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食わず嫌い

時々読むコジャレた雑誌「T  JAPAN」の編集後記タイトルが「Exploring Disinterest」だった。

おっとー、なかなか洒落とるじゃないの。「興味のない世界への探検」って感じでしょうか。この編集長はキャンプに全く興味がなかったが仕事上止むを得ず付き合うことになり、思いがけず大変楽しかったので、興味がないからという理由で断ることはよくないと自戒しているのである。そのご友人は「全く興味のないイベントに1ヵ月に1度は参加することを自分に課していて、それを修行と呼んでいる」とのこと。

太宰治はあまり気が合わない友人と好んで付き合うようにしていたという話を読んだことがある。何のために?と思うが色々得ることも多いであろうとも察する。ほんまに修行やぁ。気の合わない人はともかく、あまり馴染みのない人々との会合は努めて出た方が得ることも多いと自分では思う。慣れた環境は快適であるが進歩はない。人間は基本的に安全を望むようにできていて、同じことをしているのが一番安全であるが、しかしこれでは錆び付くだけである。

人間どうしはハードルが高いが、イベントとか趣味であまり接点のない領域に触れるのは悪くないぞ。

車の中で聴く音楽は嬉し恥ずかし70〜80年代ロックとかジャズとかだいたいお馴染みのものが多いのだが、この頃時々FM802に合わせる。最近の曲はどの曲もおんなじに聴こえるわいと思っていたのだが、そうでもないぞ。結構いい。気分も若くなってくる(ような気がする)。

キップ・ハンラハンという(多分ほとんどの人が知らない、Wikipediaでも英語版しかない(泣))ミュージシャンが作る音楽が肌に合い、ちょっととっつきにくいけど彼の音楽を好きでいる間はボケたりしないだろうとここで書いたことがある。でも耳になじんだ音楽、好きだった曲は大概ずっと好きだ。それよりも新しい音楽、若い人の曲を聴くほうが脳のトレーニングになるのではないかな。ホンマに修行や!と言いたくなる曲もあるけど。

あっ、いいです、と断る人も多いけど、NOと言わない私、すべてまずは経験、やってみなくてはわからない。食わず嫌いはやめて、たとえ興味はなくても種々の未経験の領域を探検しようではないか。案外すごく好きになることも稀ではないんだから。

 

不快と快

「高齢者には筋トレと音楽が必要だ!」とおっちゃんは言った。

彼は70歳代前半でありながらトライアスロンとギターが趣味というなかなかいけてる高齢者です。このチョイスは悪くない、というかとてもいいんじゃない。

高齢者にとって認知症と骨粗鬆症とがんの予防が最優先(by 白澤卓二先生)なのだが、筋トレはこのすべてにとって有効なポテンシャルがある。筋肉と血糖値を制する者がエイジングを制す(by 池岡清光)のですが、筋トレには単に筋肉量を増やす、筋力を増す、骨を強くするといった整形外科的優越性だけでなくメンタルに効くというあまりない特性があるのです。弱ったときには筋トレよー。ぐっと前向きに顔が上がるでー。

加えて、筋トレはつらい。楽しいから毎日やろっ!というものではなく、始めるまで結構自分を鼓舞しないとあかんと思うのですが、このちょっと辛い、少しイヤねーということをやり続けることこそ若さの秘訣と私は思うのです。

「ホルミシス効果」というのがあって、もとは極少量の放射線は健康に有益な作用があるということから注目されたのですが、頑張れば克服可能なストレスは能力を上げる!楽過ぎは能力を落とす、きつ過ぎはやめちゃうということで、これぞアンチエイジングのキモと多くの先生も言ってますね。毎日が日曜日だとボケるわけで、通勤とか仕事とか、そういうのもやる意味があるわけです。運動の効果も一部はホルミシスだとされている。

で音楽ですが、3年前に認知機能が低下すると和音が心に引き起こす感情の変化が分かりにくくなるというのを日本抗加齢医学会総会で発表しました。認知症の方を診ていると、心の喜びとか快楽とかがほとんど感じられていないように思われる。つらいことです。ロックミュージックを聴くとワクワクできるうちは自分でも大丈夫(前衛ジャズを聴いてワクワクできているうちは特に!)と思うけど、音楽を愛し続けること、これも若さの秘訣だと思います。演奏できればもっといい。

