月別アーカイブ: 2007年8月

今そこにある危機

 まずい!と思ったときはもう遅い。針刺し事故をやってしまった。新しい患者さんの往診をして採血し、処理を診療所でしていた時に自分の単純なミスで針先が腕に刺さってしまった。新しい患者さんなので情報が乏しいが、手術をしたときに輸血後発熱し肝炎と診断されたとか言っていたな、なんでまた、と天を仰ぐ。

 刺した部位の血液を搾り取るようにし、症状から考えたらB型だな、としたら僕はワクチンをうっているから大丈夫な可能性が高いがかなり前だしなー、抗体価は落ちているに違いない。一応ワクチンの追加摂取をすべく手配する。

 C型肝炎の場合は打つ手がない。運を天に任せるのみである。針刺し事故でC型肝炎が感染する率はB型と比べ低いがゼロではない。経過を追わなければならないが、インターフェロンかぁとかなり暗くなる。

 とりあえず患者さんが本当に肝炎に感染しているかが問題である。勘違いしていることも多い。採血の結果を検査メーカーに聞くことになっているが数時間かかる。時計の進むのが遅い。なんでやるかなぁと自分にうんざりする。軽率で慎重さの欠ける欠点を直せというお告げか。チクッときたときは本当に何か邪悪な小動物に噛まれたような気がした。

 電話する。「ちょっとお待ちください」。割と無機的な対応。・・・・「そうですか、マイナスですか」・・・やったぁー!俺は運が強い。とりあえずセーフ。しかしここから教訓を導き出さなくてはならない。危機は今、すぐ其処に、ある。多分感染以外にも。ガードがゆるい俺としては、脇を固めよという神様のイエローカードのような気がする。わかった。喉元過ぎれば・・という諺がチラッと頭をかすめたが今度はちゃんと覚えておこう。

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Watch out!!

Mさん

 今日、Mさんが診療所を訪ねてくれた。彼とはもう20年くらい会っていなかっただろうか。僕が大学病院勤務をしていた時代、彼は日本を代表する製薬会社のMRだったのだが、かなり長きに渡って仕事は勿論、遊びもよく付き合ってくれた。今では本社の人事部長であり出世頭である。

 死ぬ間際に神様が人生をリピートさせてくれるとしたらどの時代、10年を選ぶか?僕にとって25歳から35歳の研修医から助手の時代が2番目だ、間違いなく。1番目は明日からの10年だよ、なんてね。

 その輝かしきもやんちゃな2番目のDecadeを一緒に付き合ってくれたのがMさんで、開業して会う機会がなくなってからも賀状交換やメールを戴いたりしていた。そういった時代を一緒に遊んだ人というのは今でも付き合いが多い。彼も久しぶりに会ったのだが全然流れた月日を感じなかった。

 「Mさん、かわってないねぇ!」と僕は言ったのだが、勿論20年前と外観は同じではない。でもその頃と変わらない上品でお茶目な感じ、性格の素直でまっすぐなところはまんまで、バックボーンが変わらないと外観も同じに見える。仕事で磨かれたある種の落ち着きが風格である。

 昔くれた葉書に彼のスカイ・ダイビング中の写真が貼ってあって、元気でやってんだなーと思ったりしたものだが、彼によればその頃仕事のストレス満載で、どうしても仕事を続けられなくなり休暇をとって1人でグアムに行ってピストルを撃ったりしたその時のものですとのこと。かように彼は苦労を見せない。今も仕事は大変だろうと思うのだが楽しく遊びの約束をして去って行った。仕事の話もちゃんとして。

 古い友達と会うとしばらくは元気でいられる。また会おうね。趣味は散歩なんて枯れたことは言わず、お互い往生際の悪いジジイでいましょうよ、Mさん。

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ハッハッハッ!

 
 

逆噴射の夜に聴くものは…

 今日は暑かったですねー、死にました。実はゴルフに行ったのですが、新しいドライバーのデビューだったのですね。これがまた練習場ではタイガー・ウッズ!これよー、ゴルフって道具だったのね、うっふ、楽しみー、だったのですが・・・

 まあともかく死にました。全く爆発しないどころか逆噴射!他のクラブまで不発になってきて、いったい私は何をしているのでしょう?ここはどこ?わたしはだあれ?と言いながらも次回の約束だけは自動的にしてしまう悲しい性です・・・

 さすがにソファに倒れこみ、ゴルフよりもゲートボールに鞍替えした方が・・・などと考えていたのですが(ウソ)、ともかく気分をアップさせるためにいかした音楽を聴きましょう。

 隠し玉です・・・セルジオ・メンデス アンド ブラジル66。「ルック・アラウンド」。これは僕が高校生の時に彼らが来日し、両親が何を間違ってかLPを購入、結局僕だけが聴いていたのですが、その頃からなんとクールでかっこいいのだと思っていました。が、CDで買いなおして今聞いても全く印象は同じ。クーーール!切ない、かっこいい!ジャケットもメンバーが日本の色とりどりの日傘みたいなものをさして野外で撮ったようなイージーな感じなのですが、なんかいい感じなのです。女性ボーカル2人(1人はラニー・ホールでミック・ジャガーの恋人として、奥さんだったけな、有名な人です)がかわいい。友人に聴かしても「いい曲ばっかし」というのがアベレージな評価です。

 バート・バカラックの「ルック・オブ・ラブ」を歌っていますが、いまだこの曲のカバーは彼らが最高です。それ以外にも「トリステーザ」とか「ソー・メニ・スターズ」とか、なんというか涼しげだけど
情熱的な、甘い空気の歌がいっぱいだ。

 聴いていると頭の中が少しクールになってきました。もうゴルフは止めて仕事に専念、というのがクーレストな結論ですが、そこまで人間が出来ておらず、もう少しティーを低くしたらうまくいくに違いない、などとグッド・ミュージックを聴いても愚かさは変わらないようです。

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大人の色気あり

悟りの窓

 忙しいという字は心が亡びると書くのねー・・・いや、時間がなくてブログが更新できませんでした。日記だったらもうこのまま来年まで封印のパターンです。ブログは自分自身の気持ちの整理(どう整理してるんだ?)にもなるので書かないとなんか気になって。やっと余裕が出来ました。

 参院選ですが、まあ当然の結果ですね。しかし民主党は多分候補者の質からいうと自民に負けていたと思うのですが、逆風を利用して沢山とおってしまった。なんか後で問題が出てきそうな気がします。医療行政は最悪の状態なので、なんか間違って違う方向が出てくるよう期待したいですが無駄かな。

 昨日他の病院から紹介されて末期がん(子宮がん)の女性が来院されました。まだ40代の始めですが抗がん剤治療をしても5年生存率が期待できないので、このまま出来れば在宅で緩和治療を受けたいというご希望なのです。ご主人もNASHから肝臓がんを発症され手術をされています。運命を受容されていて静かな雰囲気で、これからの計画をご相談しました。

 医者は診断し治療するだけでいいという時代はとっくに終わっています。これから大事なのは病気になる前の予防医学であり、そしてそれとは対照的に、積極的に治療しない場合どのようにその人をサポートしていくかという緩和医療です。医者でありトレーナーであり、カウンセラーであり司祭である。時々僕は、みんなのいろいろな要求を何とかかなえようと奔走していて、そして俺の心の空白は誰が癒してくれるんだ?とバランスを崩しそうになります。でもまあ回復しているけどね。自分自身をマネージメントできないとほかの方を支えることは出来ません。なんとかやっていくか・・・

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源光庵「悟りの窓」らしい