カテゴリー別アーカイブ: 医療編

全身医者!!

鍼灸の印象はあまりよくなかった。

研修医の時、気胸で入院された中年の女性がいて、その原因が鍼灸だった。長い針が皮膚を貫通して肺に穴を開けたのだ。畳針のような長い針が突き立てられているのを想像した。「おっそろしー!」。何の知識も無かったのだ。その時以来鍼灸が僕の興味に入ってくることは無かった。
 
時は流れる。

ご老人をたくさん診察するようになると、本当に身体の痛みを訴える方が多い。病気というよりも加齢による自然変化ともいえる。しかし医者のできることはせいぜい痛み止めを出すくらいで根本解決にはならない。むしろ痛み止めは腎機能を障害する可能性もありあまり使用しないほうがいいのだ。どうする?そんな時論文で鍼灸の関節痛に対する効果を知った。アメリカの論文だった。調べてみると日本ではちゃんとした論文は少なくアメリカが圧倒的に多かった。NIH(アメリカの健康、医療に関する中心的存在の政府機関)が鍼灸も含む代替医療に大きく予算をつけた時期であった。その時、アメリカのUCLA(カリフォルニア大学ロスアンジェルス校)で鍼灸を講義している日系2世の医者が、医療関係者を対象に鍼灸を講義するという3泊4日のセミナーが浜松であるのを知り休診して参加した。大変印象的で有意義なセミナーだった。実はその時、初めて鍼灸で使う針を見たのだ。とても細く清潔で畳針の印象は大きく裏切られたが、自分自身で指に刺してみるという実習はちょっと汗が出た。しかし、「あんまり痛くないな・・・」という記憶が残った。
 
 結局自分自身で鍼灸を患者さんに行うことは修業の時間も無く、施行する時間もとれず不可能だった(高名なトレーナーが無免許で鍼灸をしていたと逮捕された事件がこの前あったが、医師免許があれば鍼灸は可能なのよ)。しかし鍼灸の可能性を信じていた僕は、運命のように優秀な鍼灸師を雇うことができ、診療所のそばに鍼灸院を開設した。しかし、自分で毎週うけるようになろうとはね・・・

 ブッチン!と音がしたとき、右足の踵が急に分厚くなった気がした。周りの人の顔は引きつっていたが本人は最初わけがわからなかった。その後急速に「やったか!」と意識した。10年前にもテニスで左足のアキレス腱を切っていたのだ。今回は手術した(といっても仕事は休まなかった。休診日の朝に入院、手術して翌朝7時に退院して外来をした。はい!自慢です、すいません)。リハビリの時期、ギプスをつけてどたどた走り回ったり、ケンケン100m競争をしたりしていた。どうしようもない私。で、もともと具合の悪かった股関節が両側とも調子が悪くなったのだ。まともに歩けねー。誰が見ても一目で足がお悪いんですかという言葉が出る状況だが、何よりも痛い。走れないと結構面倒だ。心の支えのひとつであるゴルフができないのもかなり痛い・・・。ためらわず僕は鍼灸(そしてアロマ)をチョイスしていた。

 鍼灸はあんまり痛くないです。
ごく軽く皮膚をつまむぐらい。やり終わった後、明らかに足が軽くなり痛みが軽減しているのがわかる。なぜ効くのか?痛みを覚える筋肉は堅く収縮している。針を刺入すると、筋肉は最初収縮するがその後弛緩を続ける。その部位でベータエンドルフィン(脳内麻薬といわれているものの1種で、痛みや悩みの軽減が起こる)の濃度が増すとも報告されている。問題は2,3日で効果が減弱してしまうことだ。これにはできるだけ間隔をつめて施術するしかない。調子の良い時、筋肉は明らかに動きが違う。その間血流もよくなり治癒過程が促進される。だんだん必要とする間隔が長くなっていく。

 針の刺入による筋肉への直接作用だけでなく、それにより喚起される生体内物質の影響による全身作用も報告されている。風邪引きに良いとか、胃や肝機能が良くなるとか、欝が軽くなるとか。人間の体は巨大な化学工場であり、外から入れるより自分で作らせたほうが合理的で安全だ。今日本でも効果を科学的に実証しようとする動きがあるが、文献的には外国のほうが多い。日本が率先してやるべき仕事だと思うけど。
 