でおっちゃんの言葉のポイントは、このちょこっと辛いこと、快楽の組み合わせです。どっちか一つだけではだめで、不快と快を繰り返す。この変化が老化を防ぐ。ワンパターンはよろしくない。

筋トレと音楽以外の組み合わせもオッケーですが、今のところ個人的にはこれがベスト。でも皆さんも考えてみてね。野菜とステーキってのはだめよ(ってそうでもないか)。

心のステッカー

最近のグッドニュース。

アマゾン創始者のジェフ・ベゾス氏が設立した民間宇宙開発企業ブルーオリジンが今月行う同社初の有人宇宙飛行に、ベゾス氏とともに女性パイロットの草分けウォリー・ファンクさん82歳が搭乗することになった。

ファンクさんは1960年に女性として宇宙飛行士の訓練を受けた13人の一人。ベゾス氏とともに喜ぶ写真を見よ。元気だ。素敵である。

宇宙飛行士を目指そうという人だからもともとのパーツは優秀にしても、日本人男性の平均寿命(81.4歳)で宇宙に出ようという気概、そして十分な準備ができる体力気力はどこから来るのだろう。

彼女はたぶん自分の暦年齢は無視しているに違いない。自分で感じている年齢で判断しているのだ。

社会心理学の有名な実験にエレン・ランガー博士が1979年に行った「時間を巻き戻す」というものがある。75歳の男性グループに1週間合宿を行ったのだが、20年前の服を着てもらい、生活様式をそのまま実行できるように宿舎の中はその時代のものだけで装飾され、テレビ、ラジオもそのころの番組だけ、新聞も同様で、配られた身分証明書もそのころの写真が入っていた。合宿生活の間20年前の話題しか話さないように促され、過去に戻った自分、55歳の自分として1週間暮らしたのである。

体力、認知能力などのテストを事前に受けていたのだが、1週間の合宿後、予想通りすべてが改善していた。なんと視力さえも良くなり外観も平均3歳ほど若返った。

人が自分自身をどうとらえるかが、老化の肉体的プロセスに直接影響するという素晴らしい結果だ。心の状態が現実に及ぼす力がいかに大きいかわかる。暦年齢より人が自分自身を何歳ぐらいと感じているかが実際の健康状態を反映するという別の学術報告もある。

マインドセット、心の状態が肉体に影響すること、「病は気から」は科学的に認識されつつあり、精神神経内分泌免疫学として日々新たな発見がなされている。個人的に大変興味ある分野である。マインドフルネスの有効性もこの方面から研究されている。

村上春樹氏のトライアスロンに使用する自転車には「18 till I die(死ぬまで18)」とステッカーが貼ってあるというのを彼のエッセイで読んだ。

みんな好きな数字をいれて、心にステッカーを張っておこう。

認知症と大気汚染


診察室においてある空気汚染計測器は、窓辺だといつもGOODの緑ランプだけど今日は危険な赤

 

今日は黄砂がひどい。僕は鈍感で何も感じないが、周りには鼻水や咽頭痛などを訴えるセンシティブな人が複数いる。

大気汚染、PM2.5(粒子径が2.5μm以下のもの)が認知症の危険因子として最近注目されている。ランセットというハイレベルな医学ジャーナルが昨年12の認知症リスクファクターを発表した(Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission – The Lancet)。3年前には明らかでなかった新たな3つの因子が加わり、その一つが大気汚染(他は頭部外傷と過度の飲酒。ドキッとした?)。JAMAというこれまたハイレベルな医学ジャーナルが昨年、居住地PM2.5の程度と認知症の方の脳内アミロイドβ蓄積度が相関すると報告した(JAMA Neurol 2021;78:197-207)。

PM2.5がどのように認知症を起こすのか?

PM2.5は肺胞内に達した後、肺胞内上皮に取り込まれたりマクロファージに貪食されたりして免疫系を刺激し全身に炎症反応を起こす。それに加えて鼻腔から臭神経を介して能動的に臭球から脳内へ、また受動的拡散で脳脊髄液内に入り最終的に脳の炎症を引き起こす。そしてアミロイドβの蓄積を増悪させる。鼻腔ルートを使用する脳への到達方法としてインスリンを鼻腔吸入して脳の糖代謝を手助けし認知症を治療する試みがあった。残念ながらいい結果は得られなかったけど。アロマセラピーとか、やったことないけどコカインの吸入も鼻からというのは脳への直接作用を期待してのことだ。

