脱水ですよ

パワリハの総師、国際医療福祉大学大学院の竹内教授著「認知症のケア」を読む。210ページ一気読みである。竹内教授とは何度か直接お話したことがあるのだが、こんなに認知症介護に深入りしている人とは知らなんだ。

ものすごくシンプルに書くと、先生は認知症ケアの大基本は「脱水、便秘、低栄養、運動不足の克服」であると。これはものすごく示唆に富んだ話なのだが、ちょっと脱水について。

医者の間では(特に大学病院では)何でも「点滴!」という医者はアホであるということになっている。ちょっとした風邪で「点滴してください」という患者さんには、僕も水分が飲めていたら必要ないですよと言っている。でもデイサービスに来られているご老人で、食事が取れない、しんどそうという方に明らかな脱水のサインが無くても点滴すると著しく改善するという感じは持っていた。

老人の脱水のサインは難しい。もともと「老化とは乾燥である」。ただでさえ乾燥気味で唾液分泌も悪く大概口腔中は乾いている。皮膚もつまむと元に戻らない。それがスタンダードであるような(というかすでに脱水状態だな、これは)認知症のご老人の軽度の脱水傾向を見破るのはかなり難しいと思う。

脱水になると血液は濃縮され循環が悪くなる。脳循環の悪化は意識レベルを下げる。各臓器のエネルギー代謝は悪化し倦怠感が強くなる。不純物、代謝産物は運び出されず、産生される熱量も放熱されないため発熱となり、結果ますます脱水は増悪する。人間の体重の60%は水であり、その水分環境で恒常性が保たれている。脱水は細胞の生存を支配する。

ご老人とまでいわないまでも、最近の健康ブームで水分摂取の重要性を説く人は多い。元気なご老人も意識して飲水量を増やしている方がいるが、これがまた夜間頻尿の原因になっていたりする。1日の総水分量が大事で、夜間は飲水を控えても脳梗塞の発症率は変わらないという文献があり、そのお話をしてもあまり止められないのはやはり何か有用性を意識されておられるのかもしれない。

健康な成人は1日2000cc、ご老人は1300ccが推奨される最低量だ。発汗がひどくない限り、あまりスポーツドリンクの有用性は無い。認知症の方は便秘も増悪因子なのだが、水分摂取は便秘も改善する。先生はある老健施設で、摂取水分量の増加に伴い認知症が改善していったデータを示されている。

デイに来ている方はすべて脱水症の可能性がある。飲水を促すことは今まででもやっていますが、認知症の改善に大きな効果があるというのは目から鱗でした。早速うちの施設でも飲水量を調べ(家庭内で少ないことが多い)、十分に水分を取られるようにしていきます。

「認知症を見守るのではなく回復させる施設へ」。トライする大きな目標ができてとても嬉しく思った。

 

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