僕はいつも朝6時半に起きて愛犬の散歩に行きます。4年前に彼女は来ましたが、散歩できるようになってから朝はほとんど僕が連れて行っていて、行かなかったのは本当に数えるくらいです。
朝の匂いは独特です。季節の変化が早く感じられて眠いのはいやですが散歩をやめる気はありません。で、ここ2,3ヶ月ほど前からよく顔をあわす人がいます。ビジネスマンですが僕より少し年配。いつも上等そうなスーツで姿勢よく歩く大きな人ですが、顔が愛嬌のある眼鏡面で、なんとなく好感を持っていました。こういうのはお互い判るもので、なんとなく挨拶し始めて、最近は時々立ち話します。
今日は彼女が積極的に寄っていたので慣れた手つきで毛並みを撫ぜてられました。
「犬は飼ってられるんですか?」
「いや、飼ってない。」
「慣れてられますよね。」
「うーん、大昔シェルティを飼ってたんだ。だけど死んじゃってね。母親が世話をしていたんだが大変でさ。人間と同じで動かなくなってから寄り添うようにずーとしてて、これじゃまずいからってんで家族中で世話したんだけどね。死んじゃった。それから死ぬことを考えると飼う気がしないんだ」
こう来ると返答できない。こいつは僕より先に死んじゃうんだなぁと何かのひょうしに思うと、いや考えるのはやめようとその考えを振り払う。逆かもしれないし。
「そう思うと悲しいなぁ。長生きしてほしいです」
彼は撫ぜるのを止めて立ち去りながら言った。
「でもね、それ以上のものがあるね」
愛するものがある喜びには、失う悲しみが必ず伴う。でもそれを恐れて愛さないのは臆病者?出来る時に後悔しないよう誠心誠意一緒に楽しい時間を過ごしてあげよう。