PM2.5 の認知機能への悪影響を証明した大規模スタディが集積され、ランセットによれば大気汚染を回避すれば全認知症の2%は減らすことができる。この2%は運動不足と同じ程度で、糖尿病が1%だから侮れない影響力だ。黄砂径は4μmが主だがそれ以下の大きさのものも含むので用心するにこしたことはない。

不織布マスクは残念ながら網目が5μmでPM2.5の防御は難しいが2重にすればましかも。また血中ω3濃度が高ければPM2.5による脳萎縮程度は軽減されるようだ(Neurology 2020;95:e995-e1007)。EPA、DHA! やはり青魚はいろんなところでいい働きをする。

自分のいる地域での大気汚染程度は環境省や民間団体のサイト(https://aqicn.org/map/japan/jp/)でもほぼリアルタイムで知ることができる。あまりひどいと外出をひかえるのがベターか。

PM2.5も花粉症と同じように積極的な防御策をとるべきかと思うね。

アルツハイマー征服

今日の景色。なんと早咲きの桜が。桜咲く。

 

7か月ぶりのブログ更新である。なにしてたん?

コロナっすよ。

未曾有の事態にどう立ち向かうか、なんやかんや気持ちも急いて、全く失念しておりました。情報発信が大事だとは思うけど、このブログはきわめて個人的、時流、世間に関係なく自分の関心だけを書くという方針を決めていたので(コロナのことなんかあらゆる情報が溢れている)、ちょっとここまで行きつかなかったということだ。

というと再開は少し落ち着いたからかな?

そう、COVID-19の全体像、対処法が見えてきたから。気持ちの上で以前の生活が自然に戻ってきつつあるのかもしれん。もちろん緊急事態宣言中であり、本当に大変な状況の真っただ中という方も多数おられるのも承知してます。

で最近読了した本のこと。

この頃一気読みというのはあまり無くなってきたのだが、こいつは3時間ほどで一気読みしてしまった。その本は「アルツハイマー征服」。あまりいけてないタイトルやなー。下山進さんというノンフィクションライターが2002年からアルツハイマー病のノンフィクションを書こうと資料を集められたのだが、治療法を含め全く先の見えない状況のため断念。しかし2018年になって様々な変化があり、今までの経緯をまとめると興味深い本になるかもしれないと再開されて日の目を見たもの。医学的検証には東大の岩坪威先生が当たられ、似非医学本でなくきちんとしているのが読んでいてわかる。僕も存じ上げている諸先生も実名で登場され、こんなことをされてたんやーと感銘を受ける。

アリセプトというアルツハイマー病の進行を遅らせるメジャーな薬の開発話から始まるが、その経緯は何というか波乱万丈、半沢直樹のよう。リアリー?と言いたくなるが実話のようです。そしてこの本のテーマであるモノクローナル抗体を使った治療薬アデュカヌマブについて。これは今4種ある、進行を遅らせるというタイプの薬でなく根本を治療する、つまりアルツハイマー病の病因と考えられているアミロイドβを減少させ認知機能を回復させる可能性のある薬剤。アメリカの臨床試験で有効な結果となりFDA(アメリカ食品医薬本局)の承認待ちという状況だが、今までのアルツハイマー病治療を大きく転換させるポテンシャルをもつ。日本でもすでに承認申請が出されている。薬剤開発や治験までの経緯、日本のかかわり方(ちょっとなんでも遅すぎるで!)など興味深い話が満載で、本当に目からうろこであった。

いまオリンピックの森さん辞任の件がきっかけで、ジェンダーについての話題が多くなっているが(ちなみに3月7日に抗加齢医学会主催で僕が提案して司会をさせていただく医学的見地からのジェンダー、性差についての講演会が遠隔であります)、抗認知症薬の開発、承認に至るまでの女性の活躍ぶりは素晴らしい。アリセプトはエーザイアメリカのシャロンロジャースさんがいなければ世に出なかった。仕事がすべて終わり、資料を全部トラックに積み終わって仲間5人でトラックの前で撮った写真なんか泣ける。男性も個性的な人物が多々登場して、この人物模様が何といってもこの本の最大の魅力!ヒューマンドラマです。

認知症にたいして僕はコウノメソッドを軸として治療をしているが、一時コウノメソッドはアリセプトに対してアンチの姿勢をとっている時期があり、僕自身もあまり使用していなかった。しかし開発話を読んでいると、薬に対しての印象も少し変わった。外側の人の意見だけでなく内側からの意見も聞かなくてはならない。

