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身体の手入れに費やす時間

TOEIC会長で、65歳で司法試験に合格した渡辺弥栄司という人がいる。今87歳だが125歳まで生きると決めている。30年前に中国人で太極拳の高名な師家に幾つまで生きるつもりですかと訊かれ、神様が決めることですからと答えたところ、「それは幼稚な考えです、社長さんが社員にこの会社は後何年続くのですかと尋ねられて俺は知らないと答えるのですか、目標は無いのですかと質問され、無い、毎日一生懸命やればいいのだと答えるのですか、そんな会社は潰れてしまいますよ、幾つまで生きるかは自分で決めるのです」と諭される。すごい話しだが、彼は逃げ回った挙句、しつこい先生についに根負けして125歳と言ってしまう。根拠は特に無い。しかしこの年齢は現在生存可能な最長年齢と科学的に言われている。そして彼は偉いことに、何とかこれを実現しようとしている。

前向きなものの考え方、控えめな食生活など、多くの方がご存知のことを実行されているが、速歩き、真向法の体操、木刀の素振りなど身体的なトレーニングを毎日40分以上休まず続けておられる。おお、なんと素晴らしい。ところが彼が三浦敬三氏(プロスキーヤーの三浦雄一郎氏のお父様で、確か一昨年アイガーだっけ、氷河を滑走した。現在100歳のはずだ)に会われたとき、三浦氏は言うのである。「それではダメです。これから本当の人生を拓いていかれるならその程度で健康なんてことを信じていてはいけません。まあ、やらないよりはいいが。私は毎日、4、5時間ほど身体の手入れをしています。125歳まで生きるという理想は大きくてよろしいが、それに見合う努力をしていませんね。本気で取り組みなさい。どんなに忙しくても時間は取れるでしょう。」

どうよ、お父さん。僕もテレビで見たが、確かに彼は走っていた。100歳だぜ。仕事で忙しい?いーわけ、いーわけ。言い訳、好いわけ?素直に認めよう。あなたの身体だ。目標も無く、アイデアも無く、努力も無い。結果は明らか、火を見るよりも・・・

> ※2004年10月23日のニュース(共同通信)で三浦氏のことが出ています。 世界最高齢の70歳でエベレストに登頂したプロスキーヤー三浦雄一郎さん(72)の体力は20代男性と同じで、100歳の現役スキーヤーとし て知られる父親、敬三さんの大腿(たい)骨は60歳並みの強度があることが23日、東京都老人総合研究所の調査で分かった。  同研究所分子老化研究グループの白沢卓二研究部長は「遺伝的要因もあるが、体を鍛えていることが老化を抑える一因と考えられる。日ごろから 運動することが大切」と指摘。「三浦家の長寿の秘密を探る」と題し、11月8日に都内で開く特別公開講座で発表する。

お風呂入っていいですか?

風邪の患者さんに質問されることが最も多いのが、お風呂に入っていいですかというものだ。お子さんが風邪のとき、お母さんは半分以上訊いてくる気がするし、大人の方にでも良く訊かれる・・・・実は正解はない。医学は統計の学問で、ちゃんとした研究報告を元にすれば答えを出すことが出来る。多くの医者が同様の質問をされているのにもかかわらず、風邪の時入浴が可能か研究した論文は調べた限り世界中に殆ど無い。

報告が全く無いわけではない。五十嵐正紘先生の日本の小児科医を対象とした調査では88%の小児科医は風邪の子供の入浴を容認している。しかしほとんどは熱がないこと、重症や急性期でないことの条件付である。半分近くの親は風邪の時風呂に入れない。しかし入浴させた親の回答では、82%が変化なく、15%は良くなったと答え、2%が悪くなったということである。

個人的には僕は風邪でも風呂に入る。しかしそれは治療を期待してではなく気持ちがいいからである。西欧では風邪の時入浴を勧める場合があるし、サウナは風邪の罹患率を減少させるという論文もある。大人の方は入りたければ入ればいいし、その気も起こらないぐらいしんどければやめればいいのだ。自己責任である。

風邪の時入浴を控える習慣は、江戸時代からほんの数十年前まで銭湯が主流であり、風邪を引きやすい冬に帰宅までの間湯冷めしたこと、また内湯でも浴室以外は気温が低く湯冷めしやすいことが原因ではないかと推察されている。湯冷めすると咳が出やすくなる。入浴して悪化した人は咳がひどくなったという人が多い。悪いのは湯冷めだ!気をつけろ!

といっても基礎に病気をお持ちの方の入浴は慎重にしたほうがいい。入浴は心疾患をお持ちの方の場合、心機能を良くする場合もあるし悪化させる場合もある。要は入り方で、病弱な方に一番安全な入浴方法を完全ではないがまとめてみると・・・

1. 温度は38から41度Cまでの微温浴。
2. 一番風呂は浴室が冷えているため控える。浴室を暖めておくこと。
3. 胸下までの半身浴とし、肩はバスタオルで保温する。首まで入ると心臓に負荷がかかる。半身浴だと、ちょうど空気中で寝ころんだ程度の負荷である。
4. 入浴剤は好みならば使ってもいい。ラベンダーの香りは心拍数を減少させ脳波のアルファ波を増加させるのでリラックスするし、炭酸ガスを主成分とするものは冷えに有効。
5. ゆっくり立ち上がる。
6. 入浴後の温度変化を少なくするため、更衣室など保温する。
7. 入浴後は水分を取る。喉が渇いてなくてもコップ2杯程度の冷やし過ぎないお茶やスポーツドリンクを。
8. 夕食後1時間は入浴を避ける。入浴することで胃への血流量は減少し、水圧のため胃が押し上げられて胃から小腸への食物の排出が制限されるため。
>おまけ:運動後は最低でも30分あけて入浴したほうがいい。入浴により血液は血管拡張した皮膚表面に多くなり筋肉へは減少するため、酸素供給、老廃物除去が不十分となり筋肉の疲労回復が遅れる。また入浴の心臓への負担もあり、運動されている方はしばらく待ってから入浴を。

代替療法は安全か?

