まずい!と思ったときはもう遅い。針刺し事故をやってしまった。新しい患者さんの往診をして採血し、処理を診療所でしていた時に自分の単純なミスで針先が腕に刺さってしまった。新しい患者さんなので情報が乏しいが、手術をしたときに輸血後発熱し肝炎と診断されたとか言っていたな、なんでまた、と天を仰ぐ。
刺した部位の血液を搾り取るようにし、症状から考えたらB型だな、としたら僕はワクチンをうっているから大丈夫な可能性が高いがかなり前だしなー、抗体価は落ちているに違いない。一応ワクチンの追加摂取をすべく手配する。
C型肝炎の場合は打つ手がない。運を天に任せるのみである。針刺し事故でC型肝炎が感染する率はB型と比べ低いがゼロではない。経過を追わなければならないが、インターフェロンかぁとかなり暗くなる。
とりあえず患者さんが本当に肝炎に感染しているかが問題である。勘違いしていることも多い。採血の結果を検査メーカーに聞くことになっているが数時間かかる。時計の進むのが遅い。なんでやるかなぁと自分にうんざりする。軽率で慎重さの欠ける欠点を直せというお告げか。チクッときたときは本当に何か邪悪な小動物に噛まれたような気がした。
電話する。「ちょっとお待ちください」。割と無機的な対応。・・・・「そうですか、マイナスですか」・・・やったぁー!俺は運が強い。とりあえずセーフ。しかしここから教訓を導き出さなくてはならない。危機は今、すぐ其処に、ある。多分感染以外にも。ガードがゆるい俺としては、脇を固めよという神様のイエローカードのような気がする。わかった。喉元過ぎれば・・という諺がチラッと頭をかすめたが今度はちゃんと覚えておこう。