この本のエピローグのタイトルは「今は希望がある」です。

3月7日のFDAの承認結果がオッケーだと大きく世界が動く。期待したいな。

個人的ニューノーマル

いまやコロナ抜きでは何も考えられない。

約4か月前、コロナの影がぼんやりと薄日の中で見えていた頃に最後のブログを書いてから、なんと世界は変わったであろうか。一寸先は闇。世の中何があってもおかしくないとは前から時々言っていたけど、実際になるとは思わんかったわ。

三密、ソーシャルディスタンス、ウイズコロナ、アフターコロナ、コロナ鬱、コロナ離婚、オールドノーマル、ニューノーマル、色々な言葉が日常になった。

身体的にも経済的にもコロナ禍に巻き込まれた方は本当にお気の毒であるが、これがきっかけで新しいライフスタイルに踏み込むことになり人生がいい方向に変わった方もいるかもしれん。

僕の生活において診療におけるコロナの影響はもちろん多大なものがあるが、個人的にはハードなことばかりではない。

 

自分のための時間が深化した。

 

今まで月に一二度は学会や研究会とかで東京に行くことが普通だった。⇒ 行かんでもいけるやん。

ちょっとした講義とかで、ある単元について勉強せなあかんと強迫観念がありその種のものばかり読んでいた。⇒ 小説はやっぱりよろしいね。

考える余裕なくルーチンとして筋トレとか決まったものだけを繰り返していた。⇒ やり方、方法もこの世には色々あると視野が広がった。興味の対象が増えた、増える余裕が出来た、と。

 

コロナ禍はどっちかいうと仕事(らしきもの)に追われていた生活から、やりたいことをやれる余裕のある生活に変わったっていう感じ。これは悪くない、うん、相当悪くないと思う。

コロナはまだまだどうなるかわからないけど、少し落ち着いた感のある今日この頃、オールドノーマルな生活の芽が再出芽してきたと感じるところもある。

繰り返す? いやいや、転んでもただでは起きないように、災い転じて福となすように、慎重にいこう。コロナ禍は世界の進歩を前倒しした。個人的にも後戻りはできません。

 

 

おっさんジャズボーカリスト

ジャズボーカルが好きである。特に男性の。

ジャズボーカルというと大体女性で、特に日本なんかでは誰でも知ってるスタンダードばっかり唄ってる感じで(著作権とか関係あるのかな)つまらない。好きなのはフレッシュなロックミュージックをアレンジしたのとかすごくマイナーな曲を抑えてアレンジで歌ってるオッサンだけどなかなかそういうのには出会えない。

ところがね、アプリでアメリカのFMを聴けるのを教えていただいて、そこで知ったJAZZ24 という局がやばい。シアトルの地方局だけど寄付で成り立ってて24時間コマーシャル無し。そしてなんでなんでそんなに僕の好み知ってんの?というくらいグレーーートな選曲で、ボーカルを5曲に1曲はいれるのである。これが信じられないくらいどれもカッコいい。

アメリカは広い。こんな素敵な唄がいっぱいあって、そしてそれを見つけてこれるってのはすごいなー。そしてここで聴けるオッサンボーカルが渋い。なんで僕が男性ジャズボーカルが好きなのか考えてみると、きっとこいつはいろんな経験してるよねーという個人史(多分色気のある)を感じさせるからである。センスいいし知的だし面白い話聞けるよなー、きっと、と思わせる深さを感じるからで、こういうのはロックボーカリストからはあまり感じたことない。そういう男になりたいという願望があるんでしょうかねぇ。

こういう人は安定化を望まないでしょうね、多分。Sporting life という言葉があって賭博ばかりしている悦楽人生ということのようですが、そういう感じ。実際は結構着実な人が多いでしょうが(でないとビジネスとしてやっていけないよね)、最近若い人がよく言う「早く落ち着きたい」「まったりしたい」とかいう世迷言とは対極で、私もこれを支持するものであります。

不安定、中腰で踏ん張る、新しい面白そうなことにはとりあえず手を出してみる、失敗じゃなく成功するための貴重な経験を得た、「すれ違いのないドラマが面白いか?ワサビ抜きのすしがうまいか?」ということであります。わかる?

