カテゴリー別アーカイブ: 抗加齢

真夏の勉強会

haus tembus

第6回の抗加齢医学臨床データ報告会に行ってきた。長崎、ハウステンボス内で開催。幹事は頭も身体も、そして♥も一流の盟友中島先生です。この会は全国で27(学会員は8000人を超すのである。その中でである)しかない抗加齢医学会認定施設が7施設、その院長7人が参加するというゴ―――ジャスな会です。もともと今年抗加齢医学会の臨床促進委員会の会長になられた田中先生の呼びかけで始まった、日常臨床をしながら研究もしている奇特な(どーかしている)開業医の会で、僕は幸運にも第1回から参加させていただき、六甲山ホテルで第4回神戸大会も主管させていただいた。サボりの僕が曲がりなりにも学会で発表したり臨床でも抗加齢医学の新しい検査を取り入れたりしてやっていけてるのは間違いなくこの会で知り合いになった先生方のおかげです。本当に足を向けて眠れません、そんなつもりもないですが。

この会の特徴のひとつは、夏でもあるしリゾートでやりましょうという(田中先生らしい)開催地の選び方である。基本その地のドクターが幹事となる。箱根や然別、宮島など印象に残るところはいくつもあったが、今回のハウステンボスも素晴らしかった。夕食は貸し切りの船上で花火を見ながらという豪華版で、参加した約40名は心から夏を満喫したのである。

発表も僕にとって示唆に富むものが多かった。うちのスタッフが発表した血管内皮機能検査は他に2施設が同じように演題を出していて、これからの方向性にいい助言を戴いた。またテロメア長などの新しい検査の紹介も有難かった。これはうちのクリニックでも出来るようにしようと思う。

少しハウステンボス内を散策したかったが、台風11号がまともに上陸しそうだったので予定より早く帰阪することにした。残念。しかしとってもいい気分転換になった。

日本全国からこの会に集まってくる先生方に会うのは本当に年に1度のBIG FUN です。長く続きますように。そして来年あたりからrebootの予定もある。ますますパワーアップしていきそうだが負けないように頑張りたいと思う・・・と珍しく神妙に真面目な顔をしてキーボードをたたくのであった。

いい習慣、悪い習慣

「morning」の画像検索結果

ポジティブサイコロジーの第1人者であるタル・ベン・シャハー教授の「ハーバードの人生を変える授業」という有名な本があって、僕の友人が発刊された時に強く推薦してくれた。その時社会人である彼女にとって印象的だったのが「習慣化する」という言葉で、毎日歯を磨かなかったり洗顔しないと気持ちが悪いように、勉強も習慣化するといいんだ!と目が覚めたのである。

「習慣を作るには、確固たる価値観に基づいて、決められた行動を、特定の時間に行うことが必要である」

繰り返しはパワーを持つ。運命とは性格が大きく関わり、性格は行動で作られ、行動は習慣で作られる。つまりあなたの運命を変えるには習慣を変えなければならない・・・多分。

・・・僕には自慢ではないが(とても人には言えないような)悪い習慣しかない。今さらではないが少しでもましな人間となるようにいい習慣をつけよう、と決心する。で、いつやる?なにやる?

僕は大体朝7:45にクリニックに着く。8時半くらいから予防接種や超音波など検査を開始することが多いから大体45分間、朝のゴールデンタイムがあるわけだ。何をしているかというと、①前夜やり残した事務仕事をする ②メールチェック ③唄を歌う ④呪いをかける・・・くらいで大したことはしていない。ここをあてることにする。

でなにやるか?これは決まってる!「確固たる価値観」からいっても筋トレしかないじゃん。でも本格的なやつでなく自重でのスクワット、プッシュアップ、カーフレイズくらい。可能ならダンベルでのカールというところで、1セットしかしないから30分もかからない。十分効果を出すには3セットしたほうがいいけど朝から疲れるからこれくらいでいい。