 鍼灸のおかげで足の具合はかなりよくなっている。ある本で外国の女性マラソンランナーが競技中に足がつり、何をしたかというとゼッケンを止めているピンをとって自分の足に刺したという話が載っていた。それで足のつりは回復し競技再開となったわけだが、僕もその程度にはできるようになりたいものだ。医者もその程度まで鍼灸に親しんでいると全く別の医療領域まで可能性が広がっていくような気がする。薬のない状況でも人助けができるかもしれない。丸裸でも診断と治療のできる全身医者。歩く救急箱。そのようなものに私はなりたい。

抗加齢→抗華麗→地味

抗加齢医学会のセミナーに行ってきました。東京で2日間、連休をつぶして(泣)。でも行った甲斐はあったと思います。元気なご老人で一杯の世の中になることが僕の仕事のひとつの目標ですが、そのこともあり抗加齢医学会は第1回研究会から興味があって参加していました。当初はエステっぽい人が多かったり、ちょっと医学的な研究会にしては異色のムードだったのですが、学会に昇格した頃くらいから新しい学問を育てていこうという意気込みを強く感じる、アカデミックでフレッシュな学会になっていると思います。アンチエイジングという言葉は女性雑誌などでは完全に市民権を得ていますが(というか今が旬?)、もともとこの学会から広がった言葉です。

抗加齢の意味ですが、不老不死を目指しているわけではありません。加齢による身体精神的な衰えをカバーして、元気なままでコロリと死のう。活気のある爺さん、婆さんになって若いやつを脅かそう、病気しないほうが国家財政的にも助かるし。一種の予防医学です。このパールスでも書いた、パワリハもアロマも鍼灸もその手段として入っています。しかし今回の主たる課題はホルモンの充填と身体に有害な金属(水銀や鉛など)の除去でした。

年齢とともにいろいろなホルモンは分泌が減少してきます。よくご存知の例を挙げれば更年期です。女性ホルモンの減少が顔のほてりや欝気分、動悸などのいわゆる更年期症状を起こしてきます。その治療として女性ホルモンの充填療法が行われるようになり、単に更年期だけでなく動脈硬化や骨粗しょう症、アルツハイマー病などにも予防効果があるとの報告が相次ぎ、皮膚の若返りも見られることから一時アメリカで60歳以上の女性の30%近くがホルモン充填療法を受けているという事態にまで発展しました。ところが大規模な臨床試験が行われ、その際乳癌や心血管系のトラブルでの死亡がコントロール群より多いことが途中で明らかになり、臨床試験は中止になりました。そのため一時のブームともいえる状態は終わったのですが、今でも投与量や方法の改良で利点が多いという意見も多く、臨床試験の結果を知ってもそのまま充填療法を続ける人が少なからずいたことなどQOL(生活の質ですね)の改善においては素晴らしいものがあるとの意見があります。

最近男性更年期という言葉がよく聞かれるようになってきました。女性のように様様な体調不良(疲れやすい、憂鬱だ、EDだ)の訴えが50歳頃から多くなり、それは男性ホルモン(テストステロン)の減少による可能性があります。保険適応があるわけではありませんがテストステロンの減少が証明されそれの補充を行うと素晴らしい改善が見られるという報告がされています。

DHEAというステロイドホルモンは加齢とともに減少しますが、これの補充も寿命を延長させる、活動性が増すなどいい報告があります。しかしまだ確固たる評価はありません。一般に女性ホルモンを除いてホルモンの充填療法はまだまだ症例数が少なく、副作用などまだはっきりしない点も多く、今すぐ臨床応用するのはちょっと危険かなという気がします。有害金属を除去するキレート療法もそうですが、少なくとも今、自分で試してみようという気にはまだなりませんでした。

実はテストステロンは計ったんですけどね・・・結果はまだです。恥ずかしくなかったらまた報告しますね。

抗加齢療法に入れ込んでいるドクターは一般に若々しくおしゃれで(全員ネクタイが派手!スーツの色も明るい。関西の偏見かもしれませんが東京っぽい!)、まあ老け込んでいる人が言っても説得力が無いですがちょっといかにも、というのも少し恥ずかしかったりします。ホームページを見てもかなりサロン化してるケースも多いようです。僕としては元気なご老人を増やすという目的のもと、中身重視の抗加齢医学、脳、内臓の若返りを目指して一般庶民の抗加齢医学をやっていきたいと思ってます。地味です。地味で着実にしぶとくいきます。