誕生日を迎え、「四捨五入すると70ですね」という悪友の意地悪な言葉も意に介さずこれからの方針を述べさせていただきました、ハイ。

P.S. 「CBDオイルって何よ?弐の巻」は3月にある関連学会に参加してフレッシュな話を書こうと 思ってたんですが、学会が中止となりました。勉強してネタを仕入れてからまた書きます。ごめんなさいね。

CBDオイルって何よ? 壱の巻

「いやー、年が明けてから忙しかったなぁ。光陰矢の如し。かわいい少年老い易く学成り難しだな。気がつけば2月じゃないの」

「ブログも気がつけば昨年末より書いてませんね」

「ったく。自分でもびっくりした。浦島太郎状態。気が付けばじじい」

「でも最近なにか考えてません?時々クリニックに怪しげな油が配達されてますけど」

「ああ、あれね。あれはCBDオイル」

「しーびーでぃ?」

「CBDというのは正式にはカンナビジオールと言ってマリファナの一成分ね。」

「マリファナ!? やめてくださいよ!クリニックにパトカーが横付けされるは避けましょう。先生は大阪府警の産業医ですけど無理なんじゃ?」

「当たり前。CBDは日本でも合法で、アマゾンなんかじゃびっくりするくらい売ってるよ。質がいいかどうかはかなり疑問だけど」

「合法?何のために使うんです?」

「これはいろいろあって、アメリカでは小児のてんかん治療薬としてFDA(厚生労働省みたいなもん)も認可してる。慢性痛、多発性硬化症、線維筋痛症などにも有効というちゃんとした学術論文があるし認知症や統合失調症にも効果がある可能性がある。他にもいっぱいあるぞ。そもそもマリファナには嗜好用というか快楽をもたらすTHCという物質が多く含まれているんだけど、次に多い成分がCBDだ。CBDオイルはTHCを含まない。マリファナには60種以上の成分が含まれているんだけどその配合によりタバコやアルコールより害が少ないということで、医療用のみや全面解禁とかいろいろな程度でアメリカでは25の州で解禁されている。ヨーロッパでも同様、いろいろなパターンでオランダ、イギリス、スペイン、フランス、ポルトガルなどで罪にはならなくなっているみたいね」

「うーん、でもなぁ」

「よく知るとマリファナ、大麻はかなり複雑な経過をたどって現在のちょっと怪しいというポジションにあるんだけど、もともと日本では「偉大な麻」の意で、今でも下駄の鼻緒とか相撲取りの化粧まわしに使ってるし、種は七味唐辛子に入ってるな。日本と中国ではなじみ深い植物。薬品はもともと植物から作られているものが多いから、ひょっとするとひょっとするかも」

「・・・先生は何に使ってるんです?」

「CBDは痛みとかストレス緩和で癌患者に用いるケースがよくある。うちの患者さんでもそれでお使いになっているケースがある。僕が気になりだしたのは、某国の某大使館で職員がストレス緩和にみんな使ってると当の某職員さんからいただいてから。これは自分でも本当か今でもよくわからないんだけど、それを使って数分後から始めた筋トレで、今までと全く違って筋疲労がほとんど起こらずウエイトの記録を作ったこと。なんじゃこれは!」

「ほんとですかぁ?」

「わからん。トレーナーに確認しても今までと同じ重量だというし、自分でも信じられなかった。で以後継続的に使用してみるとアンガーコントロールというか、トラブル時の精神安定がとても上手になった。これは確かね」

「ふーん、あまり悟ったようにも見えませんけど。しかし継続されてるってことは何か感じるものがあるんでしょうね」

「そうだなぁ・・・(以下次号に続く)」

 

 

脱ペットライフ

当院で物忘れ外来をはじめて5年以上たつ。元々循環器専門として内科医をやってきたのだが、認知症という、このいまだ解決策の見いだせない難物に魅入られて今では男性更年期外来とならぶ当院専門外来ツートップの一つである。

認知症にならないためにはどうすればいいでしょうか? これは多くの方が最も興味を持っている問題だ。現在認知症に有効な薬剤はない。壮年、若年の時から予防できないか?何をすればいいか? 簡単だ。脱ペットライフである。

ペットを飼わない、ではない。ペットにならない、のである。食事の準備や家の片づけや何でもかんでも何方かにやっていただいて後はテレビと寝ているだけのペットのような生活、これにあこがれられている輩もおられるようだが、これは認知症への最速到達法である。言い換えるとトラブルの無い平板な生活である。

