わたくしのビートルズ

昔から活字中毒である。

高校生のハイブロウな時期に好きだったのが植草甚一氏の「僕は散歩と雑学が好き」。傷がつかないように持ち運びに気を付けるような感じで大事にしていた。頭がやたら固くて融通のきかないダサいやつのことを、ただのスクエア(4角のことだけど堅物を意味する俗語)というよりもファイブ・コーナード・スクエア(5角の4角)と言う、なんてフレッシュな俗語を教えてくれるのがすごく新鮮だった。イカしたやつ=ヒップ、なんてこともここで知った。晶文社の本はよく買っていたね。

その後も好きな本はたくさんあったけど、特にエッセイだと何度読み返したかわからないくらい好きなのは伊丹十三氏の「女たちよ」と景山民夫氏の「普通の生活」かなぁ。間違いなく僕の中のコアな一部だ。

その後小説はともかくエッセイはあまり読まなくなり、Kindleを使うようになってから仕事関係やビジネス書関連が圧倒的に増えて(つまんない)、愛着を持つという感じの本は絶滅していた。しかし小西康陽氏のコラム集「これは恋ではない」を読んだ時、久々に胸が震えた。めっちゃええやん!なにこれ。

彼は今はなきワールドクラスバンド、ピチカートファイブのリーダーでミュージシャンである。彼は書く。「これらの文章を僕は金のために書いた。」「僕がバンドをやってるのは自分の容貌へのコンプレックスのせい」(覚えてるのを書いてるので少し違うかもしれない)。なんというかドライでクールだと思う。で、そう書いているのも本心じゃないかもしれない。彼はすごく面白い体験談をよく書くのだが、ほとんどウソですと別のところで告白したりする。

彼のコラム集第2弾は「僕は散歩と雑学が好きだった」だ。・・・どっかで聞いたことあるな。察するに僕とバックボーンが似ているのかもしれない。大体彼の好きな音楽、本は僕の好みとかなり重なる。だけどこの本は前作と較べてそれほど好きになれなかった。

で、今度3作目の「わたくしのビートルズ」が出ました。どうかって?まだ全部読んでないけど(大体初めからお行儀よく順番に読むタイプの本じゃないのだ)、これはひょっとすると一番いいんじゃない?前作で彼はくも膜下出血で入院した経験を書いていた。無事でよかった。もうそんなことはみじんも書いていないけど、大病の経験はなにかを残すはずだ。ステレオタイプの感想かもしれないけど、なんか前より深み、苦みがあるような・・・。

本を開く。帯が裏表紙に回っているが、そこには「まだ購入を迷っているならば、本のカヴァーを外して見よ!そして今すぐ買いたまえ!」と書いてある。単に手に取ってみただけではわからない。裏表紙を開かないとわからない。見る。うーーーーーーーーーーーーーーーーむ、びっくり。かっこよすぎる・・・。

伊丹氏、景山氏との共通点はあるかな?みんなまがうことなく才人。すごい業績があるが巨匠という言葉は似合わない。一芸ではなくマルチな才能。楽器が出来る。みんなおしゃれ。

女性に対してすごく感受性が高い。はっきりとした好み。

みんな離婚して再婚している。

伊丹、景山両氏は不遇の死を遂げた。3人ともすごく面白い人生を送っているのに底抜けにハッピーという感じがしない。なんかちょっと不幸な影が・・・。気のせいですかね。

3人のような文章を書きたいと思う。そしてできれば3人のような人生を・・・おくりたいような、おくりたくないような。

 

 

 

 

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