アロマエヴァンジェリスト

雨が降って気温が下がっている。夏も終わりかけているようだ。皆さん、お盆休みはいかがでしたか?僕はちょっと人里はなれたところで、雨の落ちていく音を聞きながら空と山の境の霞んでいるところを眺めては何時間も過ぎていくという休みでした・・・・。なんか違うなと感じた?以前の俗物ではありませんで。けっけっけっ。男の子は3日会わないと変わるんですよ。心してください。高尚に行きましょう。

アロマセラピーというのがある。聞いたことはあるがこれと説明できる人は少ないんじゃないかな。僕は偶然からアロマセラピーに関わることになり、日本の男性の中ではいわゆるアロママッサージを受けた回数においてかなり上位にランクされると思うが、これでアロマセラピーに詳しいなんていうと恥ずかしいだけだ。でもまぁ少しお話させてください。

花や樹皮から精製した精油(エッセンシャルオイルという)を用い皮膚から吸収(オイルマッサージや入浴時にお湯にたらすなど)、揮発させ鼻から又肺から吸入、まれに飲用して消化器から吸収などのやり方を用い、そのオイルの作用を期待する。リラックス作用が多いが覚醒作用や抗菌、免疫力アップなど様々な作用がある。ちゃんとした学会が日本でもいくつかあり、医学的な応用をいわゆる代替医療として模索中である。レモンオイルを咽頭に塗布することで咽頭痛を癒すなどは単純な方で、癌の鎮痛にも効果があるとされる。

当院でも主として鎮痛作用に応用できないか(お年よりは痛いとこだらけなのよ)、関西医大の心療内科に併設されているアロマセラピー室にお伺いしてお話を聞いたりして創世期の苦闘後アロマールームを3年前に開設。1年で諸事情により閉鎖し今年再開。しぶとくしつこくやっていこうと決意を新たにしている。アロマセラピーは代替医療に分類されるが、今のところ効果が確立されたものではない。化学薬品の代わりに自然の花の成分を用いその薬効(薬理学的に多くが証明されている)を期待するわけだが万人に等しい効果が得られるというところまではいっていない。でもこれは精油の問題やら投与法やら対象の選び方でかなり進化すると思っている。今のところ精油を使うマッサージが一番世間的には浸透しておりそれについて少し。

マッサージといってもいろんなタイプがあるが一般的にアロマは非常にソフトだ。マッサージの揉むという感じではなく触る、息を吹きかける感じというのが近い。それで効果あるのか?あるんだなこれが。皮膚や筋肉は刺激がきつければきついほど効果があるというのは間違いで、刺激の性質に敏感に反応する。ためしにあなたの腕を柔らかく撫ぜてみて、その後グイグイ揉んでごらん。どちらが筋肉がリラックスする?

それにあなたの選んだ心地よい香りが常に漂っている。周りは薄暗く、心地よい音楽か自然の虫や鳥の声がかすかに聞こえる(こういう環境をしつらえているところが多い)。半分以上の確率で寝てしまうことが多いが、ここで大事なのはあなたが何も考えていない、もしくは不快なことは考えていないということだ。煩雑な日常から分離される、完全に。

5感の中で嗅覚は特殊だ。他の4感と違い視床下部を介せずダイレクトに臭球を介して大脳皮質にメッセージを伝える。多分最も古い感覚だからだ。他の4感より圧倒的に多くの遺伝子を必要とする。古代人は自己を守るために匂いに大変敏感だったんだろう。プルーストの「失われた時を求めて」もマドレーヌを紅茶に浸したときの匂いから記憶が喚起され物語が始まる。匂いはあなたの何か深い部分につながっているのだ。

慢性的な痛みはかなりのものが心因性と考えられている。痛みは肉体的なものとは限らない。匂いはそれを癒すし、その種類により分泌される様々なホルモンやオピオイドが精神肉体的に影響を与える。リラックス、安らぎ、そんなものが純粋に手に入る。それがアロママッサージだと思う。出来れば定期的に受けるべきだ。なんでもそうだが1回触れただけでは分からない。繰り返すことで別の世界が広がる。私はそれを伝えたい。アロマエバンジェリスト(伝道師)だからだ。

頭を垂れる・・・

皆さん、お久しぶりです。生きてました。

リニューアルしたホームページをチェックしていて愕然とした。院長の連載コラムと銘打っておきながら全然書いてないじゃないか!!!何してんねん!・・・いやー、判ってましたよ。書かなあかんなぁと思いながらも光陰矢のごとし。たらたらと生きているうちに時間だけが過ぎていきました。とても反省してます。