気を配らない、腰が重い、新規なことに取り掛かるのが面倒で同じ繰り返しを好む、とか色々あるが、こういうのをあきらめて頑張らざるを得なくなるのは小さなトラブルを解決するときである。大問題は時に精神を消耗させ鬱や認知症のきっかけになり得るが、小トラブル(人生はこれの繰り返しともいえる)を避ける生活を続けているとペットのように自立して生きられなくなるぞ。ウエルカム、小トラブル! バイバイ繰り返しの生活! 小トラブルは生活の句読点で歓迎すべきもの。

ホルミーシスという単語がある。元々は放射線が高線量では有害だが低線量では体にいい効果をもたらすという意の言葉であるが、そこから派生して、適度なストレスは返って抵抗力を増し能力を向上させるという意味で使う。 アンチエイジングの要はこいつであると僕は思う。

大事なポイントは嫌々やらないこと。楽しむ。こいつは心がけ次第でほとんどのことはそう考えることが出来る。ゲームで敵を倒してアイテムを手に入れる、パワーアップするという感覚ね。小トラブルを自分から求めていると案外シンプルに解決する。

安楽を求めペットのような生活は結果的には不幸を招くぞ。小トラブルは三度の飯より好き、とこういきたい。 脱ペットライフ! ワイルドサイドを歩け!

と叫び、2019年最後の「ゴキゲンジャーナル」の筆をおくものであります。

皆さま、良いお年を。

 

コーヒールンバ

コーヒーとの付き合いは長い。高校生の頃に手でハンドルをぐるぐる回す小さなコーヒーミルで豆を挽いて日常的にコーヒーを飲んでいた記憶がある。なんでそれをやりだしたか定かでない。両親ともそれほどコーヒー好きでなかったし。でもとりあえずその頃からコーヒー中毒。

20代30代の頃は1日5,6杯飲んでいた。働いていた大学の医局にネパールからの留学生がいて(王族の血筋を引くとても上品なデュンゲルさん)、彼も僕同様コーヒー中毒だったのだが、ある日を境にぷっつりと飲まなくなった。

僕は朝一番早く医局に行ってコーヒーメーカーで大量のコーヒーを作り置くのが日課だったのだが、そこにデュンゲルさんがやってきて急須に緑茶の茶葉を入れ始めた。

「どうしたん、デュンゲルさん?コーヒーやめたの?」「はい。ニューイングランドジャーナルに膵臓癌のリスクを増すと出ていました。まだ死にたくない(笑)」

その論文は結構有名で僕も知っていたが、それをすぐさま自分の生活に応用する彼の態度に、学問に対する誠実さと育ちの良さを感じ、私は自分の傲慢さを恥じたのであった。

結局反省することもなくコーヒーは飲み続けていたのだが、昨今コーヒーは大腸がんのリスクを下げるとか認知症の予防効果があるとか健康的にいい話ばっかりで、今頃デュンゲルさんもコーヒー飲んでるかなと思ったりもする。

でコーヒーをがぶがぶと飲み続けているわけだが、コーヒーのカフェインは明らかに常飲者のアクテビティをあげ、コーヒーを止めると生産効率が有意に低下するという論文もある。これ以上生産効率を落とすとゼロになるので止めるわけにはいかないわけだが、最近味について気が付いたことが一つ。

コピルアック! これは豆の種類であるが、「かもめ食堂」という映画でドリップする前のコーヒーの粉に指を1本入れてそうささやくとコーヒーがおいしくなるというエピソードがあったと本部のF嬢が教えてくれた。おまじないね。・・・そんなわけがぁ・・・・うまいやないか!!

クリニックでコーヒーを作るとき、時間が無いこともあり、お湯をダッダと注いで落ちたコーヒーをぐわっと飲む(野蛮だなぁ)。コピルアック方式では指で凹んだ部分をなんとなく見ながらゆっくりお湯を注ぎ、いったん蒸らす。その後も動作がゆっくりとなり優雅にお湯を注ぐ。結果的にコーヒーの味が全然違うのである。

味を決めるのはお湯の注ぎ方である。その他いっぱいあるだろうが少なくともすぐさま改善可能な方法はこれであった。そんなこと常識って?ゴメンね、不覚であった。それまで自動掃除機のルンバのように僕はオートマチックにやっていただけで心がこもっていなかったのである。

ほかにも同じようなことありそうだなぁ(泣)。