都市伝説その1

都市伝説というのがありますね。口裂け女とか東京の地下には巨大な地下通路が建設されているとか、ありえないようでも、でもひょとしたらと思わせるような、明らかな目撃者もしくは関係者は同定できないんだけど確実にいるような感じ。ちょっと街の暗闇が深くなるような。うー。まっ、結構好きですこういうの。

医学界に都市伝説はあるか?

あるんだなぁ、これが。British Medical Journal 2007;335:1288-1289はMedical Myths・・・医学的伝説?として7つのサブジェクトを取り上げ検証しています。BMJのような、ちゃんとした医学雑誌にこのような話が載るというのが、なかなかイギリス人、大人やねー、さすが、という気がします。

で、その7つとは、①健康のため1日に少なくともグラス8杯の水を飲まなくてはならない ②人間は脳全体の10%しか使っていない ③髪の毛と爪は死んでからものびる ④髪の毛を剃るとかえって濃くなる ⑤暗いところで本を読むと目が悪くなる ⑥7面鳥を食べると反応が悪くなる ⑧病院での携帯電話の使用は問題となる電磁的干渉作用を起こす
・・・であります。

⑥はあまり日本でなじみがありませんが、他の項目は結構世界共通なんだなーと思いますね。①⑧なんかは、えっ、これ違うのか、という気さえしますが、これらはいずれも正しいという明らかなエビデンス(証明する確かな論文)は無いのですね。これを書いたVreeman先生とCarroll先生は、間違いであるという証拠を探すのは難しく、まずこれらをサポートする証拠が見つけられなかったということであると書かれています

正直なところ短いペーパーであり、簡略すぎてもうちょっと調べりゃ別の話が展開する感じもするのですが、ちょっとサマライズすると・・・

① は1940年代に1日2.5リットルの水分を取るといいと書いた論文があるのですが何分昔ことで根拠もない。以後水だけでなくすべての飲料水(ジュースやコーヒーなども含んで)あわせてそれぐらい飲んだほうがいいというのはあるがいずれも確かな証拠は無い。水分の取りすぎは水中毒、低ナトリウム血症、死を招くという論文はある。飲んだ人、飲まなかった人で比較したペーパーなんて不可能だろうし確かにエビデンスは無いか、と思います。経験則ですかね。多く飲むと過量な分は尿として出て行くのですが、体内にある不純物というか有毒物質がウォッシュアウトされるので水分は多く取れと推奨するドクターも多く(それも多分エビデンスは無いな)、今のところ血液が濃縮する程度まで水分を取らないのはいけない、血管が詰まる可能性があるから、という位しか言えないと思います。しかし実証していないだけで経験則は侮れないとも思います。

② は最近の脳科学の進歩よりあらゆる方面からみて10%以上は使っている。むしろ脳のあらゆるエリアで使っていないところは無いというのが実情のようです。天才に対する凡人のやっかみが幻想を生んだか?むしろ使えば使うほど良くなるという(これは事実)ことを言いたいのでしょうね。

③ こんなことはありえない。死後脱水のため皮膚が萎縮しそう見えるのだそうです。だけど向こうでは一般的な話と捉えられているのでしょうね。ジョニー・カースンが「死後3日の間、髪も爪も段々と増える。でもかかってくる電話は段々と減る」というジョークを言っていたそうです。

④ これも見た目だけの問題で、皮膚科的には剃ることの刺激で毛根が活性化することはありえない。剃った後はえてくる場合、もともとの毛より周辺部の輪郭がシャープに見える、また日光で脱色していないため濃く見えるなどが原因では、とのこと。

後の3つの検証はまた長くなるので次回に。
しかしどの世界にもある都市伝説。なんとなく信じているが全く事実と違うことというのも日常生活で頻繁に実はある。疑って調べることの重要性を教えてくれたのが、実はこのペーパーの一番いいところかもしれん、と思います。

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