反省したところに読むぴったりの文献があった。医者は経験が多いほど有能なのか?
Systematic Review: The Relationship between Clinical Experience and Quality of Health Care。Annals of Internal Medicineという信頼できるアメリカの内科雑誌に、臨床経験・年齢に関する医学知識とケアの質に関連する論文のシステミック・レビューが載っている。システミック・レビューとはそれに関する多くの論文を集め検証したもの。多くの論文だから当然結果が違うものも含まれるが大方結論は一致していて・・・・・・・臨床経験が長くなった医師は質の低いケアを供給するリスクがある。故にこれらの医師は質向上のための介入が必要。つまり勉強しなくてはいけない。知識量は若いほど多く、診断、治療のスタンダードへの遵守性も高いというデータもあり。

ぐすん。もう若くない俺としてはうなだれて聞くしかないなぁ。もちろん全面的に同意するわけではなく個人差、集団差がかなりあるけどね。でもある集団においてはその傾向はあるかも知れぬ。それは日本の開業医である(勿論ながくされていて経験豊富ですごく優秀な医者はごまんといるよ)。

僕は10年前に開業したが、大学病院にいた時と比べて医学的情報量の違いを埋めるにはかなりの努力が必要と感じた。大学なんてボーと医局にいるだけで先輩やら学会やらで情報がいやでも耳に入るようになっている。そしてライバル意識というか競争があるもんな。勉強するしそのための大学だ。しかし開業医はワンマンバンドである。孤独なのよー。最終決定は全部自分。相談に乗ってくれる上役、同僚がいないわけではないが、昼飯時に「ちょっとさー」というわけにはいかない。完全に個人の医療にたいする努力、熱情、責任感で差が出るのだ。で、年をとってもそれを維持していくのは結構難しかったりする。またやる気のある医者ほど患者さんも増え本業が忙しくなるとともに雑用もどんどん増えてくる(普遍的法則、仕事は忙しいやつに頼め)。やることは多い、勉強時間は取れない、苦しいー。あっ、別に俺のことを言っているわけじゃないよ。

医療は日進月歩である。これは真実だ。昨日正しかったことが今日はやっちゃいけないなんて信じられないこともあったりして、アップトゥーデイトな情報を仕入れることは必須。医学雑誌だけでなく、最近はインターネットやメーリングリストがそれに大きく貢献しているのだが、年齢によって利用頻度が異なるのは致し方ない。そんなこれやで臨床経験、年齢だけではだめという結論が出るのだろう。

しかし医者にとって臨床経験は財産というのも確かである。自分でも週に1回か2回しか外来をしていなかった専門馬鹿寸前の大学の時と比べ、何でも診なくてはならない開業医となって臨床能力が向上したところは多々あり。複数の医者が外来をしている病院では、多くの患者さんを外来で診ている先生のほうが、そうでない医者に比べやはり臨床センスは上回っていることが多い。患者さんが治る→評判で患者さんが増える→臨床経験が増え診断精度が上がる→患者さんが治る、といういい連鎖が形成される。そこで忙しさに流されないで勉強時間を作って研鑽進歩できる医者が残るんだろうなー。経験だけでいくと必ず行き詰まる。新しいことを勉強していく努力、熱情、責任感。それの維持がみんなも自分も救うのだ。

ロシアのボリショイバレーで活躍する日本人ダンサー(この人の業績は大リーグにおけるイチローに匹敵するかそれ以上らしい)、岩田守弘の言葉。「世界中の35歳の中で僕ほど努力したものはいないと胸を張って言えるんだ」。  頭を垂れる私・・・

「とりあえず自分に課するものとして週1で更新しようと思う(小声)。」

ED(勃起不全)って単にそれだけの問題じゃなくって・・・

シルデナフィル(バイアグラのことです)発売4周年記念講演会(2003年)で、英国の心臓専門医グラハムジャクソン氏が、EDの人は潜在する冠動脈疾患や糖尿病を持っている可能性があると発表した。もともとEDは精神的な問題だけでなく血管内皮機能障害が原因でおこるとされ、その障害を基盤とする心血管系疾患、糖尿病、高血圧の患者ではEDの発症率が4倍高い。心血管性疾患の症候がみられないED患者50人を検査したところ20例に冠動脈造影で冠動脈疾患が確認されたとのこと。それ以外にも氏は、シルデナフィルが全身の血管内皮機能障害を改善することから、狭心症患者の運動耐容能(胸痛が起こるまでどれだけ運動できるか)を改善、心筋梗塞の発症率や死亡率も抑え、肺高血圧やレイノー病も著明に改善するというデータを示した。

