持ったような気にさせてくれる曲を沢山持っていることもきっとパワーになるはずだ。そのためにも沢山音楽を聴こーぜ。

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「夕涼み」はこれです。

 

血圧マニア

 「先生、血圧が!頭がフラフラするー!死ぬかもしれない・・・」
「まあ落ち着きなさい、大丈夫だから。ふーん、170/95 mmHgね。確かにちょっと高いな。」
「でしょう!昨日の夜からずーと1時間おきに測っているんです!」
「本当に1時間おきに測ってるの?寝たんですか?」
「寝れるわけないじゃないですか!心配で30分おきに測ってたかも知れない。そうするともっと血圧が上がってきて・・・」

 これはある日の患者さんとの会話である。内科医、循環器医なら誰でも経験がある会話である。すこし体調が悪い、血圧でも測ってみるか、やや、高い・・・もう1度。やはり高い・・・もう1度。いやもう1度、下がるまで・・・

 この方の場合はそのまま眼を閉じて休みましょう、というのが正解だと思います。動脈瘤とか、高血圧を放置してはいけない疾患をお持ちの方は確かに急がなくてはならない。しかし多くの患者さん、特に心配性の方、白衣性高血圧の傾向のある方(医療機関に来ると血圧が上がる方)は少々血圧が高くても横になってお休みになると大概下がってくる。降圧剤よりも安定剤のほうが有効なケースが多い。心配で何度も測っていると必ず血圧は上がる。これはデータでも実証されているのだ。

 血圧の測り方にも慣れがあって、Blood Press Monit 2001, 6(3):133-8のカナダ、カルガリー大学からの論文では、ベテランの看護師さんと患者さんの自己測定を比較すると、収縮期圧で約10mmHg、拡張期圧で約2mmHg自己測定値が高いとされている。

 血圧は1日中変動している。起床後高くなり、また落ちついて午後1時ごろに向けて上昇し、また下がって夕方また高くなるというデータが平均的と示されている。大体40から最大80mmHgくらいまで変動がある。興奮したとき、運動時は普通の方でもかなり高くなる。その変動があるから血管の柔軟性も保たれる。

 ゆえにある一時の値のみを捉えて危険というのは難しい。またアメリカの心身医学学会では「“高血圧”と“血圧が高い”というのは別の疾患プロセスであり混同すべきでないというのを再認識する必要がある。“血管運動の不安定性”という現象を疾患と混同してはならない」とするステートメントを出している。外来に来られても高血圧であると診断するのは案外難しい。最低、日を変えて3回測って投薬はそれからというのは教科書的はことであるが、それでも投薬してすぐ血圧が下がり、薬をやめてそれが維持されていることも多い。一時的な血圧上昇だったのである。仕事や家庭のストレスで血圧はすぐ上昇する。僕自身の経験から言っても環境の変化で血圧は結構変化するのだ。5,6年前僕は降圧薬を2年ほど続けなくてはならないくらい血圧が高かったのだが、環境の変化(それだけじゃないけど。運動しだしたのも大きいかな)で今は必要ないしPWVなんかでも動脈硬化のサインはまったく認められない。心理的な要素は大きい。

 高血圧は心身症といってもいい要素があるし、またそれで本当に状況を悪くしていることも多いです。自己測定は大事だけど、とりあえず高くてもあんまり慌てないようにね。大丈夫。

激しい雨が降る

 夜になって激しい雨が降っている。
 一人で勉強している。やることがめちゃ多い。
 机の上だけが明るく周りがほの暗い部屋に京都で買った声明のCDが響く。
 愛犬がそばで寝ている。

 なんでこんなやらなあかんのかな?

 愛のせいか?

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明日の朝は多分…