好みというのはかなり幼い頃に形成されるものであり、変わらないものである。音楽や絵など、昔好きであったものは生涯を通じてやはり好きだし、ピンと来なかったものはやはり成長しても来ないことが多い。もちろん例外はあるが。
僕の音楽耽溺歴は中学時代のビートルズ(小学生の時に来日し、ピークからは遅れている)から始まるが、昔愛聴していた、または今聞くといいんじゃないかと思う数々のアルバムをCDで購入し、やはり好みは変わらないというのを再認識している。
佐野元春の「カフェ・ボヘミア」がremixやDVDをつけてボックスセットで発売された。発売20周年記念だそうである。オリジナルのアルバムはよく聴いた、本当に。何かが圧倒的に僕の何かと重なっていたのである。ラブソングは1曲しかない。なにかもっと広い世界のことを歌っている。2曲ほどはまるで村上春樹だと思った。しんとした静かな情熱があるのです。本当にオリジナルな世界を歌っているなという気がした。でも佐野元春においてこのアルバムは単に1枚のアルバムに過ぎないのだろうと思っていました。こんなセットが発売されたところをみると、そうじゃなくて彼にとってもリスナーにとっても特別なものなのかな。
迷ったけど買いました。で、やっぱりremixもDVDも、圧倒的に好みなのです。何なんだろう。佐野元春は僕と同年輩です。このアルバムがきっかけでコンサートにも2度ほど行った。音楽はとても素晴らしいと思います。でもMCはくさい。よくこんなしらじらし一せりふを吐けるぜと正直困惑する。男子高校生の信望者が多いのはよくわかる。迷える若者たち、頑張ろうぜ!という世界なんだもん。それを照れずにかっこつけてやってて、まるで松岡修三です。ちょっと雰囲気を読め!という感じです。
でもなー、音楽はフィットするのだ。作品とそれを作る人間の人格とは別物だというセオリーがありますが、なんか抵抗があるがそうなのか。
ボックスセットには通し番号がつけてありました。僕は237番。多いのか少ないのかよくわからん。でもこれは僕のささやかな宝物であります。ジジイになってもいいと思うだろうな、多分。三つ子の魂、百まで。