同じ講演会で三井記念病院の山門實氏が、日本人のデータ(平均年齢54歳)で高血圧薬物治療中の人に有意にEDが多い(正常血圧の人の約2倍)ことを示した。

生活習慣病の人に有意にEDが多く、シルデナフィル内服によりEDだけでなくベースにある血管内皮機能障害が改善されるのであればいいとこずくめではないか!薬品会社の主催する講演会で往々にして見られるいいとこずくめの話かもしれず鵜呑みにするのは止めとこうと思うが、論理的には説得力あり。冠動脈疾患のため硝酸薬を使用している人は残念ながらだめだが、それ以外の生活習慣病を持つお疲れでよれよれのおと−さん!ちょっと考慮に値する話かもしれんよ。恥ずかしがらず相談してください。

極意!

昨年末、城東区医師会の会長も務められた松岡先生がお亡くなりになった。先生は電子カルテを始め医療におけるIT化で日本の先頭を走っておられた方である。お元気だった頃先生を見るたび、人間70を超えてもあんなに好奇心が旺盛で新しいことに取り組めるのだなぁと明るい気持ちになった。前向きである。療養中に抗癌剤で少なくなった髪の毛を3つに括り、オバQの扮装でニコニコして写真におさまっておられるのを見ると胸が詰まった。心よりご冥福をお祈りします。

松岡先生は自分が癌であることを突如メーリングリストに告白された。その後先生は自分の治療とその効果を計時的に報告されたのだが、通常の、と言っても粒子線等を含む最新の現代医学の治療と共に代替医療も次々と試みられ、それを読む僕は大いに啓発されたのである。
先生が紹介された1つにサイモントン療法がある。代替療法の一つの大きな考え方である気の持ち方、精神状態と病気との関係性に注目した療法で、単純に言えばイメージ療法ということになるのかな。癌細胞とそれを攻撃している白血球のイメージを描くことで実際に腫瘍縮小効果が認められるというものである。ご冗談を・・・とつぶやきたくなるが実のところ全く否定する気持ちは無い。日本古来の気の療法で同じようなテクニックは多く用いられている。また鬱患者の癌や心血管系の病気における死亡率が普通の人と比較して大なることは多くの研究で立証されている。最近では笑うことで免疫系が賦活され癌患者の余命が延びたという報道は知っておられる方も多いだろう。病は気から。多くの医者はそう感じている。

プラシーボ、プラセボと言うほうが多いか、偽薬のことです。薬が本当に効くか評価するとき、全く薬効は無いが同一形状のプラセボを内服したグループと本物の薬グループと比較する(内容は薬を渡した人も内服した人も知らない)。ホラ、プラセボ群と比較して有意に効果が認められました!効果あり!と薬会社の人は言うのだが、プラセボ群でも何パーセントかは効果が認められる。これはどうよ。臨床の場でも眠れない眠れないと嘆く薬依存の人に、これはとてもよく効くからと言って偽薬を渡すと「効いたー、ぐっすり眠れました!」と晴れ晴れとした顔をして来たりする事もある(そうだ、やったことないけど)。びっくり。プラセボ効果という。

身体の状態は心に影響を与えるが、その逆も当然あり。もうこれは自明のこととしよう。これに付け加えるに大事なのは頭で理屈で納得させようとしても上手く行かない点だと思う。本当に信じる、心で信じる、そして理屈で無く無心で身体に任せることが肝要なんだと思う。これが難しいから上手くいかないことが多いんじゃないかな。

身体には頭でコントロールできない無意識な部分がある。その無意識は身体を健全な方向に向かうようセットされている。風邪を引くと熱が出るが、それは免疫系を働かせるために必要な現象で、解熱剤を使うと治癒が遅れることは証明されている。食欲がなくなるのも免疫や他のシステムにエネルギーを使うため、状況においてそれほど大事でない消化器系での消費を抑えるためだ。横になりたいのはそれで身体を休めるように防御反応が働くからだ。身体は自分で治そうとしている。身体を信じて任せること。それを上手くできたら薬は今より必要じゃなくなる。

