おお、いい本を読んだなぁ。デビッド・ブラウン氏著「60歳からの満喫生活」です。原題は The Rest of Your Life is the Best of Your Life というもので、こっちの方がいいね。
デビッド・ブラウン氏はハリウッド映画のプロデューサーで「ジョーズ」「コクーン」「ディープインパクト」「ショコラ」なんかを送り出しています。大物です。アカデミー賞も受賞しているのですが50歳半ばで詳しくは分かりませんが古巣を追われ、なかなかの苦労もされたみたいです。
この訳本は1991年のエディションを基にしており(彼はこの時75歳)、60歳からどんなふうに生きていけばいいか、気楽な調子で書かれたものです。1時間ちょっとで読める。
しかし!! 僕は仕事柄、老年期をどのように生きるか、この頃いっぱい出ているその手の本をかなり読んでいますが、この本ほど心にしっくりしたものはありませんでした。結構前に買っていて以前はそれほど感銘を受けなかったのですが、今手に取ったのは何か呼ぶものがあったからかなぁ。何の気なしに手に取り、まさに乾いた砂に水がしみこむみたいに文章が入ってきました。
日本の方が書かれたものは真摯な、しっかりしたものが多いのですが、正直なところ、書かれたご本人のようになりたいかと考えるとようわからん。しかしブラウン氏(デビッドと呼んだ方がしっくりくる)の、おいしいご飯を食べながら葉巻の香りとともに冗談交じりに深い声で話されるかのような人生の極意は、本当にそうだよなぁと深く肯けるものがあるのです。
デビッドは面白い。
頭が固くなるのは有難くない老化の兆候である。固くなるのは死後硬直だけで沢山だ。
「70歳を過ぎて目が覚めたときにどこも痛まなかったら、そりゃ君、寝ている間に死んだってことだよ」
私なんかも寂しいことに、もはや若い女が意味ありげな視線を投げかけてくることもないし、そして恐ろしいことに、バスに乗ると妊娠した女性に席を譲られてしまうのである。
くれぐれも無理は禁物。彼女の甘いキスが人工呼吸に終わらぬように。20代、30代のような荒業を成し遂げようと頑張るつもりなら、血液型と近親者を記載した札を首から下げておくことだ。
楽しい人です。鬱(黒い犬と彼は呼んでいる)に悩まされた時期も長かったようですが、運動やお金、旅行のことなど、本当に自分自身の経験から、頭でなくハートから出てきた言葉だというのがよくわかります。
ウィッキーペディアで調べたら、彼は今年の2月1日に93歳でお亡くなりになっていました。大往生ですね。デビッド、幸せにお亡くなりになられたことを心よりお祈り申し上げます。
この方です。風格ありますね。カッコいいです。