漢方薬は多くの方が使われています。有効性が科学的に証明されているものなどは医者が積極的に用いる場合も多くなっています。どちらか言うと副作用が少ないという印象をお持ちの方が多いと思いますが、必ずしもそういう訳ではありません。

Chinese Herbs Nephropathy (漢方ハーブ腎症)という病気があり、4月7日発行の医事新報に中本安先生が解説されていますのでそれの大事なところを要約してみます。

1. 半年から2年間の漢方薬服用後に腎障害が起こり、急速に腎不全となる。
2. 日本では今まで30例の報告があり3分の2は西日本。ベルギー、フランス、台湾などでも報告あり。
3. 漢方薬に含まれるアリストロキア酸がその原因と考えられる。
4. 腎不全だけでなく尿路系の悪性腫瘍の合併が多い。
5. 報告されている漢方薬は中国産のものが多く、健康茶の報告もある。

医薬品でなく個人輸入の漢方薬、健康食品、民間薬などを使用する代替療法は最近高まりを見せています。西洋医学の不十分な点、悪い面に対する補足的な役割を果たしているのですが、医薬品のように治験(効果、副作用などを発売前に実際の人間を使って調べる)が行われているわけではなく、代替医療学会などがチェックを行っていますが十分ではありません。安全性に関しては個人の責任が大きいと考えられます。

できるだけ内容の情報が公開されているものを使用すること、副作用などの情報公開が行き届いた会社を選ぶなどが気をつける点ですが、ちゃんと治験を通過したはずの医薬品でも思いもよらぬ副作用が出てくるのはみなさんご存知の通りです。
できるだけ必要のないものは摂取しない。

そのためには精神、身体にいいライフスタイルを心がける。できるかどうかは分らんがともかく心がける!

悪いやつほどよく眠る

悪いやつほどよく眠る・・・そうだろうか?知り合いに悪人だけど不眠症のやつがいる。何事にも例外はあるのだ。だけれど一般論としていい人が不眠症というのは正しい気がする。外来をしてふと気がつくと、睡眠導入剤を出しているケースがとても多いのに驚く。まずい・・・。いやー、まだ止められないんですよと言いながら、それだけを受け取りに外来に来る人がいる。みんな気にしているんだけれどやめるのは不安なのだ。そこで案外知られていない、睡眠薬の止め方について。

まずあなたの飲んでいる睡眠薬のタイプを知っておく必要がある。それにより止め方が違うから。睡眠薬は作用時間により超短時間作用型(半減期が4時間位まで。ハルシオン、アモバン、マイスリーというのが有名)、短時間作用型(10時間位まで。レンドルミン、リスミーなど)、中間作用型(28時間位まで。ロヒプノール、サイレース、ユーロジン、ベンザリンなど)、長時間作用型(それ以上、3日以上のやつもある。ベノジール、ドラールなど)の4つがある。寝つきが悪い場合、超短時間作用型。それに加えて途中ですぐ目がさめるという方は短時間型を用いているはずである。真夜中や早朝に目がさめる方は中間型以上を使用しているはずだ。

減量で一番一般的なのは薬の量を2〜4週間ごとに4分の1ずつ減らしていくやり方だ。これはどのタイプの睡眠薬にも応用できるがある用量以下では不眠が生じる可能性がある。そうなるとこのやり方では先に進めない。

中間から長期作用型では隔日法といって、始めは1日おき、それでも眠れたら2日おきとだんだん間隔を開けていく。ただ内服していた期間と同じくらいの期間をかけて中止しないと反動で不眠が悪化する場合があるのでゆっくりと。このやり方は短時間作用型以下のやつには適さない。離脱症状(不眠、不安、イライラなど)が出やすいためだ。中ではマイスリーが比較的出にくいともいわれている。 だとしたら短時間、超短時間作用型はどのようにすればいいかというと、中間型以上のものに徐々に変えていく方法がある。2週間ほど半量ずつ併用したりする。それで置換出来たら、隔日法で止めていくのだ。逆に中間型以上のものを短時間以下のものに置き換えると中止しにくくなるのでこれはよくない。

もうやめたいな、と思った時がやめ時で、毒薬じゃないんだからすぐ止めなくっちゃとあせる必要は無い。薬としては安全性の高いものだ。ただ服薬期間が長くなればなるほど止めにくくなるのは事実である。不眠が恐怖というのはよくわかる。ただ、逃げていると相手は増長する。反撃すべきだと思う、個人的には。つまり寝ないのだ。恐怖の元を直視する。幽霊の正体見たり枯れ尾花。寝なくてもどうってこと無いです。全ての人に勧められる訳じゃないけどね。