で、ここ2週間ばかりまじめにやってるのですが、これがはなはだ具合がよろしい。軽く汗ばむ感じなのだが実に爽快。身体も軽い。たった30分でも全然違うんだと驚く。身体の調子がパッとしないときは休めるよりむしろ動かしたほうが改善するというのは経験則でわかっていたが再認識した。

ハーバード大学で「ハーバード・オン・ザ・ラン」というプロジェクトがあって、授業前に短時間ジョギングをしたグループは成績が向上したという報告がある。身体を動かすことは頭を活性化するのである。勿論それも狙ってるわけであるが元々の問題があり著しい変化はまだない・・・かな。少しましなったような気もする。誤解か。

まっ、あとは継続することだなー。人生で初めていい習慣がつくか、勝負の6月。

 

 

 

ロックは見た目が9割

csn

CS and N に行ってきた。何のことですか?だろうのぉ、一般ヤングピープルには。Crosby, Stills and Nash である。僕のような遅れてきたウッドストック世代(既に死語か?)にはほぼ神様のようなスーパーグループである。現在一緒にロックレジェンドのコンサート地獄巡りをやっているラブ作君(以前はR作だったが諸事情により愛に生きるラブ作と改名)から「今度来るで」と連絡をもらい、「しんじられない・・・」と思いながら遂に会場に来てしまったのであった。本当にCSNが見れるのか・・・。

一時一番好きなグループだったなぁ。でもファーストアルバム、セコンドの「デジャブ」、そしてライブの「4 way street」位しか聴いてないんだ、考えてみると。これらのアルバムがいかにインパクトが強かったか判る。名曲揃い、タレントの集合である。

ラブ作君は僕のことをクロスビーが好きな変なやつ(多分一番ファン数は少ない)と思っているようだが、僕はそれほど悪くないよ、すごくいい曲もあるし、という程度であって実はスティブン・スティルスが一番好きなのであった。

で、というかしかし、 スティルスもクロスビーもとても太って南部のおっさん然としている。声も悪くないし演奏も素晴らしいのだが、なにかロックスピリットというのが感じられないのである、僕だけかもしれないけど。おっさんの余技という感じがしてしまうのである。現役感が無いのね。

ロックレジェンドのコンサート巡りで一番素晴らしかったのはやはりストーンズだが、彼らは全員ロックなアピアランスを保っている。スリムで、シャツの前をはだけても暑苦しくない。ステージを走り回れる体力。ゲストで出てきたミックテイラーがぶくぶく肥っていて、演奏はよくても何か感動が薄いのは外観が与える印象が大きいと思う。

ロックは見た目が9割、とくに年を経て太るのは単に怠慢としか感じられない。日本でも矢沢永吉とか長渕剛とか(嫌いだけど)、意識して保ってるよなぁ。太ってると一気に普通のおっさん化してしまうのだ。つまり飢えた感がなくなるから。日常生活に満足してしまってるゆるい感じが出てしまうからだ。

ロックミュージシャンでなくても、心にロックのソウルがある人は太ってはいけないのである。

自戒でございます。

 

フレイルの治し方

frail

フレイルという言葉がある。日本老年医学会が加齢に伴って筋力や心身の状態が低下した状態のことをFrailty(弱い、虚弱)からフレイルと呼びましょうと昨年提唱したのである。以前は「虚弱老人」と言っていた。健康と病気の中間で、65歳以上の高齢者の1割強があたるとされる。骨や関節など運動器の衰えたロコモティブシンドロームや、筋肉量減少、筋力低下のサルコペニアもフレイルに含まれるが、このまま進行すると要介護状態となるのである。

僕の外来にはご高齢の方が多いが、フレイルにあたる方は結構多い。そういった方は転倒しやすく、免疫状態も良くなくて風邪もひきやすく、気力も減退気味という印象を受ける。要介護一歩手前である。これはいかん。「抗加齢は抗介護」をテーマとするうちのクリニックの一番の対象であります。