実は最近ゴルフをやっていて、かなり好きなんです。いや、芝を痛めつけているというレベルですけど。で、パットが本当に上手くいかなかったのだが、アメリカのインナーゴルフという本を読んでパットに目覚めました。単純に言うと、ゴタゴタ考えないで身体にまかせてさっさと打ちましょうというもんだ。身体を信じなさい、目をつぶって打ってもいいよという感じです。パッと見て、後はもうホールを見ないで身体にまかせて打つ。チラッと見るとアラ不思議、ボールは穴の中に・・・なわけないが、それでも以前と比べると格段に寄ってます。なんか怖いですけど、慣れるとこうじゃなきゃいかんと思えてきます。そういう目でいろいろ調べてみると、この身体に任せるというのはいろんな方面で極意となっているんですね。洋の東西を問わず。考えすぎると身体が硬くなる。これはろくな事がありません。
理屈じゃなく感情。しかも前向きな明るい気持ちで信じる。そして身体にお任せ。極意だと思うんですけど、どうですか?

代替療法は安全か?

漢方薬は多くの方が使われています。有効性が科学的に証明されているものなどは医者が積極的に用いる場合も多くなっています。どちらか言うと副作用が少ないという印象をお持ちの方が多いと思いますが、必ずしもそういう訳ではありません。

Chinese Herbs Nephropathy (漢方ハーブ腎症)という病気があり、4月7日発行の医事新報に中本安先生が解説されていますのでそれの大事なところを要約してみます。

1. 半年から2年間の漢方薬服用後に腎障害が起こり、急速に腎不全となる。
2. 日本では今まで30例の報告があり3分の2は西日本。ベルギー、フランス、台湾などでも報告あり。
3. 漢方薬に含まれるアリストロキア酸がその原因と考えられる。
4. 腎不全だけでなく尿路系の悪性腫瘍の合併が多い。
5. 報告されている漢方薬は中国産のものが多く、健康茶の報告もある。

医薬品でなく個人輸入の漢方薬、健康食品、民間薬などを使用する代替療法は最近高まりを見せています。西洋医学の不十分な点、悪い面に対する補足的な役割を果たしているのですが、医薬品のように治験(効果、副作用などを発売前に実際の人間を使って調べる)が行われているわけではなく、代替医療学会などがチェックを行っていますが十分ではありません。安全性に関しては個人の責任が大きいと考えられます。

できるだけ内容の情報が公開されているものを使用すること、副作用などの情報公開が行き届いた会社を選ぶなどが気をつける点ですが、ちゃんと治験を通過したはずの医薬品でも思いもよらぬ副作用が出てくるのはみなさんご存知の通りです。
できるだけ必要のないものは摂取しない。

そのためには精神、身体にいいライフスタイルを心がける。できるかどうかは分らんがともかく心がける!

家庭血圧測定の際の注意点と逆白衣性高血圧

高血圧に診断、治療には家庭血圧の測定が大事です。その際に知っておいたほうがいい知識を東北大学教授の今井潤先生の文献を参考にまとめてみました。血圧値に一喜一憂しないよう以下の事を覚えておきましょう。

1. 血圧は1心拍ごとに変動するし、わずかな内的外的刺激(腹が立っていること、寒い、痛いなど)により簡単に上昇する。
2. 1度に数回測定すれば一般に最初の血圧値が高く、だんだん低くなる。どの値をとるかは諸説あり、すべて記録しておく。計時的変化を見るには1回目に統一しておく。
3. 測定開始の最初の数日はその後の血圧より高い。
4. 一般に朝寝床から起きて動き出した直後の血圧は夜の血圧にくらべ高い。起き上がらず寝床の中でぼんやりしている状態で測った血圧は基礎血圧といい、この血圧が高い場合は注意。
5. 冬季には夏季に較べ血圧が上昇する。

病院でお医者さんや看護婦さんに測定してもらうと緊張して血圧が上がるのを「白衣性高血圧」といいます。逆に家庭内で自己測定時に神経質になって高い血圧値がでると下がるまで何度も測定を続ける人がおり、病院で測るほうが安心して低くなる人もいます。そういう人を「逆白衣性高血圧」といいます。

血圧に神経質になって自分で高血圧を作り出さないようにしましょうね。

高血圧の人(特に70歳以上)の血圧はいくらまで下がればいい?

