「神は細部に宿りたもう」というフレーズを知ったのは開高健氏の著作から。彼は20代のころ激読!していた作家で、随筆にその文章があった。小説でも映画でもごく小さな部分、例えば映画だと主人公の持ち物がちゃんと使い古されているとか、小説で本筋に関係のない店の描写が素晴らしいとか、結論に影響はないがそういった周辺部に気がちゃんと使われていると作品が輝いてくる。
で思うに、人間にもそれは言えるんじゃないでしょうかね?
話しが面白い人というのはこういったdetailがちゃんと話せる。一つは固有名詞。えーなんだっけ?あれ、あれと固有名詞でポイントが定まらないと話はつまらなくなる。そして表現力。細かい描写が上手でありありと目の前に浮かんでくるように話されるとリアリティがぐっと増す。
そして見かけについていうと、全体の印象ももちろん大事だけど細かいところ、特に末端ね、これがカギなのでは。手(そして足、難題やなー)の爪、指、髪の毛。女性にとっては何をいまさらという話でしょうが、男はあんまり考えてないぞ。
20年以上前の話、ある仕事で運転席の隣に僕を乗せてくれた保険会社の社員さんの手、運転しているその手の指、爪がとても美しいのに気が付いた。男ですよ、もちろん。30代前半かなぁ、身なりももちろんきちっとしているけど、絶妙に手が美しいのだ。
「手、きれいですね」「えっ、わかります?嬉しいなぁ。気が付いていただけることってあんまりないんです」「ふーん、でもとってもきれいだ」「実はね、僕エステに行ってるんです」「エステ!?(その当時男性用エステは話題にもなってない)」「そう、僕の妻はアメリカ人なんです。で彼女が人と会う仕事をやってるんだったら手をきれいにしろと言われて、知り合いに頼んで手とちょっと顔だけ」「へー」
あとで彼の上司と会う機会があり、彼が非常に優秀で褒賞としての会社の費用もち外国旅行は毎年の常連だと聞いた。末端に気が回る男はすべてに気が回るんだろう。
上の末端は髪の毛だ。髪はその人間の勢いを示す。ヘアースタイルも大事だが(ウォール街という映画で、大立者マイケルダグラスがチャーリーシーンに、成功したいなら100ドルの床屋に行けというセリフがあったのを覚えてます。当時の100ドルはなかなかね)、艶とかそういうのは若さに直結する。これも女性ならとっくにご存じだろう。疲れてくると髪の毛がヨレヨレになってくるし、髪にかまわないと落ちぶれた感が漂う。昔の日本の武将も「将は老いたりを見せず」ということで、わざわざ髪を黒く染めていたという話がある。まっ、こういった見かけは大事で、こいつが内面に反映されてくるのです。
ということで神は細部に、そして末端に御座す。そこを大事に。とくに男性諸君。