でフレイルをパラパラと勉強していたら目の覚めるような知識が。僕も含めてフレイルというと身体的なことしか思い浮かばない人が多いだろう。しかしフレイルの概念には3種類あり、①身体的フレイル ②精神的フレイル(鬱や認知症などだな) そして③社会的フレイル があるのである。社会的虚弱性!そう、そいつが問題なのだ。 しかも日本のフレイルは、まず社会的フレイルから始まり、次いで精神的フレイルが加わり、最後に身体的フレイルと進むとのこと。

必ずしもこの順番ではないだろうが、男性の場合この道を歩む可能性が高いように思われる。定年後、明らかに生気を失う方を散見する。仕事を離れると男はコミュニケーションが非常にとりにくいようなのである。孤立し、そして心も身体も弱っていく。

ジムに行っている元気な高齢者の方も多いが、案外誰とも話もせず、さっさと済ませて帰っていく男性も多いそうである。おばちゃんたちは身体は動かさないことはあっても口が動かないことはなく、おしゃべりが中心のジム通いというケースも多いそうだが、どっちがフレイルになりにくいかというとやはりおばちゃんたちではないか。

ゴルフとか碁なんかを中心に交流する場もあるが、なんというかスポーツやゲームそのものが中心になって交流そのものが目的というのは日本の男性の場合(特に高齢者は)成り立ちにくい気がする。欧米のクラブとかと違うところだ。大体欧米の男性ってすごくしゃべるもんね。道端で1時間くらい喋ってるっていうのもよくある。日本のおっさんも、飲み屋でないと喋れないというのはそろそろ変えなくてははいかんな、と思う。

見知らぬ他人とちゃんと喋ることができるというのは大人の条件だと僕は思っているのですが、ちゃんとどころか、すぐ友達になれるという好奇心、フランクさがあればフレイルなんて笑い話だ。ここから鍛えていく。なにかの縁で隣り合った人、興味をひかれた人には微笑みながらどんどん話しかけていく。そうしてかっこいい大人になっていく。バイバイ、フレイル。おっちゃん達、どう、年を忘れて一緒にやらない?

 

 

 

 

泌尿器抗加齢医学研究会

うろ

2月が始まった。昨日の日曜日は第6回泌尿器抗加齢医学研究会で発表してきた。タイトルは「開業医でのアンチエイジングドック」で、これは主催の順天堂大学泌尿器科教授の堀江先生からいただいたお題である。

昨年秋に話があってから、抄録、パワーポイント提出とスケジュール通り進んできて昨日発表だったのだけど、実はこれはかなりプレッシャーがあったのよ。僕のところは日本に27しかない抗加齢医学会の認定施設とはいえ、アンチエイジングドックを専門にやっている東京のクリニックとかと違ってメインはあくまで地域密着型の一般診療。立地としてはもろアウェイの下町、城東区である。在宅診療も含めた一般業務の合間に人間ドックの進化形ともいえるアンチエイジングドックを依頼があればやるという感じで、研究会で発表出来るほどドックとしての大量データの蓄積はない(学会を意識して集めているデータは別だが)。だからそういった一般クリニックでどのようにやっているか、どこまでできるかといった話を中心にした。

メインの聴衆は泌尿器科の先生方である。科が違うと医者のキャラクターも違い、かなり興味の焦点が違うもので、どうも話の進め方のイメージがわかないのである。しかも他の発表者はほとんどが大学の研究者である。もう許してほしい・・・。今まで学会やなんやかんや人前で喋った経験は結構ある方だと思うが、内容がどのように受け取られるか想像がつかないというのが一番不安ということがよく判った。

かなり苦労した。僕としては画期的に多くプレゼンの練習をし、前日までストーリーをブラッシュアップし、なんとか当日は自信を持って発表することができた。聴衆の先生方はそんなに苦労していたとは思われなかっただろうが、話し終わって本当に心から喜びが込み上げてきた。3年前に専門外の抗加齢医学内分泌研究会で発表した時もプレッシャーが強く実際結果もこけた様な気がするが、今回は全くあがりもせずかなり冷静でまぁよかったような気がする。よしよし。