高血圧と診断され薬を飲んでいただいている場合、当院では家庭血圧測定器をどこかで購入していただいて、できるだけ家庭内でも血圧を測定していただくようにしています。診察に来られた場合と家庭内ではほとんどの場合家庭内の方が低く出ますが(これは白衣性高血圧といって医療機関での緊張が反映していると考えられるます)、時により下がりすぎではないですかと心配される場合があります。血圧の下がりすぎは御高齢の場合かえって脳梗塞や心筋梗塞を発症する危険性があるということを良くご存知なのです。

ご高齢の場合、いくらぐらいの血圧が適当なのでしょうか?

米国やWHOなどでは年齢に関係なく140/90mmHg以下が目標とされています。日本でも若年、中年者や糖尿病合併例では同様に考えられていますが、高齢者(70歳以上)に関しては少し異論があるようです。同様の降圧をめざすべきという意見とともに、脳や心臓の循環障害の発生を考え、もう少し緩めの目標が良いとする意見があります。色々なデータの解釈の問題がありますが、日本人を対象にした決定的な高血圧の介入試験がないのが混乱の元と思われます。

しかしながら目下のところの妥当な考え方は、基本的に140/90mmHg以下に下げる、しかし拡張期血圧(低いほうの血圧)は70mmHg以下に下げない というところと思われます。

高齢者は高血圧の人でも拡張期血圧はあまり高くならない傾向があります(血管が硬くなっているとその傾向が出てくる)。高い方の血圧だけに注目して降圧をはかると下がりすぎて、拡張期血圧に依存している心臓の冠動脈の流れが妨げられ心筋梗塞などが発症しやすくなります。

拡張期血圧は70mmHg以下にならないように。ゆっくりと最低3ヶ月ぐらい時間をかけて。めまいなどの症状に注意して、症状があれば 測定値が低くなくても 下がりすぎを疑うというのが注意すべきところではないかと考えます。

ボケたくなけりゃ肉を食え!

なんてタイトルだ。だけどこれ嘘じゃないかも。高齢者がどんどん増えてきて大騒ぎしている割には、実のところ高齢者の方のデータというのはあまり無くてわかってないことも多い。その中で東京都老人総合研究所は多くの高齢者のデータを発表しているが、その中で長寿と栄養について面白い発表があるのでいくつかを書き出してみよう。

1. 1970年代における100歳以上の方100人のデータでは、食事における蛋白質の割合は当時の日本人の平均を大きく上回っていた。
2. 東京の高齢者の中で20%ほどは、量は多くないものの毎日肉を摂取していた。沖縄の高齢者はもっと多くの肉を摂取していたが脳卒中の発生率は全国最低だ。
3. 牛乳をよく飲む高齢者ほど魚、肉、卵などの動物性食品を積極的に取っており、高学歴で運動習慣があり、歯が多く残っていて朝食を取る習慣があるという共通点があった。
4. これらの方は栄養状態の指標である血中アルブミン値が高く、その値と長寿とは相関関係がある。
5. 肉に多く含まれるセロトニンは脳内神経伝達物質であり、鬱やボケの予防につながる可能性がある。

どうよ、皆さん。他にもあるぞ。神奈川県立保健福祉大学の杉山みち子教授は、高齢者の最大の栄養問題はたんぱく質、エネルギー低栄養状態であると看破している(日本医事新報4141:1,2003)。70歳以上では体力と筋力をつけるためエネルギー、たんぱく質をちゃんと食べることを目標とした栄養教育が必要とまで言っているのだ。肉を食べるな、粗食こそ長寿のもと、というのが一般論だが、それは成人病になりやすい70歳台までにいえることで、その激戦区を勝ち抜いてきた高齢者の方はむしろ栄養をつける必要があるのであった。

イメージが変わるなぁ。後期高齢者は絵や音楽をたしなみ(芸術はボケ予防に最適だ!)、マシーンを使ってパワリハをし、赤ワイン(含まれるポリフェノールは老化やボケ予防に効果ありとされている)でステーキを食うのが望ましい生活なのである。店の方も考えないといけない。焼肉屋は年齢によって値段を変える。成人病予備軍の30歳から70歳までは高めの設定で、それ以上は半額。今日は金が無いから焼肉にしようぜと、高齢者はスポーツで汗を流した後相談する。こういう人が増えると暗い日本も少しは変わるんじゃないかなぁ。