月別アーカイブ: 2008年10月

タオ、アイ ラブ。

病院勤めの時、一番いやだったのが外来の日だった。これは実は勤務医がみんな思っていることじゃないかと思う。なぜかと言うと疲れるからだ。

あまりご機嫌とはいえない人が次から次へと現れる。しかもその内何パーセントかは確実に難題を持ってくる。何であろうとともかく一応の解決策を示さなければならない。しかも円満なコミュニケーションを図りながら。自分の能力に時にうんざりしながらも。

開業して10年、週に5日は外来をしているからさすがに習熟が見られるが、それでもね、あるよ。特に午睡も取れなかった午後診のポテンシャルは低下が著しい。頭の回転は16回転のLP(絶対分からんな、この比喩は)さながらで、苦労して回すから疲労困憊である。

今日の外来は冬モードでやたら混み、午後2時に終わって往診、来客がありそのまま午後診へ。8時に終わって業務連絡をし、9時過ぎに本部を出るとシャワーを浴びて寝たいという気持ちだけだが、勿論そういうわけにはいかない。

そんな時、僕は「タオ」を読む。この加島祥造氏が大胆に口語訳された老子全81章は、引越し数回の洗礼を受けても生き残った数冊の本の中の1冊である。

「まっ、そう肩に力入れんなよ、気楽に気楽に」2500年前の賢者が僕にそう語りかける。僕は何も言えず眠りにつこうと横たわるのだ。

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ジェノマーカー・フォーラム2008

ここしばらく用意にかかりきりだったGアンドGサイエンス社の講演のため休診して東京に行く。これからオープンする新しいクリニックの遺伝子検査の位置がはっきりした。考えを整理する意味で引き受けてよかったな。

大学病院時代、学会とかでよく泊まった「東京ガーデンパレス」が会場でとても懐かしい。少し早く着いたので一人でレストランでランチをとる。学会発表前に一人でランチをとったのはアメリカ心臓病学会のニューオリンズってのがあったな。発表は僕だけだったので一人でアメリカに行って、一人で会場までてくてく歩いて、ランチを食べてポスター発表が終わったらまたてくてくホテルまで歩いて帰った。後の時間は別の大学の友人と遊びに行ってたっけ。なんとなく思い出していたら時間になった。

発表は自分としても結構納得のいく内容だったのでうまく喋れた。恐るべきこと心拍数は微動だにせず、全くあがらなかった。まあこういうこともある。お世辞だろうがなかなか良かったとお褒めの言葉も何人かの方にいただいたのでまあ来た甲斐があったよ。

他の演者の方々とお知り合いになる。歯科医のY氏。四国の坂出で先鋭的なデンタルクリニックをされているが、実直、誠実なお人柄で、一緒に来られていた奥様の出身校が僕の友人と同じということもあり気安くなってお互いのクリニックを訪問することになる。僕の歯も診ていただこうと思う。

26歳のWさん。東大ヒトゲノム解析センター特任研究員である。もともと京都の方で関西の特質についてGアンドG社のT氏とともに盛り上がる。最近の若い女性系でなく研究者という感じがする。資料を送りする約束をする。

K教授。抗加齢医学界の重鎮で、いわゆるアンチ・エイジング・クリニックのパイオニアである。端正なハンサムでプログラムに載せる写真を主催者がリクエストしたら何枚か送られてきて、あうのを使ってくださいということだったそうです(裏情報)。慣れてるねー。僕なんかサルが笑ってるような写真である(ヘルシーパスのT社長は「先生のイメージにぴったりですよね、いい写真です」とのことであった)。少しお話したが、いま進めようとしている予防医学の領域を何とかしっかりしたものにしたいという強い意欲を感じた。またお世話になることがあるかもしれない。アンチ・エイジング界の一方のスターたるオーラありです。

会場を出て次へ向かうタクシーの中で、東京の夜をオープンで飛ばすユーノス・ロードスターを発見。ボンヤリみているとなんと助手席にいるのはさっきまで一緒だったK教授ではないか!慣れている。うーむ、研究だけでなく実践派ね。そうでなくっちゃ詰まんないです。

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秋深し 隣は何をする人ぞ

開業医というのは患者さんを診断し、治療し、フォローするというシンプルなものだと考えていた。それだけじゃ詰まんないなと思って介護とか予防医学とか、患者さんのためでもあるし、僕自身の興味のある領域(本来目新しいものが好きなのである。でもそういった人間が世の中を進歩させてきたのはほんとらしい)を自分の仕事として発展させて今までやってきたのだが、時にトゥーマッチかいなぁと思ったりするときもある。

移転を来週に控えて法人本部の忙しさも強烈である。本当に一時に2本も3本も電話が数人に掛かってくる状況が何ヶ月も続いているのである。外来を終えてライフラインの午睡をとろうと思ってもとてもそんな気にはなれない。わるいなぁー、ごめんねと思い、朦朧とした頭で自分の仕事をしても能率は上がらんなぁー。

今日は休みであるが、まっ、仕事を抱えてウジウジと過ごす。外に出ると夏のような青空が広がっている。一句詠む。

「正面に ただ澄み渡る 秋と空」・・・冴えんなぁ。

ジョン・コルトレーンを聴く。昔コルトレーンは好きじゃなかった。生真面目すぎると感じていて、豪放なソニー・ロリンズとか、お茶目なデクスター・ゴードンとかが贔屓だった。しかし!此の頃コルトレーンはずばり心の中に食い込んでくるのである。「至上の愛」のジャケットに写る、あの生真面目な表情で。

年齢を経ると音楽も映画も、昔とは違ったものが見えてくることがある。感動のポイントが変わってくるのである。それを単に成長と言い切っていいのか、それはわからん。

しかし、昔より、生真面目さ、ひたむきさ、誠実さ、といったものに重きを置くようになったのは、たとえそれが退屈で融通が利かないように思えたとしても、絶対確かだな。・・・まぁやっと人並みか。

「思いやる 心の薄さ 気づく秋」・・・すいません。

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