投稿していた論文が日本医事新報の8月10日号に掲載された。タイトルは「草食系男子のホルモン動態」。男性外来で典型的草食系男子の男性ホルモン(遊離テストステロン)値がすごく低いことが判明し、そこから症例を増やして21人になったところでまとめたのである。
男性ホルモン自体は20代前半あたりをピークに加齢とともにゆっくり減少していく。個体差が大きいのだが、若年にもかかわらず、いわゆる男性更年期(加齢男性性腺機能低下症候群:男性ホルモンの低下のため女性の更年期のような症状を呈す)の診断基準値以下の値を示す例が半数いて、彼らは男性ホルモンだけでなく年齢とともに低下していくDHEAやIGF-1といった老化の基準となるホルモン値も低い。だったら老化が速く進んでいるのか?しかし老化の進行を示す徴候はなく、むしろ省エネというかエコというか、すべての活性が低い、時代にマッチした形に進化しているのではなかろうか、というのが大体の趣旨です。
草食系の判定が難しいところだが、「性行為や恋愛に積極的でなく男性としての能動性が少ない」というのが2006年の日経ビジネスで草食系という言葉を最初に使った深澤真紀氏の記事以来の根本条件で、それに加えて物腰が柔らかい、声が小さい、食が細いだのの条件を決め、問診とともに当院の複数女性スタッフに判定してもらった。こういうのは女性の嗅覚が鋭いかと思われる。
草食系という言葉は日本独自のモデルとして諸外国に紹介されているが、投稿してから北欧で昔と比べて同世代の男性のテストステロン値が減少しているという内容のペーパーを見つけた。フィンランド、デンマーク、そしてアメリカでもそういう報告があるようである。いわゆる草食系かどうかということは書かれていないが、以前と比べていわゆる文明国では草食型の男性が増加しているような気が・・・(あくまで印象だけどね)。原因として環境ホルモンとかいろいろ考えられるが推測の域を出ない。
ともかく今年幹事をした臨床データ報告会で2年前に症例報告をしたのがきっかけで始まったものが形になって喜ばしい。日本医事新報は発刊して91年になる医学情報誌として日本で最大部数の老舗だが、開業してからずっと愛読している好きな雑誌に掲載できたことも嬉しい。担当のKさんにはとてもお世話になった。感謝します。この掲載がきっかけになって草食系男子がドッと来てくれないかな。畏れるな、来たれ、Japan’s herbivore men よ!