池に写る月

 最近あまり疲れなくなった。以前は夜の外来が終わるとぐったりして、その後とても仕事のディスカッションなんかする気になれなかったが、この頃は不思議なくらい疲労感が無い。

 理由はわかっている。腹を立てなくなったからだ。立たなくなったのではない。自主的に、能動的に立てなくなったのだ。感情の揺れ動きほど疲れさせるものは無い。カテコラミン・ストームは人間を消耗させる。慢性疲労症候群の患者さんの尿中カテコラミン量は増加している。

 もちろん僕は神ではない。一瞬激怒の兆しがはしることもあるが、それをなだめる方法を身につけてしまった。感情はコントロールできないなんてよく言うがそんなことは無い。あなたが生理的に絶対だめ!と広言している禿の脂ぎったおじさんが、実は亡くなったお父さんを最後まで援助し励ましていた人だったというのを知った時、全く違った感情が湧き起こるはずだ。感情なんて実はもろいものなのである。

 人の気持ちを推し量ろうともせず、自分の権利だけを声高に主張する人々と会っても以前のように疲労することは無い(患者さんのことではないよ、念のため)。月が揺れもせず静かに写る池の水面を眺めているように、自分の気持ちを見つめているだけである。

 衰弱?進歩?お悟りになった?まさか。技術です。・・・しかし楽になったのは確かだな。

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タオの読みすぎか

池に写る月」への2件のフィードバック

  1. 症候群症候群

    慢性疲労症候群

    4. 慢性疲労症候群 ●慢性疲労症候群とは 慢性疲労症候群とは、CFSとも言われ、日常生活が送れないほどの重度の疲労感が長期間続く状態をいいます。身体的、精神的原因ともに解明されていません。 病的な疲労感はいくら休息をとってもほとんど、あるいは全く改善しないのが特徴で、風邪が長引いたような症状が続いたり、ひどい疲労感があって日常生活が出来なくなったりします。 ひどい場合には、身の回りのことも出来ず、日常生活に介助が必要で、終日就床を必要とする、ということもあります。 …

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