ラップと偏見

 昨日は勉強のため「ラップ療法の実際」というDVDを見た。今まで傷の治療は①消毒②ガーゼというのが一般的だったのだが、実はこの2つは治りにくくさせていた可能性がある。傷があると浸出液が出てくるが、この中に創傷治癒に大事な成分が含まれており、消毒とガーゼはそれを損なう。水道水(!)でできるだけ洗って後はラップを貼っているだけで湿潤環境が保持され治癒機転が促進されるという「ラップ療法」は、最近の医学領域における目からうろこの新説である。

 このような説は権威が言うと認められやすい。「ラップ療法」は学問的裏づけもあり非常に説得力があるのだが、食品用ラップというあまりにも一般的な素材を使っているということと、学会とは少し離れたプライマリケアを実地に行っている医師からの提言ということで、褥創にも非常に簡単で有益という素晴らしいエビデンスも集積しつつあるのに厚労省や学会は反応を示していない(薬品会社の関係とかいろいろ複雑なことがあるに違いない)。実際に困っている臨床医からはすばやく反応があったのだが。

 今は全く一般的な経食道エコー法というのがある。これも20年以上前に学会で発表している先生がいた。個人病院の先生だった。有用性は判っているのだがはかばかしい反応が得られない。「何でこんないい検査なのにわかってもらえないのかぁ」と発表の席上で本当に無念の表情で思わずもらしてしまったその発言を今でも覚えている。その後大学が取り上げ始め、その先生の名前は消えてしまった。

 本当にいいものを曇りなく見極めるのは難しい。素晴らしい発明だというものも、元をたどればもっと前に考えている人がいて、どういうわけか彼は認められず、ある人は賛辞を受ける。早すぎた?そういうのもあるかもしれない、しかし人間が権威とか肩書きに左右されやすいというのも大きな要素だ。あなたはパッケージにとらわれず純粋に中身を評価できる?

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こいつ

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