午前中の診察が終わると在宅診療に出かけます。外に出ることの出来ない患者さんを診察するため定期的に自宅を訪問するのですが、お一人の方が多い。そして必ずテレビがついています。勿論言うまでもなく「思いっきりテレビ」です。「成人病、今は医者よりみのもんた」。よく出来た川柳ですよねー。実際に医者の掲示板にみのもんた症候群として医者の言うことより思いっきり!テレビを信じる患者さんのことが話題になったりしました。あっ、言いたいのは「思いっきりテレビ」のことじゃありません。テレビを長時間見続けることについてなのです。
あなたが呆けたかったら1日お菓子を食べながらテレビを見ていればいいのです。テレビの害に関しては、日本小児科学会が子供のテレビを見る時間の制限を正式な提言として出しています。ちゃんとしたコミュニケーション能力の発育が妨げられることや身体的な発育障害の問題など、他にも子供に対するテレビの弊害に関しては本当にたくさんの報告がされています。しかし、どういうわけかかなり長い時間テレビを見ている老人に対する影響を調べたものは余りありません。
テレビは有用なツールです。情報を得る手段としては非常に優れている。百聞は一見にしかず。しかし一方通行です。コミュニケーションこそ脳を活性化させる。テレビの画面を漫然と眺めている老人の脳に新鮮な刺激が与えられているとは思えません。大事なのはそこで得たことを材料に話し合うこと、自分の思っていることを出すことで、アウトプットこそ要なのです。老人だけじゃありませんよ。あなた、そこのあなたも同じ。ビールを飲みながらニュースを見ているだけでは脳は活動を停止しているのに等しい。疲れてるんだよー、うるせえな。成る程。しかし脳は疲れません、身体は疲労しますが。別の新しい刺激を与えれば再び甦ります。
テレビは身体を動かさない。アンチエイジングの基本は脳と足腰です。70歳台でも鍛えれば筋肉は肥大することが証明されています。筋肉を鍛えることに手遅れはありません。勿論脳も同じです。年をとれば脳細胞は減っていくだけというのは過去の常識であり、今では成人でも学習することでニューロンが新生することが認められています。It is too late というのは間違いなのです。
で、テレビを見るのは止めた。アルコールに続き本年第2弾。まあ、どおってことない。正直仕事がはかどって良いです。お笑いを見れないのは寂しい気もするが、もうマンネリだもんなー。僕が再びテレビをつけたとき何人が残っているだろう。その程度です。止めるつもりはなかったのですが、尊敬する福田和也氏が全くテレビを見ないというのを知ったとき突然「あっ、止めた」と思った。やってみると快適です。代替医療のアイコン、アンドリューワイルはニュースも含め一時的に一切情報を切ることを勧めていますが、確かにすっきりする。ぜひお試しを。
テレビを見ない老人は何をするか。いいモデルがあります。伊能忠敬です。日本地図を最初に作った人。彼は50歳で隠居し、54歳から17年かけて日本全国の海岸線を歩いて地図を完成させます。江戸時代の50歳は今で言うと70歳ぐらいに相当するかな。隠居の仕事にしてはいい仕事してますよね、頭も身体も使って。伊能忠敬がこれからの日本にあふれることこそ明るい日本の将来、ライジングサン再びの近道と思えます。
で、No TV, No dementia(認知症)。できるかな?