テストが終わり夏休みに突入したような気分である。今私にこわいものはない。だけどこういったハイレベルの研究会に参加するのはとても勉強になるなぁ。今自分のやっていることの立ち位置がよく分かるし、大学、病院の研究者の先生方のもつ雰囲気が、サボるなよと僕に語りかけるのである。いや、また発表したい、しばらくはいいけど。

 

 

 

 

 

コウノメソッド

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あぁ、日々がぶっ飛んでいく! もう1月も25日である。仕事やなんやかんやに追いまくられていたのだよ。しかし悪くない。忙しいうちが花だろうぜ、きっと。

このところ患者さんに認知症の方が増えてきている。これは昨年コウノメッソドの実践医となったせいだ。コウノメソッドというのは名古屋フォレストクリニックの河野和彦先生が打ち立てられた認知症の診断、治療方法で、専門医でなくても臨床に応用することができる。

認知症の治療は難しい。今まで外来でなぜうまくいかないのか、治るというのがそもそも無理なのか、デイサービス利用ですごく改善される方がいるのは認知症でないのか etc、なにかとフラストレーションの多い領域であった。そんな時コウノメソッドの存在を知り、勉強させていただいてその効力に驚いたのである。

魔術ではない。特徴は、保険適応のある認知症治療薬の使用量や選択を彼の経験からはっきり示してくれたこと(治療が失敗するのは殆どが過量なため)、介護者が困る周辺症状(幻覚や易怒、アパシーなど)を正すことを最優先においていること、顧みられていなかった古い薬剤やサプリメントも積極的に使用すること、などであろうか。 当たり前じゃないと思うかもしれないが、これらのことを痒いところに手が届くがごとくすっきりと教えてくれるものはなかった。

医療者よりも実際に困っている介護者の間で名が知られているのも、その治療法がいかに家族を含めた介護者を助けているかという証拠だろう。僕はクリニックのHPでもコウノメソッドのことを記載していないが、河野先生の本やHPから捜されて受診される方が増えている。

認知症の方が来るとワクワクする(申し訳ないが)。とても興味があるし面白いのだ。少なくともご家族の負担を取る程度の改善は半分以上の症例で出来ている気がする。著効例の経験も少しずつ増えてきた。外来の時間がかかるのは少しつらいがしかたなかろ。

これからの僕の臨床のテーマは「認知症」と「サルコペニア」だと思っている。この2つは大いに関係があるし、僕の抗加齢医学のメインテーマである「男性ホルモン」と「運動」にも大いに関係があるのだ。

まぁ、これが1年の初めの宣言といたします。

 

 

 

まっ、たまにはいい話もなくっちゃね。

賞状

最近のグッドニュース。今年で3回目の発表となる「日本通所ケア研究大会」において、当法人からの発表が最優秀発表演題に選ばれたのである。・・・素晴らしい!でかした!である。

内容は認知症にアロマテラピーが有効であるとの文献から、当院の認知症対応型デイサービスで半年にわたりアロマディヒューザーを使用、アルツハイマー型認知症の利用者さんの認知機能と周辺症状がどう変化したか調べたものです。結論は認知機能は変化なかったのだが、これは保たれていたともいえる(残念ながら対照群が無い)。周辺症状はやや減少か不変というところ。アロマ前の認知機能と嗅覚は相関するが、結果は嗅覚とは無関係のようであった、といった内容である。

当院には抗加齢医学会認定指導士が鍼灸師、介護福祉士、PTと3人いて、彼らを中心に僕を含めて6人が月に一度、仕事が終って午後9時過ぎまでミーティングを開いている。今年の抗加齢医学臨床データ報告会で好評だった「テストステロンと顔の縦横比の実証」もここから出たし、今回の演題もミーティングから生まれた。

