皆さん、お久しぶりです。生きてました。
リニューアルしたホームページをチェックしていて愕然とした。院長の連載コラムと銘打っておきながら全然書いてないじゃないか!!!何してんねん!・・・いやー、判ってましたよ。書かなあかんなぁと思いながらも光陰矢のごとし。たらたらと生きているうちに時間だけが過ぎていきました。とても反省してます。
反省したところに読むぴったりの文献があった。医者は経験が多いほど有能なのか?
Systematic Review: The Relationship between Clinical Experience and Quality of Health Care。Annals of Internal Medicineという信頼できるアメリカの内科雑誌に、臨床経験・年齢に関する医学知識とケアの質に関連する論文のシステミック・レビューが載っている。システミック・レビューとはそれに関する多くの論文を集め検証したもの。多くの論文だから当然結果が違うものも含まれるが大方結論は一致していて・・・・・・・臨床経験が長くなった医師は質の低いケアを供給するリスクがある。故にこれらの医師は質向上のための介入が必要。つまり勉強しなくてはいけない。知識量は若いほど多く、診断、治療のスタンダードへの遵守性も高いというデータもあり。
ぐすん。もう若くない俺としてはうなだれて聞くしかないなぁ。もちろん全面的に同意するわけではなく個人差、集団差がかなりあるけどね。でもある集団においてはその傾向はあるかも知れぬ。それは日本の開業医である(勿論ながくされていて経験豊富ですごく優秀な医者はごまんといるよ)。
僕は10年前に開業したが、大学病院にいた時と比べて医学的情報量の違いを埋めるにはかなりの努力が必要と感じた。大学なんてボーと医局にいるだけで先輩やら学会やらで情報がいやでも耳に入るようになっている。そしてライバル意識というか競争があるもんな。勉強するしそのための大学だ。しかし開業医はワンマンバンドである。孤独なのよー。最終決定は全部自分。相談に乗ってくれる上役、同僚がいないわけではないが、昼飯時に「ちょっとさー」というわけにはいかない。完全に個人の医療にたいする努力、熱情、責任感で差が出るのだ。で、年をとってもそれを維持していくのは結構難しかったりする。またやる気のある医者ほど患者さんも増え本業が忙しくなるとともに雑用もどんどん増えてくる(普遍的法則、仕事は忙しいやつに頼め)。やることは多い、勉強時間は取れない、苦しいー。あっ、別に俺のことを言っているわけじゃないよ。
医療は日進月歩である。これは真実だ。昨日正しかったことが今日はやっちゃいけないなんて信じられないこともあったりして、アップトゥーデイトな情報を仕入れることは必須。医学雑誌だけでなく、最近はインターネットやメーリングリストがそれに大きく貢献しているのだが、年齢によって利用頻度が異なるのは致し方ない。そんなこれやで臨床経験、年齢だけではだめという結論が出るのだろう。
しかし医者にとって臨床経験は財産というのも確かである。自分でも週に1回か2回しか外来をしていなかった専門馬鹿寸前の大学の時と比べ、何でも診なくてはならない開業医となって臨床能力が向上したところは多々あり。複数の医者が外来をしている病院では、多くの患者さんを外来で診ている先生のほうが、そうでない医者に比べやはり臨床センスは上回っていることが多い。患者さんが治る→評判で患者さんが増える→臨床経験が増え診断精度が上がる→患者さんが治る、といういい連鎖が形成される。そこで忙しさに流されないで勉強時間を作って研鑽進歩できる医者が残るんだろうなー。経験だけでいくと必ず行き詰まる。新しいことを勉強していく努力、熱情、責任感。それの維持がみんなも自分も救うのだ。
ロシアのボリショイバレーで活躍する日本人ダンサー(この人の業績は大リーグにおけるイチローに匹敵するかそれ以上らしい)、岩田守弘の言葉。「世界中の35歳の中で僕ほど努力したものはいないと胸を張って言えるんだ」。 頭を垂れる私・・・
「とりあえず自分に課するものとして週1で更新しようと思う(小声)。」