外来のシャーロック・ホームズ

日曜日に「第13回見た目のアンチエイジング研究会」に行ってきました。東京です。ほとんど始発の新幹線(泣)。ここんとこ毎週のように土曜、日曜と研究会に行かざるをえず(大泣)。しかしやはり行くとそれだけのことはあるもんで(たまに無駄足!(泣))、なかなか収穫がありました。今日はその内容というよりも関連して医学における見かけについて。

見た目年齢がその人の健康年齢である。実年齢よりも見た印象。60歳の人が80歳に見えたならその方の内臓機能は80歳レベルの可能性がある。成人においてこれはかなり確かで、それを証明する論文も結構あります。高齢になった双子で若く見えるほうが結果的に寿命が長いという論文もあります。同じDNAでも生活環境により変化する見かけが予後を示すのですね。おっさんみたいに見える小学生(診察室に「どうも」と言いながら入ってきたちっちゃなおっさんみたいな小学5年生がいました)の健康度がおっさんみたいということはまずないですが、中高年における見かけはかなり健康状態を反映します。

だいたい病気というか、コンディションが悪いとかなり老けて見える。お子さんの風邪でよく来られるきれいなお母さんがご本人が調子悪くて来られた時、「んっ、Who is she?」と一瞬思うくらい変貌されるのは(最後まで分からなかったりもする)、単にスッピンだからというわけではありません。また長く慢性の疾病で苦しまれていた方が手術により軽快した時、そのあっぱれな全身の輝くオーラ、10歳は若く見えるのはやはりコンディションの反映と思われます。

それこそ40年近い昔、僕が研修医だったころの話です。胸部外科とのカンファレンスで手術適応ギリギリの高齢のため決行の決定が難しい患者さんのケースで外科の教授が主治医に尋ねた。「この人若く見える、老けて見える?」「若く見えます」「わかった、やろか」 !! その当時大胆な決定の仕方やーととても印象に残ったのですが、その当時から見かけはその人の身体予備能力を反映すると経験上分かっていたのですね。ベテランはすごいものです。

若さだけでなく、内分泌疾患で甲状腺機能低下の橋本病とか、副腎疾患のクッシング症候群、成長ホルモン異常の末端肥大症とかは外観で大体(知識と注意力があれば)診断がつきます。それ以外にも爪が丸く膨らんでいたりすると肺が悪いかなとか、単純に体が黄色い!黄疸!これは肝疾患とか。こういう一発診断は正解だとかなり医者として快感があります。そしてこのように明らかな病気というのではなくなんとなく調子が悪い、いわゆる未病の処方を決めるのにも、漢方では望診と言ってその人の全体的な見かけ、話し方、診察所見を決め手の一つとしています。実証、虚証なんてかなり全体の印象が決める気がします。

ということであなたの健康状態はかなり見かけで分かる。aging、加齢程度も実年齢は参考程度で実は見かけが大事と。しかし最近の医療はデータ重視で、こういった観察の印象を余り重要視していない感が無きにしもあらず。医者は1回も自分の顔を見ないでPCの画面を見たままで診察が終わった、なんて話もあったりする。AIが本格的に医療現場に入ってくるともっとその傾向が強くなるかもしれません。

シャーロック・ホームズは依頼者やワトソン博士を見ただけで、どこから来た、何をしていたなど正確な推理を観察した事実を根拠として述べて驚かせる。子供時代に読んだ時、かっけー!とぞくぞくしました。足元にも及ばないにしろ外来でもそうありたいなーと思ってます。

 

 

 

 

 

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