うーん、思わず呻るなぁ。
最近読んでいたのが「スカイ・クロラ」です。押井守監督がこの夏映画化して、ベネチア映画祭にも出品されていたので一部では話題になっていた。僕はこの森博嗣氏の原作をどういうわけか(全く動機が思い出せない)アマゾンの中古でかなり前に買っていて、読みかけたのですがイメージと違っていた感が少しあってそのまま積読になっていました。
これまたなんでかよく判らないのですが、突然読み出して(まさに神の啓示であろうか)、本日読了。眠る前に30分くらいずつ読んでいたのですが、文章を読むことの至福感を感じ、すごいいい気持ちになって眠ることが出来ました。
ストーリーを書くのはちょっと面倒。ジャンルはSFですが、フレッシュ、流線型の銀色のメタル、ドライ、草の甘い匂い、青空の圧倒的な透明感、妥協のない言葉、なんてイメージです。
読んでいてすごい飛行機マニアだなと思ったのですが、後で森博嗣氏のプロフィールが気になってちょっと調べてみました。マニアックな人(特に動くものに関して)であるというのは間違いなかったのですが、その独特の個性は次の記述からも明らかでしょう。
12年前に国立大学の工学部助教授として「粘塑性流体の数値解析手法」の研究を続ける傍ら、小説執筆を開始。常に執筆活動を「ビジネスとしてやっているだけにすぎない」というスタンスをとっており、数年後に小説執筆をやめる、と自身のブログで発言している。2008年12月には、自身のブログであるMORI LOG ACADEMY終了時に自らの作家としての進退について何らかの発表をする可能性を示唆している。「今確実なことは、いつまでも続けるつもりではないこと、今後は少しずつ表に出る機会を減らし、人知れず地味に静かに消えたいと願っている」
彼はいろんな分野において多作であり、僕のイメージはエネルギッシュな流行作家だったのですが意外・・・。「スカイ・クロラ」の登場人物はそろって無口ですが、ご本人もそうなのかなーと思わせます。かなり興味深い人物であることは間違いなく、そのこだわりの深さは例えば・・・
英語のカタカナ表記において長音の省略が見られるが、これは工学分野ではJIS規格(Z 8301)にのっとり三文字以上の言葉の長音記号は省略するのが慣習的である為であり、その慣習を知らない層がファッション的な意図と見なしているのは正しくない。コンピュータ等一部の語のみ長音記号を省略する小説家よりは整合的ともいえるが、この慣習を徹底して小説に持ち込んだ先例は見られないため、ファッションうんぬんはともかく強い意志にもとづいているとは言い得る。また、森独自のルールとして子音+yで終わる言葉には「ィ」を用いている。(例 mystery→ミステリィ)
どう?確かに伸ばさないほうが英語の本来の語感に近い。語感にはかなり敏感なようで、登場人物の名前は日本語のような、そうじゃないような、独特の感覚。また食事は1日1食だそうです。そんな彼が自分自身の代表作として上げているのが、この「スカイ・クロラ」シリーズです。
僕がこの「スカイ・クロラ」でうけた一番大きな衝撃は、主人公たちが死なない人間であり、そのことに苦しんでいることでした。これは医学に関係するものとしてとても関心のある大切なテーマです。どう生きるかということにつながってくるのですが、みんなも考えてみてね。
スカイ・クロラの映画も本も知らないのですが・・ぼくは萩尾望都さんの「ポーの一族」が大好きです。少年の姿のまま永遠の時を生きる運命を背負わされた吸血鬼エドガーの物語です。中世から現代までずっと生きながらえながら「不死の代償に失うもの」が各エピソード中によくでてきます。
これを読んでいると、吸血鬼にこの数年のうちにぼくの血をすってもらいたいな、と思ってしまいます。
alfesta君、コメント有難う。
すっ、するどい!森氏は萩尾望都さんを唯一認めるアーティストとしています。大ファンみたい。
そうだったのか・・・「スカイ・クロラ」は森版「ポーの一族」なのかもしれませんね。いや、勉強になりました。
ところで吸血鬼に血をすってもらうと不死になるのですか?
おはようございます!
たくさん吸われると死んでしまうのではないでしょうか。「インタヴュー・ウィズ・ヴァンパイア」をみると、自分の仲間をふやすような吸いかたと食事としての吸いかたがあるようです。ブラピが、少女がペストで死なないように吸血鬼にしてあげて、トム・クルーズに「子供はだめだといっただろうが・・」とたしなめられる場面がありました。ぼくはこの映画が大好きです。
不死もつらい、といいながら二人はけっこう楽しんでいるように思えます。うらましいです。
サンキュウ!勉強になりました。
「インタヴュー・ウィズ・ヴァンパイア」今度見てみます。不死もつらい・・・言ってみたいですね。
昨日は、本、ありがとうございました。
ネカフェにこもって4時間読破です。
「スカイ・クロラ」なので、ドンパチロマンを想像していたのですが、、、違いました、僕が撃ちぬかれました。なにか、海外の詩を読んでいるような、もしくはフランス映画を観ているような、「投げっぱ!」な印象の作品でした。
僕は、日常は、死を怖れ、時に辛いことがあると、死を望ましいものととらえています。それは、30歳の人間としては、大人と子供が同居しているメンタル?あまり深く考えると怖い部分なので、箱にしまっておきます。ちなみに僕が3回読み返したのは、死の部分ではなくて、「理解は貴重で得ることが難しい。そして、それを得ることができるのは、その必要がなくなってから~」というフレーズです。まさに、今の僕がズキューンと撃ちぬかれました(笑)。うまく旋回してみます。
あるく君、コメントサンキュー。
「スカイ・クロラ」は君にために書かれた小説であるという気がしてきました。
いつか君の小説を書いて僕に見せてください。
楽しみにしています。