ラウド・マイノリティ

 雨である。12月の雨だ。荒井由美の切なくも甘酸っぱい雨でなく、暗く冷たい火曜日の、往診の日の雨である。在宅診療で自転車で出かける日に限って雨が多いのはどうしてかな?誰か僕のこと嫌いなんでしょうか?あほなことを考えておらず出かけよう。

 独居の老人は必ずテレビを見ている。暗い部屋で、身じろぎもせずテレビを見ている。間違いなく認知症への高速フリーウェイであるが、見ないで下さいとは言えない。診察し、しばらくお話し(とても良くなっていますよ、風邪は引かないで下さいね…)、帰ろうとすると「先生が覗いてくれるから心強いですわ」と、じっと顔を見てかすれた声で言われる。表に出ると雨が小降りになり、少し明るくなったようだ(ここらへん、べただなぁ)。

 内科医は季節労働者で冬になると患者さんがぐっと増える。1日が終わり、家に帰り飯を食い、風呂に入るともうほとんどミッドナイトである。自分の時間はほとんどなく、1時間ほど取れる時間は職場で出来なかった書類仕事をすることになる(ケアマネージャーの皆さん、意見書全部書きました。えっへん、ざまーみろ。ご迷惑かけました。すでに手遅れだって?)。

 こういう日陰者の生活はもういやっ、私!というわけで今日は風呂に昔のStudio Voiceの特集「伝説の名盤300選」を持って1時間以上読む。なんでZepが「聖なる館」だ、何でストーンズが「アフターマス」だ、何でジョン・レノンが「Sometime in New York City」なわけよ、と悪態をつくが、これは客観評価はほとんど定まっているから、それと違う俺様の主観を自慢する特集なのだと気がつき、それからは楽しんで読む。

 僕もどちらかいうとメジャーよりもマイナーを愛するものである。でもラウド・マイノリティでありたいな。騒々しい少数派。クールだ。

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実は雨の日が好き

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