僕にとって嬉しかったのは、今回のデータはあまりぱっとしないので発表は見送ろかと言ったら、彼らが何とかカッコをつけて発表しましょう、いけますよ!と押してくれたことであった。

発表者であるデイサービスチーフ O君とデイスタッフの頑張りが素晴らしい。そして本来専門の内容ではないところでも興味を持って取り組んでくれる向上心の強い抗加齢ワーキンググループの面々に敬意を表します。一つのクリニックでもここまで行けるという限界をどんどんあげていこーぜ。

コーヒー遺伝子

caffeine

僕はコーヒーをよく飲む。中学生の頃から自分でコーヒーミルを買って、コーヒー豆をゴリゴリ挽いていた記憶がある(今そのことを思い出したのだが、いやなガキだねー)。今でも1日に3杯は飲んでいるが、カフェインの覚醒作用を楽しんでいる訳ではなく、ヘビースモーカーのように癖になっているだけだ。寝る前に飲んでも平気ですぐ寝てしまうもんね。

面白いペーパーをみつけた。「お酒やコーヒーなど日常的飲み物と日本人の遺伝子. 筑波大学技術報告 31:33-38, 2011 」。アルコールを分解するアセトアルデヒド遺伝子多型の違いにより酒に対する強さが変わるのだが、それを都道府県別に調査して秋田、鹿児島、高知、沖縄など酒に強いと言われるところは遺伝子からでもそれが実証されたなど興味深いが、コーヒーのカフェインに対する感受性も遺伝子に左右されるという僕の全く知らなかったトピックが書いてあった。

アデノシン受容体というのがあって、ドーパミン作動神経細胞と呼ばれる覚醒や鎮静を司る神経系の細胞にも存在している。ドーパミンがこの細胞のドーパミン受容体に結合すると精神が高揚し覚醒した一種の興奮状態になるが、アデノシンは同時に分泌されアデノシン受容体に結合してドーパミンの作用を調節(抑制)する役割を担う。

コーヒーに含まれるカフェインはアデノシンと構造が似ており、アデノシン受容体に対して同様の結合親和性を持っていてアデノシンの結合を阻害、その結果ドーパミンの作用抑制が阻害されるので不眠や興奮などの作用が増強される。

このアデノシン受容体の遺伝子型にタイプがあり、シトシン(C)、チアミン(T) の組み合わせによりCC型、CT型、TT型に分けられる。Cがあるとカフェインの親和性が強く結果としてよりドーパミンの効果が出やすい。言い換えるとカフェインの覚醒作用が強いということになるわけだ。中国を除くアジア地域ではTT型が多くアフリカや南米、アメリカの白人などではCCが多い。

CCはカフェインの効果(覚醒効果や気分がよくなるなど)が高いため多飲傾向があるようである。カフェインはお茶にも含まれる。中国はアジアでは珍しくCCの多い地域で、雲南省がお茶の起源であるが、唐代の詩人魯仝はお茶の効用について次のように述べている。

『1杯飲むと喉が潤い、2杯目で一人思い悩むことが無くなり、3杯目で詩想があふれ出し、4敗目で不平不満が無くなり、5杯目では全身が清清しく爽やかになり、6杯目で神仙の境地に達し、7杯目では羽が生えて空を飛ぶ思いであった』

すげっ・・・  僕はコーヒーをよく飲むけど効果から考えるにCCじゃないだろうな。  

CCになりたい!

 

 

 

これが答えだ!

answer

ある会で発表することになっていて、そのためパワーポイントを作成していた。上手に年齢を重ねるコツは適度な運動、適切な食事と他者とのコミュニケーション、社会性を保つことである・・・と。抗加齢医学会のHPにもこう書いてあるが、そんなことは誰でもわかってるで、おっちゃん。

大体適切、適度とはなんであろうか?どの程度のことをいうのか?いうなれば全てにおいてそれが核心である。対象により変わってくるだろうが、とりあえず大まかな基準はないのかな、と考える。

しんどくない程度、苦痛と思わない程度、というのが妥当なところでしょうか。東洋の知恵である「中庸」が多くの場合正解であるというのは、いろんなシチュエーションで年齢を重ねるほどわかってくる。過度、やりすぎはいけません。

というのも判ってるけど、でもそれでいいのかな。

ホルミシス効果というのがある。「体に有害とされるストレスも適量であればむしろストレス対応性を高める」ということである。ここでも適量というのが出てくるが、ちょっと違うのは、ストレス、しんどいこと、負担になることをやり過ぎない程度にやった方が強くなる、楽なだけじゃダメというところだ。しんどくない程度、苦痛と思わない程度だけでいくとトラブルはないが進歩は望めない。現状維持は可能だがバージョンアップはできない。

それは寂しいだろ?

やり過ぎまでいかなくても、ここよりいくとかなりしんどいか、つらいか、といううところまでやる。いた(痛)楽しい、くる(苦)楽しいレベル。これを続けていると知らぬ間に階段を上がることになる。

それだけじゃなくてやりすぎも必ずしも悪いことじゃないと思う。納得できればね。仕事で無理しても、その分成果が出れば快感だろう?付き合いにしたって明日があるからと早めに切り上げるのより、興がのればぐっと夜更かししても得るものが多かったりする。ここでやめるか?というときに、立ち止まって心の中のリトル池岡に訊いてみる、「続けたほうが俺にとっていい?」「ゴー!」とでればつらくてもしんどくても躊躇なく前進。その方がきっとトータルに自分にとっていいよ。

で、今まで健康の秘訣は?と問われれば、「中庸です」と孔子のようなことを言っていたが変更することにする。

・・・「無理することです」。   これが答えだ!

 

 

 

 

肉食系警察

poste

月に一度の健康相談をしに、産業医をしている大阪府警交通機動隊のビルディングにはいる。

「んっ?」 

何かが引っ掛かっていつもは全く見ない掲示板を確認すると上のポスターが。人間は興味あるものしか目に入らないものである。草食系より大阪府警かー。駄洒落ね。ケイしかあってないけど。大阪府警は肉食系と言いたいわけだ、この図柄は。

草食系男子のホルモン動態についてペーパーを書いたこともあって、草食系という言葉には割と敏感である。草食系男子という言葉は日本だけと思っていたが(草食系男子は英語圏でJapan’s harbibore menとされている)、去年出た論文によればフィンランドやデンマーク、アメリカといった先進国では、同世代で比較すると血中テストステロン(男性ホルモン)量は時代とともに平均値が低下していっているとのことである(A cohort effect on serum testosterone levels in Finnish men. Eur J Endocrinology 168:227-233, 2013)。文明世界同時草食化である。理由として環境ホルモンや食事などいろいろ説があるが不明。

草食系男子が必ずしも悪いものとは思わないが、加齢とともに低下していくテストステロンレベルが高い男性ほど長寿であることはエビデンスがある。認知機能も高いと言われ、東大の川戸 佳教授は記憶の重要部位である脳の海馬は男性ホルモンを産生しており、その量が減るとシナプス数も減少し、外部から補充するとシナプス量が回復したというラットの実験報告をされている。

当院でMCI(認知症の前状態)の高齢男性群にテストステロンの軟膏塗布を1年間行ったスタディを今度の抗加齢医学会総会で発表するが、認知機能より精神機能の向上が強く、前向きで不安感が減少するのが明らかだった。こういった精神作用も長寿に関係するだろう。筋トレをすると男性ホルモンが増加するのは周知の事実だが、メンタルが変わった、強くなったという人が多いのはやはりテストステロンの作用だな。

と考えると、「草食系より大阪府警」というコピーも悪くないかもしれん、と思えてきた。少なくとも犯罪者よりテストステロンレベルが高い方がいいな。凶悪犯のテストステロンは高いという古典的な報告があるが、負けないようにポリスマン諸氏は男性ホルモンレベルを上げてください。